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究極のレトロゲーム互換機「POLYMEGA」がもたらす未来(あるいは捨て去る過去)

<レトロゲームの解放運動>

 本来ならレトロゲームはリーズナブルな趣味でした。現在でも一部の機種は月のカラオケ代ほどをつぎ込めば、リビングルームで同じくらい楽しむことができます。

 ただ全体的に見ると、レトロゲームという趣味は「世界規模の争奪戦」、「それにともなう高騰化」、「家族による容赦ないダンシャリ」、「経年劣化による破損、及びデータの喪失」、「テンポの悪さ」など、様々な障害物が行く手を阻む険しい道であり、よりマイナーな機種ほど鬼畜道です。
 
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 SOURCE:Q&A: THE POLYMEGA WITH BRYAN BERNAL(GWW)


 そんな状況を指を咥えて見ていられなかった有志家の一人、光メディア媒体に対応する究極のレトロゲーム互換機「POLYMEGA」の開発者であるBryan Bernal氏は、インタビュー記事で以下のように述べていました。

 再現性という観点から見ると、100%エミュレーションベースのコンソールは十分な仕事をしているように思えませんし、「Analogue Nt mini」や「RetroUSB AVS」など高品質なコンソールは特定の機種しかサポートしていません。そこで私たちは、すべてのレトロゲームに対応できるシステムを構築するべく「POLYMEGA」の開発に着手しました。

 SOUCE:Q&A: THE POLYMEGA WITH BRYAN BERNAL(GWW)


 たったひとつのゲーム機で、すべてのレトロゲームをプレイできるなら、それはある意味、理想的なシステムですよね。そう言った意味では「POLYMEGA」はあらゆる障害からすべてのレトロゲームを解放させる運動(ムーブメント)なのかもしれません……



<それは作業なのか。趣きなのか。>

 しかしながら、私は冒頭で、あえて「テンポの悪さ」をレトロゲームの問題のひとつとして挙げました。つまりそれはこういうことです。

 もういい大人になってしまった我々リアルタイム体験世代が実生活に追われながら捻出した限られた時間の中で、メガドライブを遊ぶときはAVセレクターを切り替えて、メガドライブ本体を取り出し、専用ソフトを差し込んで、複雑にからみ合った専用コントローラのケーブルを正してからプレイし、次にPCエンジンを遊ぶときはAVセレクターを切り替えて、PCエンジン本体を取り出し、専用ソフトを差し込んで、複雑にからみ合った専用コントローラのケーブルを正してからプレイ、次にファミコンのディスクシステムを遊ぶときは……

 といった一連の所作に対して、かつて感じていた”作業”以上の趣きを感じる余裕がなくなってきているという時代性(風潮ともいう)の問題です。もちろん、そんな趣きなど人生で一度も感じたことないというひともいるでしょう。逆に、感じすぎて困るから医者を紹介してくれというひともいるでしょう。私はどちらかと言えば後者ですが、たとえば「レトロフリーク」を導入しない理由はそれではありません。

 私は、その“便利さ”が怖いのです。
レトロフリーク (レトロゲーム互換機)
 かつてゲーム機は一家に一台あれば良いほうで、やがて複数所持が容易となった時代になりましたが、機種によってコンソールを変える行為を疑う人間は誰一人いませんでした。

 しかしゲーム自体がより効率的に自身を楽しんでもらえるようゲームデザインを洗練させていったように、ゲームのプレイ環境もまた、極力“ただの作業”になるような行為は排除されてきたはずです。その方向性はエントロピー増大の法則に抗おうとする、極めて生物学的な行動原理に基づいているとさえ言えるでしょう。

 「POLYMEGA」の登場は、そのようなただの作業を捨て去るべき過去にするかもしれません。正直言うと私の中でそれを大歓迎する私と、一抹の不安を抱える私が存在します。なぜなら便利さは感動のハードルを上げてしまうからです。

kanbannintendo21.jpg
なぜ古参は「昔のほうが良かった」のか? たった1つの理由
 感動のハードルについての詳細はこちらの記事をご覧ください。





<本当の問題は「感動のハードル問題」>

 現在、そのような面倒な所作を賛美しているのは一部の懐古主義者だけです。しばしば彼らはレトロゲームコレクターも兼ねています。「POLYMEGA」は彼らのコンソールコレクションをただのインテリアにしてしまうかもしれません。もちろん彼らには「買わない」という切り札がありますが、そのカードのほとんどは未使用のままデッドストック品となるでしょう。
 
 なぜなら私もそうですが、やはり根本はゲーマーなのです。

 現に私はこの文章を書いている今でも、私の中の「感動のハードル」を上げてしまった象徴的存在を携帯しています。iPhoneという名のスマートフォンです。それは、いつでもどこでも持ち歩けて、ありとあらゆるジャンルの名作から駄作までのゲームが、一部を除き基本無料でプレイし放題であり、下の丸いボタンを押せば3秒以内でタイトル画面まで行けるという、最強のハンドヘルド型ゲーム機です。
 ただし、極めて現実拒絶レベルが高いため、うっかり没頭してしまい、妻の話に的確なあいづちを打てなかった場合、しばしば画面だけでなく、妻との関係性にも大きなヒビを発生させる危険性を孕んでいました。(修復不可能なほどの)

 ところが、ある日、私は気が付いたのです。結局、それはただひたすら作業だったということに……

ge-muyatterukan.png
 ※イメージ図

 なぜなら「いつでもどこでも3秒でゲームし放題」が当たり前になった夢の世界では、感動のハードルが上がり過ぎていて、よほどの跳躍ができない限り、「ゲームやってる感」が出なくなってしまったからです。それは簡単にいえば“やりすぎ”と言う現象でした。

 もっとハッキリ言いましょう。私のような種類の人間には、正常な自制心が備わっていません。(あったらファミコンカセットを全部集めたりしない)

 おそらく私にとってゲームとは、ちょっと不便なくらいがちょうどいいのでしょう。にも関わらず私は「買わない」というカードを切らないかもしれません。それほどまでに私の目には「POLYMEGA」が魅力的に映っているのです。そして、どうせ実生活に支障をきたすレベルでハマってしまい、どうせある日、仕事から帰ったら家に誰もおらず、どうせ食卓にポツンと離婚届が置いてあるなんて未来が待っているのです。

 残念ながら、毎晩のように行っているイメージトレーニングの中でさえ、そのような事態は避けられませんでした。以上が、私の“便利さが怖い理由”となります。

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なぜスマホゲームは「時間の無駄」なのか?
 現実拒絶レベルについての詳細はこちらの記事をご覧ください。





<インタビュー記事について>

 さて、冗談はこれくらいにして(笑)、最後に、このインタビュー記事について少しだけ気になるポイントを紹介したいと思います。

GWW:「POLYMEGA」の最大の魅力のひとつであるモジュール方式について

 モジュール方式はひとつのハードウェアで複数の機種に対応するためのシステムです。このモジュールを使用すると、「ハイブリッドエミュレーション」という仕組みを通して、オリジナルカートリッジの再生やバックアップもちろん、オリジナルのコントローラの使用も可能になります。
 今後のモジュール対応機種については、合法的な方法で実現可能なすべての機種が対象となります。



 おそらく、この「ハイブリッドエミュレーション」という技術が、この画期的なレトロゲーム互換機の核心部分なのでしょう。そもそも「ハイブリッドエミュレーション」とは、どんな仕組みなんでしょうか。氏は以下のように述べています。

 ハイブリッドエミュレーションについて、多くのひとが誤解しているようです。これはプロセッサ上で動作するエミュレータであり、ユーザーが手持ちのソフトウェアをインストールすることを選択しない限り、リアルタイムでメモリにダンプすることはありません。一方でこのシステムは、クローンハードウェア/ FPGAシステムとの互換性を持っています。



 正直、このへんは疎いので何を言ってるのかわかりません(笑)

 インタビュー記事では他にも、特殊チップをつんだソフトについて、サードパーティ製のコントローラについて、対応が見送られたニンテンドウ64についてなどが語られています。興味があるひとは是非、原文をチェックしてみてください!


orotima-ku1.png予約開始は今年の秋……
販売開始は来年の夏の予定だよ。




 Link:Q&A: THE POLYMEGA WITH BRYAN BERNAL(GWW)
 Link:POLYMEGA公式サイト


関連記事

コメント

Analogue Nt mini、RetroUSB AVSは、FPGAだったかと
FPGAをNES(ファミコン)互換機以外にも、実装されるってことかな

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オロちゃんニュース!!
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 失われたファミコン文化遺産「ショップシールの世界」2020年6月26日発売

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