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CASIO「ゲーム電卓」の軌跡 ~電卓とゲームの数奇な世界~

 電卓とゲーム。

 この似て非なるものが、急接近した時代がありました。それは1980年、CASIOのMG-880から始まったと言います。CASIOはこの機種によってゲーム電卓という、魔訶不思議なジャンルを切り拓いていったのです。



 

 当時の時代背景としては、まず1978年7月にタイトーより発売された『スペースインベーダー』がたちまちブームを巻き起こし、日本中の100円玉が消え失せるという珍事態に陥るほど、誰もがインベーダーゲームに夢中になったということがありました。
 しかしこのブームは1年後には早くも下火となり、(というか下火となるからこそブームなんですけども)、次に人々の心をわしづかみにしたのは1980年4月に任天堂より発売されたゲーム&ウオッチでした。
 カシオはそんな波に乗り遅れまいと、この「デジタルインベーダー」なる電卓を開発したのでしょう。年末にはカードタイプのMG-770も発売されました。


casio カシオ MG-880 デジタルインベーダー ゲーム 電卓 稀少


casio カシオ MG-880 デジタルインベーダー ゲーム 電卓 稀少 - ヤフオク!


 サムネイル画像:ヤフオク!

 MG-880は一見、ただの電卓のように見えますが、数字をインベーダーに見立てて倒していくゲームが内蔵されておりました。これがすべての第一歩だったのです。

 今回は直近のヤフオク!落札データを参照しつつ進んでまいります。



CASIO カシオ BOXING GAME BG-15 電卓型ゲーム ウォッチ

カシオ BOXING GAME BG-15 電卓型ゲーム ウォッチ - ヤフオク!

 サムネイル画像:ヤフオク!


 続いてCASIOが世に送り出したゲーム電卓は意外にもボクシングゲーム。発売された1981年は奇しくもあのモハメド・アリが引退した年でもありました。このBG-15は主に文房具店などで流通しており、玩具店ルートで販売されたBG-15Tという機種も存在します。つまりCASIOはちゃっかりと販売ルートを拡大していったわけです。
 こちらもカードタイプのBG-8、画面を大きくして電子ゲームに近づけた仕様のBG-15と、様々なラインナップがありました。




 このゲーム、スタミナやパンチ力といった概念があったり、階級があったり、対戦相手も100人いたりと、ゲーム画面からは想像できないくらい奥が深かったそうです。職場にやたら計算したがるやつが続出したとか、隠れてゲームやってたら上司に見つかって、自分がK.O.くらったって話もあったとか、なかったとか……



◇CASIO カシオ BASEBALL GAME BB-9 電卓型ゲーム機 美品


◇CASIO カシオ BASEBALL GAME BB-9 電卓型ゲーム機 美品 - なんだ屋分店オークション - ヤフオク!


 サムネイル画像:ヤフオク!


 CASIOがボクシングの次に題材に選んだスポーツは野球でした。発売は1982年。星野仙一が引退を発表した年でしたね。(なんだこの、ちょくちょく入る引退情報) 型番であるBB-9は野球用語のBB9に由来するのでしょうか。ちなみにより電子ゲームに近づけた仕様のBB-10という機種もあります。

 当時のCM↓



 ゲームは勝抜き戦で、進むにつれ相手が強くなっていきました。バッティングは計算機チームが投げる球種を読んでタイミングよくキーを押す。ピッチングは球種キーを押す長さによってスピードが変わる仕様で、なんと36球種もありました。

 素晴らしいですね。これを持って球場に行けば、野球を見ながら野球ゲームができて、さらに打率とか防御率が計算できるという(笑)



CASIO ゲーム電卓 MG-777 動作OK -ゲームウォッチ

CASIO ゲーム電卓 MG-777 動作OK -ゲームウォッチ - ヤフオク!

 サムネイル画像:ヤフオク!


 MG-777(トライスリー)は3種類のミニゲームが楽しめる機種。発売は1981年となります。当時はまだまだ貴重だった液晶画面が、惜しげもなく4段使いとなっているのが特徴です。

 「All Same」はキーを押すと一定の法則によって変わる数字を、すべてそろえるゲーム。「Stop The Seven」はスロットマシーン。「Hit and Hit」はモグラ叩きでした。一番出来が良かったのは「All Same」でその頃、流行していたルービックキューブを意識してつくられたんだそうです。

 当時のCM↓



 篠沢教授に全部!


 さて、1982年には後続機としてMG-888(インターバルアタック)が発売されました。こちらの機種にも3種類のミニゲームが用意されていました。



 機種名にもなっている「Interval Attack」は数字ミサイルを飛ばし、邪魔してくる数字衛星を避け、あるいは粉砕しながら標的に当てるゲーム。「Shift Puzzle」はいわゆる15パズル(スライドパズル)のようなゲーム。「Lucky Dice」は右下に表示されている2つのサイコロを振り、合計数に該当する3×3マス内の数字を消していくゲームだったそうです。



CASIO カシオ サッカー GAME SG-12 電卓型ゲーム機 動作OK

CASIO カシオ サッカー GAME SG-12 電卓型ゲーム機 動作OK - ヤフオク!

 サムネイル画像:ヤフオク!


 ゲーム電卓が思いのほか好評だったCASIOは、やがて、より電子ゲームに近い電卓をつくり始めます。こちらは1983年に発売されたサッカーゲーム付き電卓SG-12。完全に電子ゲームなSG-11という機種も存在します。




 ちなみに、さっきから海外の動画がやたら多いのには理由があって、CASIOの電卓は当時、海外にも輸出されており、その中でもゲーム電卓は、海外で人気があったようです。
 このサッカーゲームはフランスでは、Olympiaというメーカーが正規代理店となって、FT-1という機種として販売していました。

 フランスといえば、1983年はかつてサッカー日本代表チームを指揮していたフランス人監督フィリップ・トルシエが現役引退した年でしたね。(引退ネタ、引っ張るなあ)



カシオ CASIO PG-200 パチンコゲーム 電卓 動作品

カシオ CASIO PG-200 パチンコゲーム 電卓 動作品 - ヤフオク!

 サムネイル画像:ヤフオク!


 CASIOはスポーツ系ゲームの他にも、囲碁(TG-2)、オクトリバーシ(CG-8)といったテーブル系ゲームも手がけていきました。こちらのPG-200はパチンコ型です。エレメカでもそうですが、パチンコ系ゲームはどうしても玉の音がうるさいという問題がありました。お好きな方は「あれが粋なんだ」と言うんでしょうけども、この機種もそんな声を反映してか、電子音のくせに調節が効かなくて、大変風流だったそうです。

 なお、この機種にも電卓がついてないタイプのPG-500がありました。潔く電子ゲーム一本にしちゃえよなんていうツッコミが聞こえそうですが、やっぱり電卓にこだわるCASIOさん、素敵です。
 このあたり、いつまでもROMカセットにこだわった任天堂に通じるものがありますよね。え、ディスクシステム?なんですかそれ。


●腕時計●CASIO カシオ 電卓 ゲーム デジタル CA-901●

●腕時計●CASIO カシオ 電卓 ゲーム デジタル CA-901● - ヤフオク!

 サムネイル画像:ヤフオク!


 CASIOといえば腕時計タイプも忘れてはいけません。



 電卓付きの腕時計は日本では安っぽいイメージがあるかもしれませんが、海外では今でも根強い人気があります。僕も学生の頃、持ってましたね、こういうの。「ボタンが多い=かっこいい」みたいな時期、ありました。
 サイバーチープとでも名付けましょうか。ファミコンのコントローラでいうウルテク3名人くんみたいな、サイバーチープな感じがたまらないですよね。「押しにくいだろ」とかいうツッコミは不要なんです。なんたってサイバーチープですから。(何度言うんだ)


 腕時計タイプにはGG-9というゴルフゲームもありました。操作は難解だったようですが、腕時計に付いてるゲームとは思えないほどよく出来ていたそうです。CASIOさんも、この技術をいかして腕時計型の携帯電話とか、出したらいいのにね。(適当)

 ただ、GG-9には電卓が付いてないので、ゲーム電卓ではないです。参考までに。


□CASIO ゲームウォッチ ゴルフ 【GG-9】電池交換済 T3325

□CASIO ゲームウォッチ ゴルフ 【GG-9】電池交換済 T3325 - リモコンドットコム - ヤフオク!

 サムネイル画像:ヤフオク!



 ということで、CASIOの電卓ゲームの数々を見て来たわけですが、なんて言うんでしょう、電卓ゲームは一見、堅物なんだけども、実はものすごい情熱を秘めていて、今思えば、当時の“底知れぬ時代のパワー”みたいなものを、ものすごい感じさせるんですよね。

 それは、なぜなんだろうなって考えたとき、1つのエピソードが思い当りました。

 ゲーム&ウオッチを開発した任天堂の横井軍平氏は、サラリーマンが電卓をいじって遊んでいた姿を見てヒントを得たと言われています。そう、すなわち電卓の中には元々、電子ゲームの源流みたいなものが流れていたんですね。

ゲームの父・横井軍平伝  任天堂のDNAを創造した男

 あと、何でもかんでも合体させちゃおうっていう時代の勢いかな(笑) しかし川はやがて大きな流れとなり大海へとそそいでいきます。

 1983年7月15日、ファミコンと言う名のモンスターが産声をあげ、80年代半ばに空前のファミコンブームが巻き起こりました。テレビゲーム産業の大勃興です。しかし、そんな激動の時代の陰でゲーム電卓は、電卓以上ゲーム未満みたいな中途半端な存在としか見られず、確かな地位を築くには至りませんでした。
 そして、誰に見送られるわけでもなく、ひっそりと市場から去って行ったのでした。(そこ、引退って言わないんだ……)


 そんな儚くも数奇な世界を感じながら、ゲーム電卓を楽しんでみるのも乙なものですね。皆さんもいかがでしょうか。


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コメント

インベーダータイプのはインベーダーというよりは、同じ数字を合わせて撃ち落とすという今で言うタイピングゲームか、音楽ゲーに近いものでしょうか。
しかし、面白かったな。個人的には後のジャンプアクションよりもコッチのが向いていた。

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