誰も知らないファミコン・PCエンジン両用「マルチ・コントローラー」の発掘と調査報告


◆誰も知らないコントローラ◆

 2018年5月――
 その椿事は静かに起こった。

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 とあるコントローラが3万7000円という驚異的な高値で落札されていたのだ。しかし注目すべきはレトロゲーム界隈の反応だ。とくにざわついた様子もなくベタ凪状態だったのである。ごく一部の粋人のみがこの事態に気づき見守ってはいたものの結局は?マークを残したまま、急激に忘れ去られていったのだった。

 なぜならば、その理由はおそらくシンプルだ。それはこのコントローラの知名度がほぼ0だからである。したがって誰もその価値を知らないのだ。入札争いをしたマニア中のマニアを除いては、、、



◆様々なアプローチ◆

 正式名を「マルチ・コントローラー」というこの謎のブーメランの知名度の低さはデータベースにも表れている。世の中にファミコン周辺機器を網羅した書籍やWEBサイトがいくつかあるが本品を掲載している資料はひとつたりとも存在しないのだ。普通なら「何かがない」と言い切ってしまうのは悪魔の証明になってしまうため躊躇するものだがあえて断言しよう。マジで本当にひとつもないと!

 ただし情報が丸っきりつるつるだったわけではない。そもそも私がこのコントローラを探し始めたのは今から20年ほど前、ファミコンを集め始めたころに見つけた1989年当時のファミコン雑誌「ファミリーコンピュータMagagine」の新製品情報がきっかけだった。

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出典:『ファミマガ』1989年 NO.23より


 見つけた瞬間、度肝を抜いたのを今でもおぼえている。とくにこの独特過ぎるフォルム。ラザニアでもつくるのかよ!とつっこみたくなるような平べったさ。なんでもエスピーエム株式会社から登場したこのクロワッサン型コントローラはファミコン用なのにPCエンジンにも対応しているのだとか。清々しいほど意味がわからない(笑)
 
 WEB検索してみると当時、ヒットしたのはコントローラマニア界の老舗サイト「ゲームパッド地下秘密」のみだった。すごい。実物が載ってる!私は大興奮&羨望のまなざしでそれを目に焼き付けたものだ。ただしこの唯一写真が載っている記事ですら正体不明と解説されていたのだ。それ以外ではPCエンジン系サイトの老舗「PCエンジン狂の詩」に文字情報が掲載されているくらいか、、、

 興味深いのはそれぞれファミコン側からのアプローチではなく、コントローラ側、或いはPCエンジン側からのアプローチでマルチ・コントローラーまでしっかりと辿り着いていることだった。ファミコンコレクターも頑張らねば。そんな想いで私はこのコントローラを探し続けたのだった。



◆偶然、辿り着いた答え◆

 そうこうしているうちに20年の歳月が過ぎてしまった――

 それはまったくの偶然だったのだ。ある日、いつものようにファミコンショップシールの記事を執筆していたときのことだ。かつて全国規模で展開していたファミコンショップ「ブルート」の旧ホームページを掘っていると「会社の歴史」というページに以下のような記述を発見したのである。


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 思わず、震えたよ、、、

 なんと、この謎のコントローラはファミコンショップのブルートが製造・販売していたものだったのだ。こんな意外なところからマルチ・コントローラーの謎にたどり着くことができようとは。しかも正式ライセンスという初情報にたじろぎを隠せない。それが何を意味するのかと言うと、つまり「FFマーク入り」の正規品ということになるのだ、、、


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 任天堂がファミコン後期に採用した「ファミコンファミリー」マークは、当時、巷にあふれかえっていた海賊版に対して正規品を示すために導入されたものである。1988年10月23日発売『スーパーマリオブラザーズ3』が最初に付された製品だというのが定説だ。当然、1989年11月27日に発売されたマルチ・コントローラーにも刻印されているのである。

 実はこれはコレクターにとって重要なことなのだ。たとえばバージョン違いの世界ではFFマークが入っているかどうかでレア度に雲泥の差がつく場合がある。したがって彼らはいつも血眼になってFFマークを探しているのだ。そういった意味ではファミコンコレクターの大半はFFマーク過敏症を患っていると言っていいだろう。FFマークに対して陽性反応が出るやつは重症だと思って間違いない。



◆知名度が低い理由◆

 話を戻そう。気になるのはエスピーエム株式会社というあまり耳馴染みのないメーカーだ。コントローラの裏にはしっかりと「エスピーエム株式会社」という刻印があることがわかっているが、、、

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 ※コントローラ裏の刻印

 調査を続けるとWEB上に以下のような記述を発見。
 見事に「エスピーエム」と「ブルート」がつながったのである。

 ソフトウェア開発会社であるエスピーエム株式会社のブルート事業部が分離・独立して、1988年7月に株式会社ブルートを設立、以後FCを急拡大する。


 なるほど。エスピーエムはブルートの元親会社的な存在だったのか!

 ただしWikipedia情報なのでさらなる証拠資料を重ねたいところ。ということで粘り強く調査をつづけたところ、ついに決定的なブツを入手したのだ。

 こちら↓


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出典:『ハイスコア』1990年4月号誌面広告より


 発売当時の誌面広告でブルート君が自ら「マルチ・コントローラー」の宣伝をしてたのである。これで完全に「エスピーエム」と「ブルート」がつながった。しかもラッキーなことに販路に関する重要な情報が載っているではないか、、、

ブルート各店にて好評発売中! お近くにファミコンショップブルートがない方の為に特別料金にて通信販売もいたしております。


 これで本製品の知名度が極端に低い謎も解けた。つまりマルチ・コントローラーは全国チェーンの大手ファミコンショップとはいえ販路が限定れていたわけである。ディスクシステム『アイアムティーチャー』シリーズや『NHK学園』など、販路が限定されていたり通信販売だったりする製品は通常のソフトと比べると、極端に市場に出てくる数が少なくなることは言うまでもない。しかもゲームソフトでなくてコントローラだ。ファミコン再評価時代になっても人々の関心を集めることはなかったであろう。またファミコンの周辺機器なのかPCエンジンの周辺機器なのかどっちつかずだったという本製品ならではの事情も、知名度の低さに貢献したことは想像に難くない。

 ちなみにこのコントローラ、ファミコンに関しては正規ライセンスが取れたものの、NECについては取れなかったと見られている。 ※誌面の(NES商標)はPCエンジンに対する記載であると解釈できる



◆マニア心を鷲掴み!◆

 いやいやいや、事情はわかったけど、なぜ3万7000円もするん?

 もしかして、まだそんなこと思ってないだろうか。たしかに上述の事実だけでは価値が説明しきれてないかもしれない。あえて無粋な表現をするならば「本品はマニアにとって魅力的過ぎるから」といったところか、、、


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出典;1990年『ファミコン通信』より


 やはり最大の特徴である、世にも珍しいファミコンとPCエンジン両用というぶっとんだ仕様だ。

 シグマ製アーケードスティックや、HORI製ファイティングスティックMultiなど、ハードをまたぐコントローラ自体は珍しい存在ではないものの、いずれも専用のケーブルを付け替えることでマルチ対応しているのに対して、本品は画像を見てもらうとわかるように、ファミコンとPCエンジンのケーブルがコントローラ本体から2本飛び出しているというワイルドな設計。こんなコントローラは他に見たことない。唯一無二の存在なのだ。

 それはシグマやHORIといったコントローラばかりつくってるメーカーではなく、エスピーエムという言わば一発屋がつくったコントローラであるところが大きい。そのあまりにも洗練されてない設計思想が逆にマニア心をくすぐるのだよ。ローラー車に轢かれたトムとジェリーみたいな、この異常に平べったいブーメラン型のフォルムを見よ。なんだこの意味不明な中央の3つのボリュームつまみは。無駄にストロークの長い十字キー&ABボタンはどんな押し心地を提供してくれるのか。想像するだけでゾクゾクするではないか。

「唯一のFC・PCE両用コントローラ」
「エスピーエムという謎メーカー」
「接続ケーブルが2本も出てる」
「ブルートでのみ店頭販売(or通販)」
「FFマーク付きの任天堂正規品」

 掘れば掘るほど判明する事実が、悲しいくらいいちいちパワーワードなのだよ。切ないくらいマニア心を鷲掴みにしてくるのだよ!



◆サイズ&操作性◆

 というわけでついカッとなって3万7000円だ。そうだよ。私だよっ!(笑)

 もうだいたいわかってたでしょ。そりゃあクソみたいに高かったし、たぶん次に出たらこの半分以下で終わるだろうよ。でもね、お金じゃないのよ。言ってみればこれは20年分の思いなのよ。ずっと探してたんだもん。その年月で割れば1年2000円弱ってことになるじゃない。不思議なものでそう考えるとむしろ安いやん?(←あ、ダメだこいつ)。

 ともかくせっかく手に入れたんだからレビューしようじゃないか。ただし形状についてはコントローラ界の偉大なる「ゲームパッド地下秘密」先輩が詳しくやってるので要点だけ絞っていこう。サイズの比較だ。


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 並べてみるとファミコンのコントローラに対してその異常な大きさがわかるだろう。感覚的には画面のないニンテンドースイッチだよ。ついでにボタンのストロークがやや高いこともわかると思う。これがまた操作性が最低なんだよなあ(笑)


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 こちらは大きいと言われているメガドライブのコントローラと比較した図。マルチ・コントローラーがその大きさの割にボタンが小さいことがわかるだろう。ますますニンテンドースイッチだよ。しかも親指が壊死するんじゃないかと思うくらいとんでもなく固いという鬼仕様だ。これは所有者が皆口をそろえてツイートしてるから共通する特徴なのだろう。とにかく固いのだ。私の場合十字キーの下が冗談くらい固かった。スーマリのしゃがみ禁止プレイにはぴったりだぜ!
 
 あとゲームパッド地下秘密のレビューで連射ツマミについて「"2"くらい? のところが一番連射速度が安定する不思議」と指摘されているが、これはうちのマルチ・コントローラーでも同じだった。なぜか2くらいが一番連射が早い。なお、スローモーション機能についてはよくわからなかった。壊れているのかも。




◆夢の同時プレイは可能か?◆

 さて、どうせなら「ならでは」のことをやりたいよね。そこで私は最高にアホなことを考えたよ。ファミコンとPCエンジンの接続ケーブルが2本出ているということは、ひとつのコントローラで2つのハードが同時にプレイできるということなのではないか、と。

 さっそくファミコンの代表作『スーパーマリオブラザーズ』と、PCエンジンの代表作『PC原人』を用意して、それぞれモニターへつないでみる。果たして結果は、、、!?


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 ……
 
 ……あれ……?……

 ……

 ダメだ。うんともすんとも動かない……

 どういう構造なのか知らないが、どうやらケーブル2つを同時に接続した状態ではコントローラ自体が効かないようになってしまうようだ。残念!

 追記:2019/5/5
 コントローラはボタンを押したら通電することで入力を認識するため、ふたつのハードをつなぐとその時点で片ハードから片ハードへ電源が供給されてしまい入力の認識が不可能になるとの情報をいただきました。故障の原因になりかねないので、やめたほうがいいです。





◆残された2つ謎、、、◆

 ここまで長文につきあってくれてありがとう。最後に、残された2つの謎について言及しておこう。今回記事を執筆するにあたり提供いただいた箱の画像をよく見ると、そこに「ver.1」なる文字が記載されていたのである。

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出典:ヤフオク!商品写真 (提供:PCエンジン研究会様)

 バージョン1ということは2とか3があるのかと考えるのが人情というもの。もちろん「ver.1」を謳っていながら結局、後続品が出なかったなんてケースなど珍しいことではないので、これだけで2や3があるとは断定できない。あくまでも参考情報である。

 そして2つ目はこちら。

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※出典:『ゲームボーイ』1989年5月号より (提供:gponys様)

 こちらはかつて発行されていた雑誌『ゲームボーイ』に掲載されていた紙面広告である。イラストをみると、実際に発売されたマルチ・コントローラーとはずいぶん違うデザインになっていることがわかるだろう。果たしてこれは発売前のプロトタイプのようなものだったのか、はたまたイラスト担当者のまったくのイメージ図なのか、、、

 ファミコンソフトでも広告に掲載されていたROMと実際にリリースされた製品のデザインが微妙に違うといったうケースは少なくないが、ここまで違うと気になるもの。真相はいかに!?



 追記:2019年5月9日 

 匿名希望様より箱の画像を頂きました。ありがとうございます!

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 側面の画像。
 対応できないソフトの一覧は興味深い。動作するソフトと動作しないソフトの違いは何なのだろうか。『けっきょく南極大冒険』には初期バージョンが存在するんだなあ、、、


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 こちらは箱裏の画像。
 「15Pと8Pは同時接続しないでください」だと!?
 もうやっちまったよ!

 エスピーエム株式会社のロゴマークが拝めたのは嬉しい。



orotima-ku1.png誰か~、箱付譲ってください!

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謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!! 追記編


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◆オリジナル?現る◆

 先日、NESエージングカセットについての調査検証記事を公開したところ、とある海外コレクターさんから重要な情報が舞い込んできた。数年前、海外任天堂マニアが集うサイト「Nintendo Age」の掲示板に似たようなものがアップされていたというのだ。

 こちら。

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SCREEN SHOT:http://nintendoage.com/forum/

 おおっ!
 
 まさにしぇぼる氏が入手したものとそっくりじゃないか。


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 ※しぇぼる氏所有のやつ



◆画像の分析◆

 この書き込みは2011年12月にされたもので、ブツは「ebay(リンク切れ)」で出品されていたものらしい。さっそく画像を拝借して詳しく分析してみよう。

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 まず、プロテクトICが6113と記載されていることがわかる。

 この数字は一説によると北米版の別タイプに配されるCICロックアウトチップのリージョン識別番号で、プログラムの圧縮方法が違うバージョン(再販バージョン?)に採用されるものだと推測されるが、正直よくわかっていない。


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 次に「CL」の意味についてだが、ご丁寧にも(C)LU.CLU.LANDと手書きで添えられているではないか。これはもう「クルクルランドのCL」で決定だろう。

 ラベル上部の印刷に関しても通常のNESソフトのように180度ひっくり返していない点は、しぇぼる氏所有のものと共通する。



◆基板について◆

 基板の画像まであるとはありがたい。

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 まずは、しぇぼる氏が所有するNESエージングカセットと同じく、右のチップにGIというマークが記載されているところに注目したい。これはGeneral Instrument社という海外メーカーが製造したチップということを表しており、書き込みによると「PAL版に使用されていた」とのことである。しかしながらプロトタイプ自体はNTSCであることが指摘されていた。

 また書き込み主によるとこのような基板は初期タイプであり、それほど頻繁に現れるものではないという。



◆真贋について◆

 2011年にNintendoAgeにアップされていたこの「6113版」自体の真贋を疑っていたらキリがないので、ひとまず本物として、この存在が今回しぇぼる氏が入手した「3196版」の真贋にどのような影響を与えるのか考えていこう。例によって偽物が疑われる要素と本物だと思われる要素を並べていくことにする。

 ◆偽物が疑われる要素
 ・これを元ネタにして偽物がつくられた可能性が出てきた
 ・これに比べたら今回の3196版はあまりにも状態が良すぎる
 ・3196版はあまりにも突然、大量に出てきた



 ◆本物だと思われる要素
 ・同じタイプのエージングカセットがあったことはむしろ信憑性を高める
 ・偽造者(必ずしも=出品者ではない)が海外任天堂マニアが集うサイトの一書き込みを元にわざわざ入手困難なアジア版クルクルランドを大量に仕入れて売れる保証のない偽物をつくるとは思えない。


 皆さんはどう考えるだろうか。


<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
序章編
検証編
完結編
追記編




orotima-ku1.png引き続き情報を募集中!!


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謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!! 完結編


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◆基板について◆

 ファミコンカセットを分解して基板を取り出す行為を「殻割り」という。前回の検証で我々に殻割りを期待したひとは多かったんじゃないだろうか。しかし文字通りの意味で、ファミコンカセットの分解には「殻が割れてしまう」というリスクがつきものであり一般的なコレクターはやりたがらないのだ。たとえ私がDr.ワイリーばりにジャンピング土下座してお願いしてもしぇぼる氏は了承してくれなかったであろう。

 第一、そんな必要はない。実はNESエージングカセットが初出のとき3500円で複数購入したと思われる人物がすでに殻を割って基板を公開しているのである。(詳しくは序章編を参照)

 

 ありがたい。ありがたい。さっそく基板の検証を始めよう。

 右の大きな黒いチップの上に「HVC-CL-0 PRG」とある。HVC-CLはファミコン版『クルクルランド』の型番であり、そのあとの数字はバージョンを表していると思われる。前述の通り同作はFC版もNES版も同じなので0なのではないだろうか。その次のローマ字だが、え、クルクルランドってRPGだったの?と思った人は早とちりさんだ。RPGでなくてPRG、これはプログラムという意味である。つまりこのチップには『クルクルランド』のプログラムが入ってますよと書いてあるのだ。
 一方、左の大きな黒いチップには「CHR」とあるが、これはキャラクターを意味すると思われる。したがってこちらのチップにはキャラクタのデータが入っているのだろう。

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 ※拡大図

 注目なのは左の小さい黒いチップ。これが検証編のときに鼻血が出るくらいしつこく解説したCICロックアウトチップである。ご覧の通り物理的に別物になっているのがわかるだろう。少しわかりにくいがここに「3196A」という文字が見えないだろうか。この数字はラベルに記載されていたプロテクトICと一致した。つまり今回しぇぼる氏が入手したNESエージングカセットはアジア/香港バージョンでほぼ間違いないということだ。



◆本物なの?偽物なの?◆

 さて、序章編、検証編と長いことNESエージングソフトについて論じてきたわけだが、皆さんの心の声を代弁させてもらうなら「で、結局、本物なの?偽物なの?」といったところであろう。先に言っておくと今回私は白黒はっきりさせるつもりはない。


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 ※しぇぼる氏所有のNESエージングカセット 

 しかしこのままで終わるつもりもない。ここはひとつ調査検証で判明した事実を真贋という名のモノサシで測って並べておくことにしよう。これをもって判断は皆さんにお任せしたい。

 それでは、まず偽物が疑われる要素について並べてく。



◆偽物が疑われる要素◆
・NES版のエージングカセットは今までまったく市場に出てこなかった
・存在が確認されている他機種のものにはデモが入っている
・それに対してこれはただの『クルクルランド』だった。
・内容が通常版と変わらないのでコピーが容易
・ラベルが紙なのでコピーが容易
・マジックや刻印もかんたんに偽造できる
・希少なアジア/香港バージョンだったとしても3万円なら余裕で儲かる
・ebayでマジック跡、刻印がまったく同じ商品が複数出ている
・NES版は前例がないものの、エージングカセット自体は前例がある
・Test Cartridgeの中にも似たようなものが存在した
・それらの要素を組み合わせればそれっぽい物がつくれる
・Test Cartridgeにはすでに偽物が大量に出回っている
・初期の複数本が売れたあと、2か月ほど期間が空いてまた複数出てきた
・工場で使っていたわりには妙に状態が良い
・ラベルに「非売品」の表示がない
・そもそもゲーム機にエージングが必要なのか?

 「エージングとは、機械や電子機器などの出荷前に行われる稼動試験、または、使用開始前に行われる「慣らし運転」のこと


 エージングを辞書で引くとこのような意味もあることがわかった。しかし今回、しぇぼる氏が入手したNESエージングカセットは他機種で存在が確認されているエージングカセットと違って、デモ映像などが入っていないただの『クルクルランド』である。何分なのか何時間なの知らないが、はたして『クルクルランド』をプレイすることがエージングになるのかどうか。根本的な疑問が横たわる。
 また、Test Cartridgeに関しては中身のプログラムがとっくにダンプされており、有志が作ったラベルの印刷用データすら存在するので、偽物がつくりたい放題の状態だ。悪意をもった者がエージングカセットにも触手を伸ばした可能性は0ではないだろう。



◆本物だと思われる要素◆
・初登場時はたったの3500円だった
・出品者が関西方面(任天堂工場があったのは京都)
・アジア/香港版『クルクルランド』自体が希少ソフト
・エージングカセットの存在がマニアックすぎて需要が見込めない
・ひとつひとつがオンリーワン商品だった
・PAL版SNES/FCディスク/GBAでは存在が確認されている

 うってかわって本物だと思われる要素は少ないが、なんといっても初出はたったの3500円だったというインパクトが大きい。なぜならただでさえ希少性の高いアジア/香港版『クルクルランド』をebayなどで入手しようとすると、それだけでも3500円を余裕で超えてしまうため、その価格で売ったら儲からないどころか赤字なのだ。

 それにエージングカセット自体は他機種で存在が確認されているため、いまだに確認されていない機種、FC、SFC(PAL版以外)、NES、GBなどに存在しない理由が思いつかない。これは私の見解だが、おそらくそれらのエージングカセットも存在はしたであろう。ただし常識的に考えて、それらのカセットは厳しい管理下に置かれていただろうから、流出することは滅多にないのである。それ以上のことは言えない、、、



◆調査中の珍事◆

 最後に、今回のWeb調査中に起こったハプニング?をご覧いただき締めとしたい。

 それは私がメルカリ探索をしていたときのこと。非常に珍しいファミコンカセットが出現し、ほんの一瞬で消えるという出来事があったのだが、そのファミコンカセットがこともあろうか今まさに鋭意調査中のブツだったのである。

 こちら。

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 まさかのファミコン版エージングカセット!

 ラベルの上部にバージョンや日付を書き込めるようになっているのはすでに見つかっているPAL版SNES用のものと同じであるが、よくみるとこれは裏ラベルである。なぜ裏なんだ、、、

 しかもFAMICOMのロゴに注目してもらいたい。


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 ご覧の通り、なぜかファミコンのロゴデザインがスーパーファミコンのほうを採用してしまっているのである。ドンキーコングといえば1983年7月15日に発売されたファミコンのローンチタイトルではないか。その時代にすでにスーパーファミコンのロゴが存在したなら、それはそれで大事件だ。おそらくこのような「エージングカセット」と称する謎の物体が、これからちょくちょく出てくると予想される。偽物には十分注意して頂きたい。

 以上でNESエージングカセットの検証を一段落させることにする。なお、エージングカセットについての情報はひきつづき募集中なのでよろしくお願いします。


<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
序章編
検証編
完結編
追記編



orotima-ku1.pngひとまずの完結編


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謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!! 検証編


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◆マジック跡と刻印◆

 愛知県某所――

 肌寒い2月の風に身震いしながら私オロチはNESエージングカセットの新たなオーナーとなったファミコン/NESコレクターしぇぼる氏宅へ取材訪問した。案内されたのは電球色に包まれた六畳ほどゲーム部屋。中心に置かれたソファーの前にテレビモニタが2台。奥には紫外線防止のためカバーがかけられたガラスケース。うしろには壁一面にファミコンソフトが並べられたカラフルな一角。その横にご自慢のNES棚が鎮座していた。全819本中215本。まだまだですよ。謙遜する彼だが私より一回りも若い青年だ。ファミコンが発売されたとき彼はまだこの世に生まれてなかった計算になる。(ちなみにファミコンカセットのほうはコンプリートまであと数十本だそうだ)
 そういえば最近、ツイッターでも若い世代のコレクターをよく見かけるようになった。この世界的なレトロゲーム争奪戦の時代にファミコンを集めようなんてやつはきっとバカだろう。だがコレクター道は最終的に「どれだけバカになれるか」という自分との戦いになるので、むしろ逸材だと思う。どうか頑張ってほしい。

 僭越ながら私はそんなエールの気持ちを込めてしぇぼる氏に手土産を渡すと、すぐさま持参した白い撮影ボックスを適当なスペースに設置して万全の受け入れ体制を整えた。さあ、準備OKだ。

 いよいよNESエージングカセットのお出ましである。


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 見た目はごく一般的なNESカートリッジだ。ラベルは紙製のような手触りである。印象的なのはプロテクトIC:3193という数字を塗りつぶしたマジックペンの跡であるが、これは印刷した紙ラベルの上から直に引かれており、同じように「3196」「CL」という刻印も直に押されているように見える。

 たとえば過去にメルカリ、ヤフオク、ebayに出品されていた他のNESエージングカセットと比較してみるとわかるのだが、、、


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出典:メルカリ、ヤフオク、ebay

 よく見ると、マジック跡と刻印は筆跡や位置、カスレ具合が個体によって異なっているのである。つまりNESエージングカセットはひとつひとつがオンリーワンな存在なのだ。(ebayで出品されているものがすべて同じに見えるのは写真の使いまわしだろうか)




◆不可解な挙動◆

 さあ、ラベルについての細かい検証は後回しにして、まずは動作確認をしよう。いったいどんな内容が飛び出すことやら。胸躍らせながらNESエージングカセットをNES本体へセット。はやる気持ちを抑えつつ電源を入れてみたところ、、、

 ※動画でご覧ください



 驚いたことに『クルクルランド』のタイトル画面が現れたのだ。

 しかしその0.5秒後にはブラックアウトしてしまい、再びタイトル画面→ブラックアウトを繰り返すのみ。この不可解な挙動はいったいどういうことだろうか。私が(はからずもこのモニター画面のように)目を白黒させていると、しぇぼる氏は思わせぶりにNESエージングカセットをNES本体から引っこ抜きコンバータを装着。となりのモニターに設置してあったレトロフリークへ挿し込んだ。


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 するとレトロフリークはNESエージングカセットをファミコン版『クルクルランド』と認識したのである。


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 当然、ファミコン版『クルクルランド』もファミコン版『クルクルランド』と認識する。彼いわく『クルクルランド』はファミコン版もNES版も中身は同じなのだという。

 そもそもNES本体は国や地域によって様々なバージョン存在し、本体及びカートリッジに仕込まれた10NESと呼ばれるCICロックアウトチップによってリージョン制限が施されている。カートリッジと本体のリージョンが一致しなければタイトル画面が一瞬だけ映ったあとすぐにブラックアウトしてしまうという挙動を繰り返すようになっているのだ。今回試した本体はNESの中でも最もポピュラーな北米版(アメリカ/カナダ)であったため、このNESエージングカセットは北米版ではなかったということである。

 だったら、なぜレトロフリークで動いたのかと不思議に思ったひとがいるかもしれないので説明しておくと、そもそもレトロフリーク本体にはCICが組み込まれていないのでリージョンの照合が行われないのである。CICはゲームが読み込まれるROMとは物理的に別物。したがってレトロフリークはNESエージングカセットのROMをそのまま認識することができたというわけだ。


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 出典:Nintendo Entertainment System (Model NES-101) - Wikipedia

 ちなみに同じ理由でCICが廃止された後続機NES2も異なるリージョンのROMを読み込むことができるとのことである。




◆プロテクトIC番号の謎◆

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 以上をふまえて、改めてラベルに目を向けると合点がいった。ここに記載されている「プロテクトIC」というのはCICロックアウトチップのリージョン識別番号だったのだ。調べたところ、それは販売された地域によって以下のような数字になっていることがわかった。

3193 北米 アメリカ/カナダ
3194 不明
3195 PAL-B フランス/スペイン/ドイツ/スウェーデン等
3196 アジア/香港
3197 PAL-A イギリス/イタリア/オーストラリア

 任天堂は主にアジア地域において、あまりにもファミコンの海賊版が氾濫したため、海外向けファミコンであるNESを制作する際に海賊版防止システムとして10NESを開発したという経緯がある。やがてNESが様々な地域へ進出するようになると、それはリージョン制限システムとしても機能するようになったというわけだ。

 したがって今回しぇぼる氏が入手したブツは3196であり、実際に北米版NES本体ではリージョン制限されてしまったのでアジア/香港版のエージングカセットである可能性が限りなく高い(すべてのバージョンの本体で試してないので)という答えに至ることができた。ただし北米版を意味する3193がマジックで消されている理由は不明のままである。


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 ちなみにNES本体の見分け方は簡単で、前面パネルの赤文字ロゴの下に必ず何バージョンか記載されている。何も記載されていない場合は北米版(アメリカ/カナダ)ということになるのだ。見分ける機会があったら参考にして頂きたい。



◆謎のローマ字「CL」◆

 つづいて備考欄にある「CL」というローマ字について検証したい。しぇぼる氏の見解ではこれはコントローラ(Controller)のCLではないかとのこと。『クルクルランド』の操作はコントローラのすべてのボタンを満遍なくつかう(セレクト&スタート以外)。だから動作チェックに最適なのだと彼は力説した。しかしこの綴りでCLはちょっと無理があるんじゃないだろうか。『クルクルランド』の型番はファミコン版がHVC-CL、NES版がNES-CLなので、ここは普通に『クルクルランド』のCLのように思える。

 こういうときはやはり比較するのが一番であろう。現在、Web検索でわんさか出てくる「Test Cartridge」の中でこのNESエージングカセットに似たものがないか調査したところ、以下の3本が見つかった。さっそく比較検証のため画像を拝借させて頂きたい。


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1:しぇぼる氏のNESエージングカセット
2:NES完成品検査カセット(出典:nintendoage.com
3:NES検査用カセットサッカー(出典:www.wtol.com
4:NES TEST カセット(NES完成品検査カセット) (出典:picdeer.com

 備考欄を見ると1以外はCICロックアウトチップのリージョン識別番号(プロテクトIC)が記載されていることがわかる。興味深いのは2と4に見られる「改造済み」という文言だ。どんな改造が施されているのか気になるところである。そして1以外に「非売品」と記載されているところも見逃せない。ごく一部の関係者以外には存在すら知られてないものを非売品アピールする必要があったのだろうか。「社外秘」ならわかるのだが。(ちなみにファミコンの『コントローラテストカートリッジ』にも非売品の文字はみられる)

 それにしても4のラベルが逆さになっているところは面白い。NESはビデオデッキのようにカセットを横から挿し込む構造のため、本来であればこちらの向きのほうがラベルが正しく見えるのだ。製品版ではないので見栄えより使い勝手を選んで、あえて逆に張り付けたと解釈してみたい。何といっても〇に修という手書きの文字がいい味を出しているではないか。きっと誰かが修理したのだろう。まさかオサムさん専用カセットという意味ではあるまい。

 妄想が止まらないのでこれくらいにしておこう。なお「CL」の意味はわからなかった(結局は)。




◆ネジ穴とネジ山◆

 次はいよいよファミカセひっくり返しおじさんの本領発揮。裏面を見てみよう。

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 残念なことに裏ラベルは最初から貼ってないようだ。その代わりネジ穴に注目すると、このNESエージングカセットはネジ穴が3つでネジ山がマイナス型だということがわかる。


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 NESカセットの形状には大きくわけて3つのタイプが存在する。すなわち「ネジ穴5マイナス型」「ネジ穴3マイナス型」「ネジ穴3星型」である。調べてみるとそれぞれ初期タイプ、中期タイプ、後期タイプであり、後期タイプの数が圧倒的に多いことがわかった。


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 左から「ネジ穴5マイナス型」「ネジ穴3マイナス型」「ネジ穴3星型」である。

 ちなみにネジ穴5タイプとネジ穴3タイプは上からみたらすぐわかる。なぜならネジ穴3タイプは上部のネジ2つが無いかわりに前殻と後殻をツメで固定するようになっているため形状がまったく異なるからである。


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 このツメは日本のスーパーファミコンのカセットにも見られることを指摘しておきたい。そんなところからも任天堂がより良いカートリッジ形状を追及し、試行錯誤していたことがわかるのだ。

 さて、肝心の『クルクルランド』であるが、しぇぼる氏が言うのにはネジ穴5マイナス型タイプと、ネジ穴3マイナス型タイプが混在するらしい。おそらく再販版がネジ穴3タイプなのだろう。試しにググってみたところ、たまたま出てきたアジアンバージョンの『クルクルランド』はネジ穴5マイナス型タイプであり、NESエージングカセットとは一致しなかった。しかしながら、こうやって上から見た構図を並べたことでNESエージングカセットの上部ラベルが逆さまになっていることに気づいたのだ。これはラベルを刷る際に、見た目よりも効率を選んだ(わざわざ文字を180度ひっくり返して印刷するのは手間だから)結果であろう。この傾向はさきほどの4番のラベルを想起させるではないか。




◆端子と殻番号◆

 ところで皆さん、ついて来ているだろうか。少々心配だが続けよう。カセットの端子部分を覗いてみると前殻と後殻にそれぞれ番号が刻印されているのが見える。これは殻番号と呼ばれており、個体を識別する上では重要な数字なので、最後にチェックしておくことにしよう。

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 しぇぼる氏が入手したNESエージングカセットの殻番号は前殻がF-22、後殻がB-21であった。ちなみに「F」はFrontのF。「B」はBackのBのことである。

 一方、端子に注目するとNESカセットの端子には大きく分けて2タイプあることがわかった。これはセンターに抜け部分があるかどうかで見分けることができる。抜け部分がないタイプは初期型。抜け部分があるタイプは後期型だ。

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 NESエージングカセットの端子は抜け部分がない初期型であり、これは『クルクルランド』と一致した。

 以上で検証は終わりである。次回完結編では皆さんが一番知りたいであろう真贋についての現時点での結論と、ファミコン版は存在するのか、在庫数はどれくらいなのか、というような周辺の情報などをまとめるつもりである。



<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
序章編
検証編
完結編
追記編



orotima-ku1.pngちなみに白い撮影ボックスはしぇぼる氏の家に忘れて帰ってしまいました。


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謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!! 序章編


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◆ebay大量流出事件◆

 オロチさん、NESエージングカセットって知ってますか。

 そのような問い合わせが情報提供ボックスへ届いたのは今月初めのことだった。なんでも突然ebayに大量出品され海外コレクター界隈がざわついているんだとか。さっそくebayを覗いてみるとこの有様である。

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 とうとう、来たか、、、

 私はモニターの前で何とも言いがたい焦燥感を噛みしめるしかなかった。じつはこのNESエージングカセットなるもの。現在でもメルカリ等で3万円前後で売られているのだが、これが初登場したときに少し不可解な経緯があったのだ。



◆不可解な登場◆

 それは去年の10月のこと――

 謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」がメルカリに初登場し、1時間も立たないうちに購入されるという出来事があった。これがそのときの画面である。

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 さきに言っておくと、この画面は現在は消滅しているので検索してもまったく出てこないのだが、ここで注目してほしいのはその販売価格だ。送料込み3500円という数字が見えるだろう。現在、同じ出品者によって3万円近くで販売され、そこそこの本数が捌けている代物が初出のときはたったの3500円だったのである!

 リアルタイムでその一部始終を見ていたというNESコレクターしぇぼる氏の証言によると、出品者は当初このカセットを3500円で複数出品しており、ほぼ全て同じ人物が買っていったとのこと。このときSNSを駆使して調査した結果、購入者はどうやら日本在住の海外業者っぽいということがわかっていた。だから私はebayの一報を聞いたとき「とうとう、来たか」以外の感情にならなかったのだ。

 一方、どうしても諦めきれなかったしぇぼる氏は別の出品物のコメント欄を通して出品者から「まだ在庫がある」ことを聞き出していた。そして去年の12月に再びNESエージングカセットが出品されるようになったというわけだ。そのとき値段が約8.5倍になっていたのは言うまでもない、、、



◆そもそもエージングカセットとは◆

 そもそもエージングカセットとは、任天堂のROM製造工場で使用されていた動作チェック専用ソフトのことである。現在はヨーロッパ版SNES用とファミコンディスク用ゲームボーイアドバンス用のものが確認されており、機種こそ違えどまったく前例がないわけでない存在だ。

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 たとえばこちらの掲示板に掲載されているエージングカセットはヨーロッパ版SNES用である。ヨーロッパのSNESは通称PAL版と呼ばれており、米国のSNESとは異なり日本のSFCと同じ形状であることで知られている。気になる内容はこの人物の手によってダンプされているようで、こちらのページから詳しく知ることができる。

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 設定を確認するような画面と、デモ映像のようなものが流れる仕組みになっているらしい。彼によるとこのカセットはフランス、またはドイツのコレクターから入手したとのことでWeb上で彼が発信した情報以外の情報は見つけられないという。

 一方、ディスクシステム版は以下のような内容である。

 ディスクシステムにセットすると、自動で書き込みと読み出しを行い、それをしばらくループさせることでエージングを行う物の様だ。2種類あり、画面や音楽が異なります。トータルカウントの表示がありますが、表示を超えてヘンな記号になってます。両方共、聞いているとトリップしそうな曲が鳴り続けます。
引用:ファミコン珍コレクション(わいくんのメカニカルクラブ)

 こちらもデモのようなものが流れるようだ、、、



◆日本語表記の謎◆

 ここで皆さんが疑問に思ったことを当ててみよう。

 上記のエージングカセット、ヨーロッパ版のはずなのに、なぜ日本語表記なのかってところだろう。実はファミコンをはじめ、NES、SNESの本体及びカセットはすべてメイドインジャパン。日本の工場で作られていたのだ。日本の工場で使用される目的である以上、日本語表記なのは至極当然なのである。

 一方、エージングという名称について着目したひとは鋭い。一般的に「Aging」といえば年を取ることを意味する。「Aging Test」ならば経年変化試験というような意味になるものの、それを略してエージングカセットという言葉にしてしまうと「年を取るカセット」という意味になってしまい英語ネイティブの海外コレクターにとってはヘンテコな響きをもっているらしい。

 現にかつて任天堂が使用していたとされるテストカセットはその名も「Test Cartridge」であり、画像検索するとわんさか出てくるのだ。

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※SCREEN SHOT:グーグル画像検索の結果

 これらの画像を見てあることに気づいたと思う。そう、「Test Cartridge」とされるものはすべて英語表記なのだ。これはエージングカセットが日本の工場で使用されていたのに対して、「Test Cartridge」は現地の任天堂支社、あるいは販売会社が使用していたからではないかと推測される。



◆そして男が立ち上がった◆

 さあ、お勉強の時間は終わりだ。

 これ以上のことが知りたければ、実物を入手して検証するしかあるまい。そこで立ち上がったのは3500円を逃した男「しぇぼる氏」であった。彼は初めて出会ったときからそのカセットのことが気になって気になって仕方なかったという。なぜ俺はあのとき購入ボタンを押さなかったのだろう。3500円チャレンジをしなかったのだろう。この度、そんな後悔の日々にピリオドを打つ決心がついたという。


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 もはや約8.5倍に膨れ上がった数字が彼を躊躇させることはなかった。男を突き動かしたのは「真相を解明したい」という知的好奇心のみ。ただそれだけなのだから、、、



<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
序章編
検証編
完結編
追記編



orotima-ku1.png次回は検証編!

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