謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!! 追記編


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◆オリジナル?現る◆

 先日、NESエージングカセットについての調査検証記事を公開したところ、とある海外コレクターさんから重要な情報が舞い込んできた。数年前、海外任天堂マニアが集うサイト「Nintendo Age」の掲示板に似たようなものがアップされていたというのだ。

 こちら。

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SCREEN SHOT:http://nintendoage.com/forum/

 おおっ!
 
 まさにしぇぼる氏が入手したものとそっくりじゃないか。


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 ※しぇぼる氏所有のやつ



◆画像の分析◆

 この書き込みは2011年12月にされたもので、ブツは「ebay(リンク切れ)」で出品されていたものらしい。さっそく画像を拝借して詳しく分析してみよう。

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 まず、プロテクトICが6113と記載されていることがわかる。

 この数字は一説によると北米版の別タイプに配されるCICロックアウトチップのリージョン識別番号で、プログラムの圧縮方法が違うバージョン(再販バージョン?)に採用されるものだと推測されるが、正直よくわかっていない。


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 次に「CL」の意味についてだが、ご丁寧にも(C)LU.CLU.LANDと手書きで添えられているではないか。これはもう「クルクルランドのCL」で決定だろう。

 ラベル上部の印刷に関しても通常のNESソフトのように180度ひっくり返していない点は、しぇぼる氏所有のものと共通する。



◆基板について◆

 基板の画像まであるとはありがたい。

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 まずは、しぇぼる氏が所有するNESエージングカセットと同じく、右のチップにGIというマークが記載されているところに注目したい。これはGeneral Instrument社という海外メーカーが製造したチップということを表しており、書き込みによると「PAL版に使用されていた」とのことである。しかしながらプロトタイプ自体はNTSCであることが指摘されていた。

 また書き込み主によるとこのような基板は初期タイプであり、それほど頻繁に現れるものではないという。



◆真贋について◆

 2011年にNintendoAgeにアップされていたこの「6113版」自体の真贋を疑っていたらキリがないので、ひとまず本物として、この存在が今回しぇぼる氏が入手した「3196版」の真贋にどのような影響を与えるのか考えていこう。例によって偽物が疑われる要素と本物だと思われる要素を並べていくことにする。

 ◆偽物が疑われる要素
 ・これを元ネタにして偽物がつくられた可能性が出てきた
 ・これに比べたら今回の3196版はあまりにも状態が良すぎる
 ・3196版はあまりにも突然、大量に出てきた



 ◆本物だと思われる要素
 ・同じタイプのエージングカセットがあったことはむしろ信憑性を高める
 ・偽造者(必ずしも=出品者ではない)が海外任天堂マニアが集うサイトの一書き込みを元にわざわざ入手困難なアジア版クルクルランドを大量に仕入れて売れる保証のない偽物をつくるとは思えない。


 皆さんはどう考えるだろうか。


<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
序章編
検証編
完結編
追記編




orotima-ku1.png引き続き情報を募集中!!


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謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!! 完結編


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◆基板について◆

 ファミコンカセットを分解して基板を取り出す行為を「殻割り」という。前回の検証で我々に殻割りを期待したひとは多かったんじゃないだろうか。しかし文字通りの意味で、ファミコンカセットの分解には「殻が割れてしまう」というリスクがつきものであり一般的なコレクターはやりたがらないのだ。たとえ私がDr.ワイリーばりにジャンピング土下座してお願いしてもしぇぼる氏は了承してくれなかったであろう。

 第一、そんな必要はない。実はNESエージングカセットが初出のとき3500円で複数購入したと思われる人物がすでに殻を割って基板を公開しているのである。(詳しくは序章編を参照)

 

 ありがたい。ありがたい。さっそく基板の検証を始めよう。

 右の大きな黒いチップの上に「HVC-CL-0 PRG」とある。HVC-CLはファミコン版『クルクルランド』の型番であり、そのあとの数字はバージョンを表していると思われる。前述の通り同作はFC版もNES版も同じなので0なのではないだろうか。その次のローマ字だが、え、クルクルランドってRPGだったの?と思った人は早とちりさんだ。RPGでなくてPRG、これはプログラムという意味である。つまりこのチップには『クルクルランド』のプログラムが入ってますよと書いてあるのだ。
 一方、左の大きな黒いチップには「CHR」とあるが、これはキャラクターを意味すると思われる。したがってこちらのチップにはキャラクタのデータが入っているのだろう。

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 ※拡大図

 注目なのは左の小さい黒いチップ。これが検証編のときに鼻血が出るくらいしつこく解説したCICロックアウトチップである。ご覧の通り物理的に別物になっているのがわかるだろう。少しわかりにくいがここに「3196A」という文字が見えないだろうか。この数字はラベルに記載されていたプロテクトICと一致した。つまり今回しぇぼる氏が入手したNESエージングカセットはアジア/香港バージョンでほぼ間違いないということだ。



◆本物なの?偽物なの?◆

 さて、序章編、検証編と長いことNESエージングソフトについて論じてきたわけだが、皆さんの心の声を代弁させてもらうなら「で、結局、本物なの?偽物なの?」といったところであろう。先に言っておくと今回私は白黒はっきりさせるつもりはない。


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 ※しぇぼる氏所有のNESエージングカセット 

 しかしこのままで終わるつもりもない。ここはひとつ調査検証で判明した事実を真贋という名のモノサシで測って並べておくことにしよう。これをもって判断は皆さんにお任せしたい。

 それでは、まず偽物が疑われる要素について並べてく。



◆偽物が疑われる要素◆
・NES版のエージングカセットは今までまったく市場に出てこなかった
・存在が確認されている他機種のものにはデモが入っている
・それに対してこれはただの『クルクルランド』だった。
・内容が通常版と変わらないのでコピーが容易
・ラベルが紙なのでコピーが容易
・マジックや刻印もかんたんに偽造できる
・希少なアジア/香港バージョンだったとしても3万円なら余裕で儲かる
・ebayでマジック跡、刻印がまったく同じ商品が複数出ている
・NES版は前例がないものの、エージングカセット自体は前例がある
・Test Cartridgeの中にも似たようなものが存在した
・それらの要素を組み合わせればそれっぽい物がつくれる
・Test Cartridgeにはすでに偽物が大量に出回っている
・初期の複数本が売れたあと、2か月ほど期間が空いてまた複数出てきた
・工場で使っていたわりには妙に状態が良い
・ラベルに「非売品」の表示がない
・そもそもゲーム機にエージングが必要なのか?

 「エージングとは、機械や電子機器などの出荷前に行われる稼動試験、または、使用開始前に行われる「慣らし運転」のこと


 エージングを辞書で引くとこのような意味もあることがわかった。しかし今回、しぇぼる氏が入手したNESエージングカセットは他機種で存在が確認されているエージングカセットと違って、デモ映像などが入っていないただの『クルクルランド』である。何分なのか何時間なの知らないが、はたして『クルクルランド』をプレイすることがエージングになるのかどうか。根本的な疑問が横たわる。
 また、Test Cartridgeに関しては中身のプログラムがとっくにダンプされており、有志が作ったラベルの印刷用データすら存在するので、偽物がつくりたい放題の状態だ。悪意をもった者がエージングカセットにも触手を伸ばした可能性は0ではないだろう。



◆本物だと思われる要素◆
・初登場時はたったの3500円だった
・出品者が関西方面(任天堂工場があったのは京都)
・アジア/香港版『クルクルランド』自体が希少ソフト
・エージングカセットの存在がマニアックすぎて需要が見込めない
・ひとつひとつがオンリーワン商品だった
・PAL版SNES/FCディスク/GBAでは存在が確認されている

 うってかわって本物だと思われる要素は少ないが、なんといっても初出はたったの3500円だったというインパクトが大きい。なぜならただでさえ希少性の高いアジア/香港版『クルクルランド』をebayなどで入手しようとすると、それだけでも3500円を余裕で超えてしまうため、その価格で売ったら儲からないどころか赤字なのだ。

 それにエージングカセット自体は他機種で存在が確認されているため、いまだに確認されていない機種、FC、SFC(PAL版以外)、NES、GBなどに存在しない理由が思いつかない。これは私の見解だが、おそらくそれらのエージングカセットも存在はしたであろう。ただし常識的に考えて、それらのカセットは厳しい管理下に置かれていただろうから、流出することは滅多にないのである。それ以上のことは言えない、、、



◆調査中の珍事◆

 最後に、今回のWeb調査中に起こったハプニング?をご覧いただき締めとしたい。

 それは私がメルカリ探索をしていたときのこと。非常に珍しいファミコンカセットが出現し、ほんの一瞬で消えるという出来事があったのだが、そのファミコンカセットがこともあろうか今まさに鋭意調査中のブツだったのである。

 こちら。

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 まさかのファミコン版エージングカセット!

 ラベルの上部にバージョンや日付を書き込めるようになっているのはすでに見つかっているPAL版SNES用のものと同じであるが、よくみるとこれは裏ラベルである。なぜ裏なんだ、、、

 しかもFAMICOMのロゴに注目してもらいたい。


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 ご覧の通り、なぜかファミコンのロゴデザインがスーパーファミコンのほうを採用してしまっているのである。ドンキーコングといえば1983年7月15日に発売されたファミコンのローンチタイトルではないか。その時代にすでにスーパーファミコンのロゴが存在したなら、それはそれで大事件だ。おそらくこのような「エージングカセット」と称する謎の物体が、これからちょくちょく出てくると予想される。偽物には十分注意して頂きたい。

 以上でNESエージングカセットの検証を一段落させることにする。なお、エージングカセットについての情報はひきつづき募集中なのでよろしくお願いします。


<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
序章編
検証編
完結編
追記編



orotima-ku1.pngひとまずの完結編


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謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!! 検証編


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◆マジック跡と刻印◆

 愛知県某所――

 肌寒い2月の風に身震いしながら私オロチはNESエージングカセットの新たなオーナーとなったファミコン/NESコレクターしぇぼる氏宅へ取材訪問した。案内されたのは電球色に包まれた六畳ほどゲーム部屋。中心に置かれたソファーの前にテレビモニタが2台。奥には紫外線防止のためカバーがかけられたガラスケース。うしろには壁一面にファミコンソフトが並べられたカラフルな一角。その横にご自慢のNES棚が鎮座していた。全819本中215本。まだまだですよ。謙遜する彼だが私より一回りも若い青年だ。ファミコンが発売されたとき彼はまだこの世に生まれてなかった計算になる。(ちなみにファミコンカセットのほうはコンプリートまであと数十本だそうだ)
 そういえば最近、ツイッターでも若い世代のコレクターをよく見かけるようになった。この世界的なレトロゲーム争奪戦の時代にファミコンを集めようなんてやつはきっとバカだろう。だがコレクター道は最終的に「どれだけバカになれるか」という自分との戦いになるので、むしろ逸材だと思う。どうか頑張ってほしい。

 僭越ながら私はそんなエールの気持ちを込めてしぇぼる氏に手土産を渡すと、すぐさま持参した白い撮影ボックスを適当なスペースに設置して万全の受け入れ体制を整えた。さあ、準備OKだ。

 いよいよNESエージングカセットのお出ましである。


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 見た目はごく一般的なNESカートリッジだ。ラベルは紙製のような手触りである。印象的なのはプロテクトIC:3193という数字を塗りつぶしたマジックペンの跡であるが、これは印刷した紙ラベルの上から直に引かれており、同じように「3196」「CL」という刻印も直に押されているように見える。

 たとえば過去にメルカリ、ヤフオク、ebayに出品されていた他のNESエージングカセットと比較してみるとわかるのだが、、、


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出典:メルカリ、ヤフオク、ebay

 よく見ると、マジック跡と刻印は筆跡や位置、カスレ具合が個体によって異なっているのである。つまりNESエージングカセットはひとつひとつがオンリーワンな存在なのだ。(ebayで出品されているものがすべて同じに見えるのは写真の使いまわしだろうか)




◆不可解な挙動◆

 さあ、ラベルについての細かい検証は後回しにして、まずは動作確認をしよう。いったいどんな内容が飛び出すことやら。胸躍らせながらNESエージングカセットをNES本体へセット。はやる気持ちを抑えつつ電源を入れてみたところ、、、

 ※動画でご覧ください



 驚いたことに『クルクルランド』のタイトル画面が現れたのだ。

 しかしその0.5秒後にはブラックアウトしてしまい、再びタイトル画面→ブラックアウトを繰り返すのみ。この不可解な挙動はいったいどういうことだろうか。私が(はからずもこのモニター画面のように)目を白黒させていると、しぇぼる氏は思わせぶりにNESエージングカセットをNES本体から引っこ抜きコンバータを装着。となりのモニターに設置してあったレトロフリークへ挿し込んだ。


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 するとレトロフリークはNESエージングカセットをファミコン版『クルクルランド』と認識したのである。


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 当然、ファミコン版『クルクルランド』もファミコン版『クルクルランド』と認識する。彼いわく『クルクルランド』はファミコン版もNES版も中身は同じなのだという。

 そもそもNES本体は国や地域によって様々なバージョン存在し、本体及びカートリッジに仕込まれた10NESと呼ばれるCICロックアウトチップによってリージョン制限が施されている。カートリッジと本体のリージョンが一致しなければタイトル画面が一瞬だけ映ったあとすぐにブラックアウトしてしまうという挙動を繰り返すようになっているのだ。今回試した本体はNESの中でも最もポピュラーな北米版(アメリカ/カナダ)であったため、このNESエージングカセットは北米版ではなかったということである。

 だったら、なぜレトロフリークで動いたのかと不思議に思ったひとがいるかもしれないので説明しておくと、そもそもレトロフリーク本体にはCICが組み込まれていないのでリージョンの照合が行われないのである。CICはゲームが読み込まれるROMとは物理的に別物。したがってレトロフリークはNESエージングカセットのROMをそのまま認識することができたというわけだ。


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 出典:Nintendo Entertainment System (Model NES-101) - Wikipedia

 ちなみに同じ理由でCICが廃止された後続機NES2も異なるリージョンのROMを読み込むことができるとのことである。




◆プロテクトIC番号の謎◆

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 以上をふまえて、改めてラベルに目を向けると合点がいった。ここに記載されている「プロテクトIC」というのはCICロックアウトチップのリージョン識別番号だったのだ。調べたところ、それは販売された地域によって以下のような数字になっていることがわかった。

3193 北米 アメリカ/カナダ
3194 不明
3195 PAL-B フランス/スペイン/ドイツ/スウェーデン等
3196 アジア/香港
3197 PAL-A イギリス/イタリア/オーストラリア

 任天堂は主にアジア地域において、あまりにもファミコンの海賊版が氾濫したため、海外向けファミコンであるNESを制作する際に海賊版防止システムとして10NESを開発したという経緯がある。やがてNESが様々な地域へ進出するようになると、それはリージョン制限システムとしても機能するようになったというわけだ。

 したがって今回しぇぼる氏が入手したブツは3196であり、実際に北米版NES本体ではリージョン制限されてしまったのでアジア/香港版のエージングカセットである可能性が限りなく高い(すべてのバージョンの本体で試してないので)という答えに至ることができた。ただし北米版を意味する3193がマジックで消されている理由は不明のままである。


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 ちなみにNES本体の見分け方は簡単で、前面パネルの赤文字ロゴの下に必ず何バージョンか記載されている。何も記載されていない場合は北米版(アメリカ/カナダ)ということになるのだ。見分ける機会があったら参考にして頂きたい。



◆謎のローマ字「CL」◆

 つづいて備考欄にある「CL」というローマ字について検証したい。しぇぼる氏の見解ではこれはコントローラ(Controller)のCLではないかとのこと。『クルクルランド』の操作はコントローラのすべてのボタンを満遍なくつかう(セレクト&スタート以外)。だから動作チェックに最適なのだと彼は力説した。しかしこの綴りでCLはちょっと無理があるんじゃないだろうか。『クルクルランド』の型番はファミコン版がHVC-CL、NES版がNES-CLなので、ここは普通に『クルクルランド』のCLのように思える。

 こういうときはやはり比較するのが一番であろう。現在、Web検索でわんさか出てくる「Test Cartridge」の中でこのNESエージングカセットに似たものがないか調査したところ、以下の3本が見つかった。さっそく比較検証のため画像を拝借させて頂きたい。


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1:しぇぼる氏のNESエージングカセット
2:NES完成品検査カセット(出典:nintendoage.com
3:NES検査用カセットサッカー(出典:www.wtol.com
4:NES TEST カセット(NES完成品検査カセット) (出典:picdeer.com

 備考欄を見ると1以外はCICロックアウトチップのリージョン識別番号(プロテクトIC)が記載されていることがわかる。興味深いのは2と4に見られる「改造済み」という文言だ。どんな改造が施されているのか気になるところである。そして1以外に「非売品」と記載されているところも見逃せない。ごく一部の関係者以外には存在すら知られてないものを非売品アピールする必要があったのだろうか。「社外秘」ならわかるのだが。(ちなみにファミコンの『コントローラテストカートリッジ』にも非売品の文字はみられる)

 それにしても4のラベルが逆さになっているところは面白い。NESはビデオデッキのようにカセットを横から挿し込む構造のため、本来であればこちらの向きのほうがラベルが正しく見えるのだ。製品版ではないので見栄えより使い勝手を選んで、あえて逆に張り付けたと解釈してみたい。何といっても〇に修という手書きの文字がいい味を出しているではないか。きっと誰かが修理したのだろう。まさかオサムさん専用カセットという意味ではあるまい。

 妄想が止まらないのでこれくらいにしておこう。なお「CL」の意味はわからなかった(結局は)。




◆ネジ穴とネジ山◆

 次はいよいよファミカセひっくり返しおじさんの本領発揮。裏面を見てみよう。

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 残念なことに裏ラベルは最初から貼ってないようだ。その代わりネジ穴に注目すると、このNESエージングカセットはネジ穴が3つでネジ山がマイナス型だということがわかる。


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 NESカセットの形状には大きくわけて3つのタイプが存在する。すなわち「ネジ穴5マイナス型」「ネジ穴3マイナス型」「ネジ穴3星型」である。調べてみるとそれぞれ初期タイプ、中期タイプ、後期タイプであり、後期タイプの数が圧倒的に多いことがわかった。


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 左から「ネジ穴5マイナス型」「ネジ穴3マイナス型」「ネジ穴3星型」である。

 ちなみにネジ穴5タイプとネジ穴3タイプは上からみたらすぐわかる。なぜならネジ穴3タイプは上部のネジ2つが無いかわりに前殻と後殻をツメで固定するようになっているため形状がまったく異なるからである。


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 このツメは日本のスーパーファミコンのカセットにも見られることを指摘しておきたい。そんなところからも任天堂がより良いカートリッジ形状を追及し、試行錯誤していたことがわかるのだ。

 さて、肝心の『クルクルランド』であるが、しぇぼる氏が言うのにはネジ穴5マイナス型タイプと、ネジ穴3マイナス型タイプが混在するらしい。おそらく再販版がネジ穴3タイプなのだろう。試しにググってみたところ、たまたま出てきたアジアンバージョンの『クルクルランド』はネジ穴5マイナス型タイプであり、NESエージングカセットとは一致しなかった。しかしながら、こうやって上から見た構図を並べたことでNESエージングカセットの上部ラベルが逆さまになっていることに気づいたのだ。これはラベルを刷る際に、見た目よりも効率を選んだ(わざわざ文字を180度ひっくり返して印刷するのは手間だから)結果であろう。この傾向はさきほどの4番のラベルを想起させるではないか。




◆端子と殻番号◆

 ところで皆さん、ついて来ているだろうか。少々心配だが続けよう。カセットの端子部分を覗いてみると前殻と後殻にそれぞれ番号が刻印されているのが見える。これは殻番号と呼ばれており、個体を識別する上では重要な数字なので、最後にチェックしておくことにしよう。

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 しぇぼる氏が入手したNESエージングカセットの殻番号は前殻がF-22、後殻がB-21であった。ちなみに「F」はFrontのF。「B」はBackのBのことである。

 一方、端子に注目するとNESカセットの端子には大きく分けて2タイプあることがわかった。これはセンターに抜け部分があるかどうかで見分けることができる。抜け部分がないタイプは初期型。抜け部分があるタイプは後期型だ。

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 NESエージングカセットの端子は抜け部分がない初期型であり、これは『クルクルランド』と一致した。

 以上で検証は終わりである。次回完結編では皆さんが一番知りたいであろう真贋についての現時点での結論と、ファミコン版は存在するのか、在庫数はどれくらいなのか、というような周辺の情報などをまとめるつもりである。



<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
序章編
検証編
完結編
追記編



orotima-ku1.pngちなみに白い撮影ボックスはしぇぼる氏の家に忘れて帰ってしまいました。


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謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!! 序章編


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◆ebay大量流出事件◆

 オロチさん、NESエージングカセットって知ってますか。

 そのような問い合わせが情報提供ボックスへ届いたのは今月初めのことだった。なんでも突然ebayに大量出品され海外コレクター界隈がざわついているんだとか。さっそくebayを覗いてみるとこの有様である。

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 とうとう、来たか、、、

 私はモニターの前で何とも言いがたい焦燥感を噛みしめるしかなかった。じつはこのNESエージングカセットなるもの。現在でもメルカリ等で3万円前後で売られているのだが、これが初登場したときに少し不可解な経緯があったのだ。



◆不可解な登場◆

 それは去年の10月のこと――

 謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」がメルカリに初登場し、1時間も立たないうちに購入されるという出来事があった。これがそのときの画面である。

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 さきに言っておくと、この画面は現在は消滅しているので検索してもまったく出てこないのだが、ここで注目してほしいのはその販売価格だ。送料込み3500円という数字が見えるだろう。現在、同じ出品者によって3万円近くで販売され、そこそこの本数が捌けている代物が初出のときはたったの3500円だったのである!

 リアルタイムでその一部始終を見ていたというNESコレクターしぇぼる氏の証言によると、出品者は当初このカセットを3500円で複数出品しており、ほぼ全て同じ人物が買っていったとのこと。このときSNSを駆使して調査した結果、購入者はどうやら日本在住の海外業者っぽいということがわかっていた。だから私はebayの一報を聞いたとき「とうとう、来たか」以外の感情にならなかったのだ。

 一方、どうしても諦めきれなかったしぇぼる氏は別の出品物のコメント欄を通して出品者から「まだ在庫がある」ことを聞き出していた。そして去年の12月に再びNESエージングカセットが出品されるようになったというわけだ。そのとき値段が約8.5倍になっていたのは言うまでもない、、、



◆そもそもエージングカセットとは◆

 そもそもエージングカセットとは、任天堂のROM製造工場で使用されていた動作チェック専用ソフトのことである。現在はヨーロッパ版SNES用とファミコンディスク用ゲームボーイアドバンス用のものが確認されており、機種こそ違えどまったく前例がないわけでない存在だ。

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 たとえばこちらの掲示板に掲載されているエージングカセットはヨーロッパ版SNES用である。ヨーロッパのSNESは通称PAL版と呼ばれており、米国のSNESとは異なり日本のSFCと同じ形状であることで知られている。気になる内容はこの人物の手によってダンプされているようで、こちらのページから詳しく知ることができる。

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 設定を確認するような画面と、デモ映像のようなものが流れる仕組みになっているらしい。彼によるとこのカセットはフランス、またはドイツのコレクターから入手したとのことでWeb上で彼が発信した情報以外の情報は見つけられないという。

 一方、ディスクシステム版は以下のような内容である。

 ディスクシステムにセットすると、自動で書き込みと読み出しを行い、それをしばらくループさせることでエージングを行う物の様だ。2種類あり、画面や音楽が異なります。トータルカウントの表示がありますが、表示を超えてヘンな記号になってます。両方共、聞いているとトリップしそうな曲が鳴り続けます。
引用:ファミコン珍コレクション(わいくんのメカニカルクラブ)

 こちらもデモのようなものが流れるようだ、、、



◆日本語表記の謎◆

 ここで皆さんが疑問に思ったことを当ててみよう。

 上記のエージングカセット、ヨーロッパ版のはずなのに、なぜ日本語表記なのかってところだろう。実はファミコンをはじめ、NES、SNESの本体及びカセットはすべてメイドインジャパン。日本の工場で作られていたのだ。日本の工場で使用される目的である以上、日本語表記なのは至極当然なのである。

 一方、エージングという名称について着目したひとは鋭い。一般的に「Aging」といえば年を取ることを意味する。「Aging Test」ならば経年変化試験というような意味になるものの、それを略してエージングカセットという言葉にしてしまうと「年を取るカセット」という意味になってしまい英語ネイティブの海外コレクターにとってはヘンテコな響きをもっているらしい。

 現にかつて任天堂が使用していたとされるテストカセットはその名も「Test Cartridge」であり、画像検索するとわんさか出てくるのだ。

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※SCREEN SHOT:グーグル画像検索の結果

 これらの画像を見てあることに気づいたと思う。そう、「Test Cartridge」とされるものはすべて英語表記なのだ。これはエージングカセットが日本の工場で使用されていたのに対して、「Test Cartridge」は現地の任天堂支社、あるいは販売会社が使用していたからではないかと推測される。



◆そして男が立ち上がった◆

 さあ、お勉強の時間は終わりだ。

 これ以上のことが知りたければ、実物を入手して検証するしかあるまい。そこで立ち上がったのは3500円を逃した男「しぇぼる氏」であった。彼は初めて出会ったときからそのカセットのことが気になって気になって仕方なかったという。なぜ俺はあのとき購入ボタンを押さなかったのだろう。3500円チャレンジをしなかったのだろう。この度、そんな後悔の日々にピリオドを打つ決心がついたという。


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 もはや約8.5倍に膨れ上がった数字が彼を躊躇させることはなかった。男を突き動かしたのは「真相を解明したい」という知的好奇心のみ。ただそれだけなのだから、、、



<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
序章編
検証編
完結編
追記編



orotima-ku1.png次回は検証編!

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ファミコン非売品『エグゼドエグゼス』幻のロイヤル純金ステッカーと『ロットロット』配布数の謎


◆キャンペーン内容◆

 今回は昔からファミコンコレクター界で有名な非売品アイテム『エグゼドエグゼス』のメンバーズステッカーについて情報整理がてら改めて調査した。そもそもこのステッカーは供給元であるTOKUMA SOFT(徳間書店)がかつて行なっていたキャンペーンで配布された特製のファミコンROMラベルのことだ。



 このキャンペーンは『エグゼドエグゼス』の他に『ロットロット』でも行なわれたことで知られる。

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 ※同じく徳間書店のファミマガには本キャンペーンの詳細が掲載されていた

 応募方法は、ゲームオーバー時に(50万、200万、500万、1000万、または900万をクリアすると)、一瞬だけ表示されるパスワードをはがきに書いて応募券とともにエントリーするというものである。

 得点に応じて、先着順でメンバーズステッカーがもらえたのだ。



◆ステッカーの種類と当選人数◆

 ステッカーの種類と当選人数については以下である。

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シルバー:50万点:先着2000名
ゴールド:200万点:先着500名
プラチナ:500万点:先着200名
ロイヤル純金:900万点(EE)、1000万点(LL):先着10名

 単純計算では『エグゼドエグゼス』と『ロットロット』であわせて5420本の特製ステッカーが配られたことになる。

 そしてロイヤル純金ステッカーのところに「24KGP」と記述されているところに注目してもらいたい。これは金メッキがほどこされていることを示す記号だ。なんとこの純金ステッカー、メッキとはいえ文字通り本当に純金だったのである、、、



◆現存数と相場◆

 ただしキャンペーンが本当だったとしても実際の配布数がその通りにいったとは限らない。

 過去の市場でのエンカウント率などを鑑みると、シルバーはまあまあ見る。ゴールドは稀に見る。プラチナになると界隈がざわつくといったところだろうか。いずれにしてもロイヤル純金に至ってはまったく遭遇したことがないのが現状だ。

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『エグゼドエグゼス』ゴールドステッカーバージョンが高額落札される
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【プレミア商品】先着100名! [FC]エグゼドエグゼス プラチナステッカー | 駿河屋オフィシャルブログ

 そして、そのようなステッカーの目撃情報は9割方『エグゼドエグゼス』のほうであり、『ロットロット』はほぼ見かけないのだった。ロットロットのステッカーは本当に配られたのか。ロイヤル純金ステッカーなど存在するのか。このような疑問がマニアの間で沸き起こるのは当然の流れだった。



◆エグゼドエグゼズ当選発表◆

 ただし『エグゼドエグゼス』に関しては配布された揺るぎない証拠がちゃんと存在することがわかっている。それがこちらの当選発表だ。

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 ※85年後期のファミマガ

 ロイヤル純金、プラチナ、ゴールド、そしてシルバー、すべての当選者の住所(都道府県まで)、氏名、年齢がバッチリ公開されているのである。これによって、まったく見ないロイヤル純金に関しても10名様へ配布されていたことがわかるのだ。

 東京(17歳)
 東京(12歳)
 高知(13歳)
 高知(15歳)
 愛知(17歳)
 京都(15歳)
 徳島(14歳)
 静岡(16歳)
 三重(13歳)
 岐阜(14歳)


 ちなみにロイヤル純金当選者10名の年齢を見ると平均14,5歳といったところ。思ったよりも平均年齢は高かった。地域に偏りはないようだ。東海地方にやや多いか。ステッカーは86年1月に発送されたようだ。

 問題は『ロットロット』のほうである、、、



◆ロットロットの配布数の謎◆

 この当選発表ページには「今回はエグゼドの発表デス」という文言があったので『ロットロット』の当選者発表もいつか掲載されるはずだろう。そう思った私はファミマガをしらみつぶしに調査したのだが、とうとう『ロットロット』の当選発表記事は見つけることができなかったのだ。

 その代り気になる記述を見つけたので紹介しておこう。それはエグゼド当選発表記事の3ヶ月くらいあとの号に、申し訳なさそうにひっそりと掲載されていたこちらである。

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いまいちムズカシくって応募が少なかったんだけど、メンバーになりたいコ、どんどんハガキを送ってくれい!


 なんと、徳間書店自ら「応募が少ない」って漏らしちゃってるのである。大々的にキャンペーンを打ったはいいが、ことのほか反響がなかったという、編集部のなんともやりきれない悲痛な思いがにじみ出ているコメントではないか。

 また、『ロットロット』に関してはウェブ上にも興味深い記述があった。それは『ロットロット』のゴールドステッカーとともに掲載されていた次のような証言である。

200万点のパスワードで先着4番目のゴールドステッカーです。200名限定品です。これは発売後数ヶ月経っていたのでもう駄目だろうなと諦めて出した覚えがあります。そうしたら4番だったので驚くと同時に本当に人気無かったんだなと実感しました。


 ゴールドの時点でこの状況だったら、プラチナ、ロイヤル純金は、、、



◆可能性は0ではない◆

 以上のような調査によりわかったことは『ロットロット』のメンバーズステッカーのゴールドの配布数は上限の200にまで達してない可能性が高く、プラチナ、ロイヤル純金にいたっては限りなく少なかった(もしくは0だった)かもしれないということだ。

 しかしだからといって市場に出て来る可能性はまったく0ではない。

egzlot01.jpg
 ※当時のファミマガに掲載されていたメンバーズステッカー全8種類

 ファミマガは本キャンペーンの記事にて度々、このようなメンバーズステッカーの写真を掲載していた。この御利益ありそうな姿。思わず手を合わせたなくなる。これを見ると『エグゼドエグゼス』のロイヤル純金ステッカーはたしかに存在しているし、『ロットロット』のプラチナ、及びロイヤル純金の現物だってたしかに存在したことだけはわかるのだ。

 まさか応募が少なかったからって廃棄されたなんてことはあるまい、、、




orotima-ku1.pngひょっこり出て来ないかな?

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