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「玩物喪志」「病気自慢」26年前のオタク評が心に刺さる件

<1992年という時代>

 今回は、1992年4月に発行された長山靖生著『コレクターシップ』という本のオタク評が、26年前の言説にしては心に刺ささる部分が多かったので感想など並べてみたい。

 その前に、ひとまず本書が出版された時代を振り返っておこう。

 1992年は元号でいうと平成4年。ときの首相は宮沢喜一である。ヒット曲は「もう恋なんてしない」「ガラガラヘビがやってくる」「部屋とYシャツと私」などが挙げられる。ファミコンでは『ギミック!』『聖鈴伝説リックル』『烈火』などがリリースされた末期。登場から2年が経っていたスーファミでは『マリオカート』『ドラクエV』『FFV』などの人気タイトルが世の中を騒がせたSFC黄金期だ。



 そんな1992年は、かの風船おじさんが大空の彼方へ消え去った年でもあった。




<玩物喪志のオタク評>

 さて、本題である。

 本書に綴られているのは、コレクションという娯楽が王侯貴族のたしなみだった時代から、個人資産家や大企業が担う文化的活動へ変貌していった現代に至るまでに活躍した、名だたる美術品・骨董品・稀覯本コレクターたちの物語だ。
 
 そんな権威がましい書物の冒頭部分で、やや唐突に始まるのが次の一節である。

 ここで、オタクと呼ばれるコレクターもどきについても、我々は考えてみなければならない。オタクというのは、M君の幼女誘拐殺人事件で、一躍有名になった言葉だ。(中略)
 こうしたオタクと従来からのコレクターとは、まったく別の存在だと言いたいところなのだが、コレクターシップを持たないコレクターは、たとえその収集の対象が美術品であれ、学術的価値の高い資料であれ、しょせんは玩物喪志のオタクにすぎないだろう。

 冒頭から「もどき」呼ばわり(笑)

 世間の「オタク」に対するイメージを決定付けたといわれる、あの重大事件にかこつけているところなどは時代を感じさせるが、少なくとも、この筆者は「オタク」という言葉をヒステリックなまでに毛嫌いしているようだ。



 玩物喪志(がんぶつそうし)とは「くだらない物に心を奪われて大切な志を見失ってしまう」というような意味であり、一昔前は、ほぼオタクと同義語のように使われてきた四字熟語である。この解釈に従えば、文面から「大切な志=コレクターシップ」という方程式をすくい取ることができるだろう。

 


<オタク≠コレクターシップ>

 ここからこの著者はオタクを「低俗なコレクター」と定義付けて、筆法鋭く痛烈な持論を展開する。

 既存の権威に盲目的で知ったかぶりをする手合いをスノップ(俗物)とすると、オタクと呼ばれる人々の多くを占めているのは逆スノップとでも言うべき、病気自慢の精神であるように見受けられる。
 広い社会的模範を軽蔑する一方、ひどく限定されたマニアの世界での価値観を信奉し、そのなかで他人に“自慢できるもの”に固執するのは、本質的には私が名指すところのコレクターではないのだ。

 思わずニヤリとしてしまった。26年前のオタクにシンパシィを禁じ得ないからだ。私自身「自分はファミコン病なんじゃないか」と何度思ったことか(笑)

 そこは素直に自省しなければなるまい。

 また、“自慢できるもの”に固執するという現象は、むしろSNSが発達した現代のほうが観測がたやすいように思う。本書に言わせれば所謂「インスタ映え」がリア充アピールなら、「オタク映え」というのは病気アピールといったところか。

photo_jidori.png

 たまにtwitterを眺めてると、何にかにつけてコレクション画像を晒し、誰も聞いてない衒学発言を繰り返しているアカウントを見かけるが、不愉快に思っている人間も少なくない。単純にセンスの問題かと思うのだ。我々はSNSのような場所が、昔のように「ひどく限定されたマニアの世界」ではないことを、もっと認識しなければならないのだろう。

 引用を続けよう。

 逆に、真に自分自身の眼差しによって選択したなら、集める対象が漫画だろうがリカちゃん人形だろうが、オタクではないといえるだろう。問題はあくまでも、その心性のあり方なのだから。

 ここでいう「心性のあり方」とやらも、この著者のいうコレクターシップを指す言葉だといっていいだろう。あくまでも「オタク≠コレクターシップ」という定義を崩さないその論調は、内容の是非はともかく、筋が通ってるように思えたのだ。




<不可解な展開>

 しかしながらここから不可解としか言いようのない展開が待っていた。

 実はこの書籍、2005年に再出版されているのだが、信じがたいことにその書名を『おたくの本懐』と改めていたことが判明したのである。しかも副題がまったく同じなのだ。これが何を意味するかというと、記号学的には「オタクの本懐=コレクターシップ」という方程式が成り立ってしまうということである。

 この逆説的アプローチには、いったいどういう意図があるというのか……

コレクターシップ―「集める」ことの叡智と冒険 (TURTLE BOOKS)おたくの本懐―「集める」ことの叡智と冒険 (ちくま文庫)


 深追いはしない。
 最後に、本書の末尾で再びオタクが言及されていたので、その一節を引いておく。

 ここで再びオタク問題に触れておくと(中略)、逃避のために、とりあえず求めるのであってはならない。“なに”を求めているかをはっきりさせることが重要なのである。なぜなら、求めるべき対象を把握することを通して、求める“わたし”もまた鮮明になってくるからである。そこにコレクションとともに、ゆるぎない“わたし”が見つかるだろう。

 結局は「自分探し」という今ではやや陳腐化してしまった概念に帰結している本書のオタク評ではあったが、心に刺さる部分もあると感じたのは私だけだろうか。



orotima-ku1.png「オタク」の定義はひとによって違うし、
時代によっても変わっていくものだよね

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コメント

本題とは関係なく申し訳ないが。。。かつて、クラブの練習中に飛び立つ風船おじさんを目撃したよ!その後、ニュースになって驚いたのなんの南野陽子。

連続投稿すみません。
そういや、そのときにバルーンファイト!ってみんなで笑ったことを反省してます。
せめて、カミナリに撃たれたりしてませんように。とか、海に落ちて魚に食われたりとかしてませんように。とか祈るばかりです。
どこかの島に不時着して、マッチョマンになっていてくれたりしないものだろうか。。。

おたく。多ジャンルに及ぶのでそれに該当する人間がしない人間を上回ってしまい、差別用語としては無力化した感じ。その逆説的な言葉「リア充」が出来た辺りからでしょうか?

5555さん
風船おじさんを目撃したとは貴重な体験をしましたね。今だったらまっさきにスマホで写真をとっていたことでしょう。ぜんぜん関係ないけどキリ番ですね!

5556さん
差別用語としては無力化。たしかに昔ながらのイメージのおたくはだいぶ減ってきたイメージ。そう考えると「リア充のオタクアピール」というわけのわからない逆転現象が起こる理由もわかるような気がします。

今でこそオタクって必ずしもマイナスなイメージはなくなったけど当時はヤバイ連中だと思っていた。オタクって結局友達がいないからゲームとかアニメとか走っちゃう。普通はサークルに入ってコンパして彼女作って学生時代を過ごすところを変な趣味に入っちゃう。まあ今は個人の尊厳とかなんとかで批判もできないが、まあ見た目が大事ってことかな。それと裕福なオタクっていない気もする。

まあ古い人間なので今の人の感覚にはついてはいけませんが、イケメンのオタクならいいと思う。

今のSNSのレトロゲーム界隈は
高いもんを買ったり持ってる自慢しないと話ができないような窮屈さがありますね
レアですよね、高いですよね、持ってます(^^)みたいなのばっかり
気持ち悪いことになっちゃったなあ

オタクと言われだした当初は、実際には調べてみると、
女子(オタク)との交流が結構多かったり、友達関係も交流が多いなど
実際には当初と違った実像だったかと。

まあその後は個人化が進んだり、事件と絡められて報道されだしたんで、
イメージ的にはマイナスな感じが広まったかな。
最終的に今じゃ普通というか、趣味の一種になったので。

個人的にはSNSでの写真とかは、自慢してるだろうとは思うけど、
「自慢するな」とは別に思わない。どうも何かにつけ「自慢」と捉えるように
なったのは、ここ10年ぐらいからかなあーとも感じる。普通に話してた人ががいなくなってから、
「あの自慢はないな」と感想が出てて、疑問に思ってしまった。
そこまで気にするもんかな。

たまにこのブログを眺めてると、何にかにつけてコレクション部屋の画像を晒し、誰も聞いてない衒学発言を繰り返してて、非常に不愉快だ。

オセロマルチビジョンさん
今はいわゆるステレオタイプなおたくは逆に珍しいかもしれません。

5562さん
これは悩ましい問題ですね。もともとツイッターやブログって好きなひとが好きなこと書いて、見たくないひとは見なければいいっていう場所だったと思うんですけど、一方で開かれたメディアとしての性質も否定できません。そのバランス感覚を僕は「センスの問題」という言葉に託しました。まったく同じ物でも見せ方次第で「お洒落だなあ」ってなったりするんですよね(笑)

5564さん
>どうも何かにつけ「自慢」と捉えるようになったのは、ここ10年ぐらい
そうなんですよ。たとえば僕が記事の画像に「オロチ所有」というキャプションをつけるのは、ネットで拾ってきた画像じゃないですよっていう意味くらいしかないのに、そう取ってもらえないひともいるんですよね。困ったものです(笑)

ピコピコ団さん
本文でも言いましたが僕は「センスの問題」だと思ってます。これは2種類の意味があって、発信するほうのセンスがあるとかないとかいう意味と、もうひとつは受け取る側と「センスが合うかどうか」です。実生活でもセンスが合わないひととは自然と疎遠になりませんか。それでもあなたがそのひとのことが気になって、たまに眺めてしまうなら、実はセンスが合ってるってことですよ。いい加減、認めてください(笑)

オロちゃんニュース!!
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 失われたファミコン文化遺産「ショップシールの世界」2020年6月26日発売

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