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「ファミコンカセットの穴」考 ~任天堂はテスター棒をつっこむ夢を見るか?~

◆オミットされた公式見解◆

ファミコンカセットの穴は何のために空いているのだろう......。

SNSがそんなテーマで盛り上がっていたのは残暑しぶとい昨年11月のことだった。ファミコンカセットの穴とは、標準型カセットの上部に空いてる2つの四角い凹みのことである。すると例のごとくレトロゲーム界隈では、この穴の存在意義について「熱を逃がすため」だの「プラスチックを成形する都合」だの「ヒモを通したらキーホルダーになる」だの様々な説が飛び交うという不可解な現象が起こっていたのだ。

kasettonoana01.jpg

こんな穴ぼこが気になるなんて、まったく不可解な人たちだなあ。

なんて意味ではない。議論が起こることが不可解なのだ。なぜならこの「ファミコンカセットに穴が空いている理由」についてはすでに公式見解が出されているからである。それは今から8年前。ゴゴ通信というニュースサイトが2017年10月17日付の記事において突然、何の前触れもなく報じたのだ。

さっそくその記事を読んでみよう。以下引用。

そんなわけで穴について最も詳しいであろう任天堂の広報さんに聞いてみた。

編集部 カセットの上部に穴が空いていたと思うんですけど、どういった意味があるかわかりますか?
任天堂 はい、実はあれはただのデザインなんです。
編集部 え、放熱とか組み立てるときに出来る穴とはではなく?
任天堂 そうです全くのデザインなんです。
編集部 アイレムさんのカセットは前と後ろに穴が空いてますがあれもデザインでしょうか。
任天堂 そうです、同様にデザインです。


ただのデザインだったんかーいっ!

内容はともかく、大手新聞社や有名雑誌社が運営してるわけでもない独立系メディアがファミコンに関して任天堂の、しかも未発表の公式見解をもぎ取ってくるなんて座布団が舞ってもおかしくない大金星ではないか。しかしこの記事、その大スクープ感とは裏腹にレトロゲーム界隈にはまったく響いておらず今回も指摘する声はほとんど見られなかった。

なぜゴゴ通信が報じた任天堂の公式見解は、まるで最初から無かったかのようにこの界隈からオミットされてしまったのだろう?



◆3つの要因◆

その謎について、私オロチは主に3つの要因があると考えている。

まず1つ目はミラクル過ぎるという点だ。任天堂はある時期から日本のマスコミに対してガードが固くなった。問い合わせをしても「細かい個別の案件については応えられない」というスタイルを通しているのだ。したがって大手新聞社や雑誌社が正式に申し込んだ取材ならともかく、ゴゴ通信のようなマイナーサイトが「任天堂の広報さんに聞いてみた」なんて軽いノリで質問したら、普通に答えてくれたばかりか未発表の内容をゲットできるなどミラクル以外何物でもないのだ。

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2つ目は、そもそも任天堂は古い資料に興味がないという点である。これには過去にとらわれることを嫌った山内元社長の影響もあるのだが(↑とか)、当時のゲームメーカーはどこも古い資料をいい加減に扱ってきたので特段、任天堂だけが異例だったわけではない。そんな任天堂も代替わりしてからは周年企画をやるようになったし、また、近年になって資料館(ニンテンドーミュージアム)の開設を計画するなど(※執筆段階では建設中)ようやく昔の資料の歴史的価値に目を向けはじめたようである。

つまりただでさえ「ファミコンカセットに穴が空いていた理由」などというとんでもなく些末な情報が載っている資料が存在する可能性が低いうえに、ゴゴ通信が報じた2017年時点までそれがしっかりと残されていて、かつ、気軽な問い合わせに応じられるレベルの広報部社員まで共有されていた可能性となると「さらに低い」と言わざるを得ないのだ。

もちろんその広報さんなる人物がほかの誰かに聞いた可能性もあるが、ファミコンが発売して40年にもなると当時の事情を知る社員はほとんど退職しているか、残っていたとしても宮本茂さんなど重役級の人物ばかりでやりとりすること自体が難しい状況になっているのは想像に難くない。古き良き時代みたいに「たまたま開発者が電話に出る」みたいなことは起こらないのである。

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※アイレムの代表作『スペランカー』のカセットに空いている穴

3つ目はアイレムの質問にも即答している点である。ファミコンの場合、標準型カセットはOEM契約(任天堂へ製造を委託する形式)なのに対してアイレム、ナムコ、コナミといった独自形状カセットはロイヤリティ契約であり、各メーカーはカセットを自社工場で製造していた。つまり任天堂からしたらアイレムのファミコンカセットなど他社の製品も同然なのだ。前述のとおり長い間、自社製品の過去ですら振り向いてこなかった任天堂が、ましてや他社の大昔の製品について「穴」なんていう細かい仕様の部分まで熟知しており、あまつさえ即答できる理屈が1mmも考えられないのである。



◆ブレブレの任天堂◆

加えて「任天堂の広報さん」という言い方もやはり気になる。今西さんや本郷さんなどかつて任天堂のスポークスマンとして名を馳せた人物でなくても、ファミコンに関するそんな未発表の重大な公式見解を出すのだからせめて名前くらいは出してほしいものだ。名前が出ない発言というのはどうしても説得力が乏しいと見られてしまうだろう。

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うるせえなあ。
じゃあゴゴ通信がもぎ取ってきた公式見解は何だったんだよ!。

そろそろ、そんな怒りのツッコミが飛んできそうなのでこれくらいにしておこう。笑。断っておくと、だからといって私はこの公式見解をウソだとか適当ぶっこいてるとかいうつもりはないのだ。ぶっちゃけ昔から任天堂の公式見解はけっこうブレブレなので保留しているというのが本音なのである。

これは世界中の任天堂研究者の間では常識的な話で、たとえば過去の山内元社長のインタビュー記事などを読んでいると媒体や時期によってぜんぜん違うことを言ってることがよくある。しかしそれは悪いことではなくて、京都人特有の含みのある表現だったり、ビジネス的な判断によるブラフ的発言だったり、いかにも山内さんらしい立ち回りをした結果だったりするわけだ。

我々研究者はそんなことでいちいち「ダブスタ」だの「ブーメラン」だの揚げ足を取るようなマネはしない。

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また、有名なところではスーパーマリオの設定についても任天堂の公式見解はけっこうブレブレで、たとえばマリオの職業について最初は大工ということになっていたがのちに配管工となり、それも辞めたかと思ったら再び復帰している。当然これも非難するような話ではなく、我々研究者はだんだん真っ黒になっていく彼の履歴書を眺めながらニヤニヤするだけだ。

おそらくレトロゲーム界隈の紳士淑女たちもそんなことで一喜一憂する者など一人も存在しないだろう。単純にゴゴ通信の記事を読んでないか、あるいは読んだうえで保留してるか、忘れてるか、そのどれかなのだよ。きっと......。



◆実はあった公式見解◆

いやいや、たとえ任天堂がブレブレなのが事実だからといって今回のケースにも当てはまるとは限らないでしょ。なんて思われる御仁もおられるだろう。では今からゆるぎない証拠をお見せしようではないか。

ファミコン通信1995年9月22日号に掲載されたその名もズバリ「ファミコンソフトのアノ穴の秘密」という記事だ。

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なんと「ファミコンカセットの穴」についてはとっくの昔の30年前にファミコン通信の編集部が任天堂の公式見解を取り付けていたのだった。問いかけに応えたのはかつて名物広報だった本郷好尾氏である。氏によると「検査器具を引っかけやすいようにしている、放熱のため、など意見があるのですが、本当のところは不明です」とのこと。

ただのデザインと違うんか~いっ!。

しかも不明て。何とも煮えきらない答えではあるが今から30年前、ほぼ当時と言ってもいい時代の任天堂広報がそう言ってるのだからおそらくそれが真実なのだろう。もちろんこの30年で見解が変わった可能性もゼロではないのだが、昨年、そんな窮地に追い込まれた「ただのデザイン説」へトドメを刺すようにとある人物から新たな説が飛び出したのだ。

ファミコン界隈のスーパーヒーロー。高橋名人である。



◆殻割り説が急浮上◆

名人は自身の公式ブログ「16連射のつぶやき」の2023年11月8日付けの記事において以下のように語った。※なお引用元記事では名人が手書きした非常に個性的なイラストが載っていましたが本稿ではAIで再現させてもらっています。

ファミコンのカセットを手で開けると、カセットの両脇にある爪が破損してしまう事が多いのです。しかし、当時のメーカーには下記の図の様な工具がありました。

kasettonoana08.jpg
※AIで再現したイラスト(筆者が描いたものを食わせています)

工具の左側にある青い四角がファミコンのカセットです。その横の黄色丸部分に、カセットの穴を引っかけて固定します。端子の方にも、固定するパーツが付いていました。こちらは端子に合わせて細長い形状でしたので、カセットの下部分が曲がらない様に固定する為でした。そしてハンドルを下げて、赤丸の爪の部分をカセットの接続端子がある方の上部真ん中に引っかけてハンドルを下げると、カセットを開けることが出来ました。(中略)

と、ここまでになりますが…
それ以外のカセットの穴の使い方は知りません。という事で、私が想像するには、カセットを分解する為の穴だと思っています。


なんと名人がファミコカセットの穴について「殻割りするためのものだと思っている」と証言したのである。しかも「当時のハドソン」ではなくて「当時のメーカー」という言い方をしていることからハドソンに限らず各メーカーに、この殻割り機があった可能性が高いのだ。

ここで前述のファミコン通信の記事を読み返してみると、本郷氏は「検査器具を引っかけやすいようにしている」という意見もあると述べていた。まさしくこの装置のことではないだろうか!?

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おそらく当時は各メーカーに殻割り機があり、少なくとも任天堂広報部はそれを認知していたようだ。万が一、これが任天堂から購入できる業務用の修理道具の一種だったとしたら「殻割り説」がにわかに真実性を帯びてくるだろう。

また、名人は冒頭で「これは私が使っていた時の事であり任天堂さんが何を考えてこの穴を開けたのかは分かりません」と断りを入れていた。これは真説を唱えたつもりはないという立場の表明と、過剰な対立を避けようとする名人の優しさが現れた一文でもあるのだが、図らずもこの「分かりません」という言葉から高橋名人ですらゴゴ通信の報じた任天堂の公式見解については知らないか保留していることがわかるのだ。

まあ、少なくとも「ただのデザイン説」がレトロゲーム界隈に浸透してないこと示す一例であることには変わりないだろう。



◆バッテリーチェッカー説の爆誕◆

しかし私は任天堂広報部の本郷氏がファミコン通信で口にした「検査器具」という言葉にまったく別の道具を想起するのだった。実はファミコン界隈には殻割り機よりも検査器具という言葉にふさわしい道具が存在するのである。

バックアップバッテリーチェッカーだ!

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こちらは正式名称「Backup battery checker KS-001」という、ファミコンのバックアップ電池の残量をチェックする道具なのだ。長いので以下KS-001と呼ぶことにしよう。

中身はこんな感じ。

kasettonoana16.jpg

説明書と工具一式が入っている。

任天堂のロゴもないしFFマークもない。一見するとなぜこれがファミコン専用のバッテリーチェッカーなのかわからないが説明書を開けば一目瞭然。そこにはファミコンのカセットのイラストが描かれているのだ。

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まあ、正確に言えばゲームボーイやスーパーファミコンにも対応しているのでファミコン専用というわけではないのだが、少なくとも任天堂のハード専用の道具なのは間違いない。

そして注目はやっぱりファミコンの図......。

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なんとカセットの穴にテスター棒が差し込まれているではないか!

実はこれ、カセットの穴を利用することで殻割りすることなく残量が図れるチェッカーなのである。高橋名人のつかっていた殻割り機のほかにもファミコンカセットの穴には使い道があったのだ。バッテリーチェッカー説の爆誕である!



◆バックアップ機能の構想◆

ただし、そんな道具があったからといってただちに「ファミコンカセットの穴は電池の残量チェックのために空けられた」と断言することはできない。なぜならファミコンカセットにバッテリーバックアップ機能が搭載されたのは本体発売から4年後にリリースされた『森田将棋』からなのだ。
追記:はてなブックマークで指摘があったのですが、バッテリーバックアップ機能は『ファミリーベーシック』のほうが先です。ただし背面に単三電池を入れる方式であり専用テスターを必要としませんでした。

famikontosonojidai.jpg

書籍「ファミコンとその時代」によると山内社長が開発第二部の上村さんへファミコンの開発を命じたのは1981年のことだった。

はたしてその頃の任天堂が将来、ファミコンカセットへバックアップ用の電池を積むことを想定して、なおかつ、その残量を測る道具をつかうことを想定して、あらかじめカセットにテスター棒をつっこむ穴を開けておくことなどできたのだろうか?

さっそくその可能性を探っていると、私はWEB上に興味深い記述を見つけた。

kasettonoana41.jpg
マクセルの沿革によると同社は1981年にコイン型二酸化マンガンリチウム電池(CR)を商品化してから1983年、つまりファミコンが発売された年には日本で初めてメモリバックアップ用塩化チオニルリチウム電池(ER)の生産を開始していたのである。

そもそもマクセルは任天堂の歴代ハードへバッテリー関係を供給している会社であり、任天堂とはファミコン以前の「カラーテレビゲーム6」時代にコラボしていたり()、ディスクシステムの媒体に採用された「クイックディスク」を開発していたり()、任天堂製品を生産する工場のひとつ「京都電子工業」がマクセルのリチウムオン電池の二次加工もしていたりなど()、大昔からズブズブの関係であることが知られている。

kasettonoana52.jpg
※ファミマガ1986,12,19

おまけにマクセルは1986年にはスーパーマリオ乾電池なんていう激アツなコラボグッズを出していたこともあるのだ。これ、マリオグッズのなかでもレア物中のレア物でぜんぜん市場に出てこないんだよね。もし持ってるという方がいらっしゃったら私オロチに譲ってくれませんか。いくらでも出しますから!

すみません。取り乱しました。笑。話を戻そう。そんなマクセルがリチウム電池を開発していることを知った任天堂が将来的にファミコンカセットに積む構想を練っていたとしてもなんらおかしくはないのだ

しかしながら、いかんせん肝心のバッテリーチェッカー「KS-001」についてはメーカーが株式会社サンパルという福岡に存在した会社だったということ以外ほとんど何もわかってないため、この道具がファミコンカセットに穴が空けられた理由と関係があるのか、はたまた任天堂とはまったく無関係でたまたま穴が空いているという仕様にフリーライドしてるだけの乗っかり商品なのかサッパリわからないというのが現状である......。

あのメールが来るまでは!



◆突破口はマクセルだった◆

実は調査をすすめていた私のもとへ海外の任天堂研究家から非常に有力なメールが舞い込んできたのだ。匿名希望とのことなので仮にA氏としよう。

まずA氏はKS-001の説明書に記載されていた「PAT出願中」という文言に注目(PAT=特許)。さっそく調べてみたところKS-001は野畠政義という人物によって発明されたものであることが判明し、Google Patentsにて野畠氏が関わったバッテリーチェッカーの特許を3件見つけたのだという。

kasettonoana15.jpg
そのうちJPH07281795AJPH07248857AについてはKS-001とは回路が一致しないため別物であったが、A氏は出願した会社のひとつにマクセルが名を連ねていることに驚いたらしい。なぜならマクセルは任天堂と強いつながりがある会社だからだと彼は力説するのだった。

マ、マ、マクセルだと~!?!?!?

kasettonoana06.jpg
※特許くらい調べてなかったのかよというツッコミは無しだぜ。(出典:J-PlatPat)


まさかこんなことある!?
鳥肌が立ったぞ!?

そしてA氏は1994年7月に提出された特許こそがKS-001と一致することを突き止めたのだ。私もJ-PlatPatで確認してみたところKS-001の説明書よりもわかりやすい図が載っていた。これは完全に入ってるね......。

ただし、この特許にはマクセルの代わりに国新産業株式会社という会社が名を連ねていた。どうやらKS-001とマクセルの間に表面的なつながりはないようだ。しかしながら他2つの特許から、株式会社サンパルがマクセルと関わりがあったことが自明であることからKS-001は任天堂内部で使用されていた可能性が高いとA氏は推察するのだった。

まさかマクセルを突破口にKS-001と任天堂のつながりを見出すとは、名探偵かよ。



◆一致する部品◆

しかしA氏の情熱はとどまることを知らなかった。Xで見つけたという任天堂の修理工具セットの明細を私に見せてきたのだ。彼はそのリストの一番目に載っている「ハイオス ウッドハンドル」という部品に注目。調べてみるとヤフオク相場サイト「aucfan.com」にて同名の出品物を見つけたのだという......。

kasettonoana17.jpg
出典:aucfan.com

驚くべきことにA氏はこれがKS-001につかわれていた工具の部品と一致することを突き止めたのだった。こちらが送られてきた証拠写真である。

Capture2.png

たしかにまったく同じだ。

私の手持ちのやつは少し形状と色が違ったが同じ型番だった。つまり任天堂で注文できる部品とKS-001でつかわれている部品が一致するということは、この道具が任天堂を介して購入できたものである可能性が高いとA氏は結論づけたのだ。マクセルにつづいて今度は「ハイオス ウッドハンドル」に注目するとは。洞察力の化身かよ。

しかしそれでもなお決定打に欠けるということでA氏は私オロチに相談してきたというわけである。いやいやもう十分すごいよ。あんた。でもそういうことなら一肌脱ごうではないか。今こそオロチ家に伝わる古(いにしえ)の特急資料の封印を解くしかあるまい。

そもそもA氏はSNSで見かけた「任天堂の明細」を手がかりにここまでたどり着いたんだよね。明細があるということは当然、注文表もあるとは思わないかい?

そう、それが任天堂エンターテイメントサービスマニュアルである。



◆サービスマニュアル◆

任天堂エンターテイメントサービスマニュアルとはかつて任天堂が展開した任天堂エンターテイメントショップをはじめとする任天堂商品を扱う小売店などに配布されていた非売品の極秘マニュアルのことだ。

kasettonoana21.jpg

じゃじゃーん。

これは16年前にとある人物から譲ってもらったもの(一部コピー)なのだが、このようにサービスマニュアルには様々な種類があって、その内容は各図面や修理の仕方や注意点、任天堂におくった場合の修理代金など、商売としてファミコンを扱う上で必要な情報が網羅されているのだ。当然、修理道具セットの注文表も載っているはず。

さっそく確認してみると......。

kasettonoana22.jpg

出たー!

修理用工具の一覧表だ。どうやら正式名称「治工具セット」というらしい。一式の価格は税別で3万2000円。項目の1番目には「ハイオス ウッドハンドル」も載っていた。この調子ならおそらくバックアップバッテリーチェッカーKS-001も普通に載っているだろう。これで万事解決だ。わっはっは。

なんて余裕こきながら全28項目を上から下まで舐めずりまわすように何度も何度も見ているのだが、そんな私の楽観的な希望は少しずつ絶望へと変貌していくのだった。

あれ、おかしいな......。
ぜんぜん載ってないやん。泣。

kasettonoana53.jpg
※ちなみに図に出てきたテスターは似ても似つかなかった

他の資料も穴が開くまでチェックしたが「バッテリーチェッカー」という文字がまったく見つからないのだった。がっくり。A氏にそれを報告すると、そもそも任天堂エンターテイメントサービスマニュアルの存在などとっくに知っていて何ならチェック済みだという。それを早く言ってよ!

しかし途方に暮れていた私に助け舟を出してくれたのはファミコン周辺機器コレクターのBAD君(@BigAfroDogg)だった。実は私は日本屈指のビデオゲーム研究集団である日本ビデオゲーム考古学会に今回の件を投げていたのだ。そのメンバーであるBAD君はバッテリーチェッカーについて調べたことがあり25番のテスター(商品タイプ)がKS-001のことなんじゃないかと助言してくれたのである。

kasettonoana43.jpg

うわあ。テスターかあ!
バックアップバッテリーチェッカーとか
KS-001とかじゃなくてテスターかあ!

完全にスルーしていたぞ。(商品タイプ)っていうのは箱に入ってるって意味かな。わからんけど、きっとこれに違いない。さっそくA氏にそのことを伝えると彼は「それは大発見だね。僕もサービスマニュアルのコピーは持ってるのだけれど見逃していたよ。きっと25番がKS-001だよ!(Great find! I have a copy of the Nintendo Entertainment Service Manual but I completely forgot to check it.It looks like number 25 could be the KS-001.)」と喜んでくれた。優しい。


というわけで今回はここまで。さらなる情報がほしいため引き続き調査続行中です。当時、実際にこの道具をつかっていたという方。任天堂から購入したという方がおられましたら是非とも話をおきかせくださいませ。あなたの情報が「ファミコンカセットの穴」問題を解決へ導くかもかもしれません。

現場からは以上です。



◆おまけ◆

さいごに「任天堂エンターテイメントバックアップ電池交換手順」というマニュアルに挟まっていたペラ一枚に興味深いことが書いてあったので紹介しよう。

kasettonoana23.jpg
1.バックアップ交換作業を初めて頂くにあたり、必ず任天堂各事務所で講習会を受けて下さい。専門的な技術の講習や取扱上の注意事項等をご説明させて頂きます。
2.バックアップ電池の交換は、専用ドライバーが使用できるスーパーファミコンカセット・ゲームボーイカートリッジについてのみ行って下さい。ファミコンカセットはハウジングの構造上、無理な分解はハウジング割れの原因となります。お客様からのお持込がございましたら、最寄りの任天堂迄送って頂ますようお願い申し上げます。

さすがにこのマニュアルなら載っているだろうと思って確認したところ、KS-001のことなど1mmも載ってないばかりか、なぜかファミコンすら載っていなかったのでおかしいなと思っていたらなんのことはない。どうやら任天堂はファミコンカセットのバックアップ電池交換については小売店での作業を推奨していなかったようだ。

っていうか、任天堂で電池交換の講習会なんてしてたんだね。知らなかったよ。あと、スーファミやファミコンは「カセット」呼びなのにゲームボーイだけは、なぜか「カートリッジ」呼びなのが面白い。笑。



orotima-ku1.png情報待ってるぜ。

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取材協力:
A氏(匿名希望)
BAD君(日本ビデオゲーム考古学会)

スペシャルサンクス:
グリナルスコーピオン氏

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コメント

すごい。こういうタイプの記事が一番シビれる。

ファミコンの穴からテスター的な物突っ込んで基盤まで到達できるような隙間あったっけ?

穴かからの実際のやり方は文中に図解が出てますね

あとひらめいたんですが、ROMを組み立てる時空気が残るの空気抵抗ではめにくいんで、空気抜きの穴を一応あけといた可能性は? 下のROMの隙間から空気が出なかった予防的に まあとんでも理論だとは思いますが

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