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発売当日に買ったファミっ子が『銀河の三人』開発者へ突撃インタビュー「なぜ永井豪なんだ!」

◆銀河の三人とは?◆

 PCゲーム『地球戦士ライーザ(エニックス/1985)』のファミコン移植作品。主人公と、お調子者のブルー、ESP少女リミの3人が、謎の文明ガルムの侵略を阻止すべく「ライーザ」に乗り込み地球を救う物語。販売本数は22万本と言われている。

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 発売は任天堂、キャラクターデザインは漫画家の永井豪氏、音楽がYMOの高橋幸宏という豪華布陣でリリースされた本作であるが、そもそも「なぜ任天堂から発売されたのか」「なぜタイトルが変更になったのか」「なぜパッケージデザインとゲーム中のキャラクタデザインが違い過ぎるのか」など謎が多い作品でもあった。

 今回はそんな長年、ファンが抱いていた謎の数々について、シナリオを担当した九葉真さんへ突撃インタビューをしてみたよ!


◆主な登場人物◆

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九葉真(杉江正)
1966年生まれ。東京都稲城市出身。
高校生のときにゲーム制作集団「スタジオジャンドラ」を結成。アニメ調のSFADV『ザース(84年/エニックス)』を制作。続いて『地球戦士ライーザ(85年/エニックス)』を発表し、そのファミコン版『銀河の三人(87年12月/任天堂)』ではシナリオ等を担当した。


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市長queen(@DynamiTracer
インタビューアー。まとめ担当。
スクウェアグッズ(SFCまで)コレクター。『銀河の三人』を発売当日に買ってプレイした筋金入りのファミっ子である。


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オロチ
文・注釈・構成。

 ※この記事にはネタバレを含みます。ご注意ください!!

 ↓

◆タイトルが変更された理由◆
市長queen(以下:市):『銀河の三人』は元々はエニックスの『地球戦士ライーザ』というPCゲームの移植作品でした。九葉さんはどういった立場で制作に携わっていたのでしょうか?


 ※地球戦士ライーザのパッケージ

九葉真(以下:九葉):『地球戦士ライーザ』を制作するにあたって、エニックスから「宇宙を舞台にしたSFアドベンチャーゲーム」の提案がありました。シナリオのプロットは宇宙戦艦ヤマトシリーズのシナリオを手がけた長谷川康雄さん。グラフィックデザインは真島真太郎さん。ゲームデザイン、ストーリー、メインプログラムを担当していた私がアドベンチャーからRPGにしました。



九葉:『銀河の三人』はそのファミコン版で、私はゲームデザイン、シナリオ、バランス調整、マップデザイン等を担当。プログラムはパックスソフトニカです。(※) 

:タイトルが変更された理由なんでしょう?

九葉:ライーザは「ライザー」という登録商標があったので使えなかったのです。のちに任天堂から「銀河の三人」との命名のお知らせがありました。

:なんと、原因は商標問題だったのですね。しかも命名は任天堂側だったとは初めて知りました。
 

orotima-ku1.png<オロちゃんポイント>
パックスソフトニカはファミコンの『バレーボール(DISK)』や『新鬼ヶ島(DISK)』などを製作した下請け会社だよ。



◆開発に2年もかかった!?◆
:そもそも、どういう経緯があって、任天堂からの発売になったのですか?任天堂が他社ゲームを移植するなんてファミコンでは『スパルタンX』くらいじゃないでしょうか。珍しいケースだと思うのですが、、、

九葉:エニックス社内のクローズドな環境で決められた決定なので、私には分かりませんが、あの頃は『アクトレイザー(90年12月/SFC)』や『46億年物語(90年5月/PC)』の開発や『ドラクエ3』の販売時期がかぶっており、手が回らなかったのではないかと思っています。

 
 ※PC-9801シリーズ向けRPG(左)/エニックス初のSFCソフト。開発はクインテット(右)

九葉:しかも『銀河の三人』は開発に2年もかかったので、ROM容量が4倍(メガロム)の時代に16KBのROMだったのです。そのような低容量RPGを出すと、ブランドイメージを損なうという判断が下されたのではないかな、、、

:開発に2年もかかったのですか! 私は当時、ファミマガを見てライーザがファミコンへ移植されることを知りました。誌面では「人気PCゲーム」と謳われていて、たしか、そのとき既に発売は任天堂だったように記憶しています。

九葉:正直言って私はエニックスから出るものだと思って開発してました。「エニックスから発売できない」と聞いたときの衝撃は今でも忘れられません。思えば当時、ゲームが完成してもエニックスから販売される保証はありませんでした。例えば『舞臓魔(PCゲーム)』は完成後パックスソフトニカから発売されています。他にもたくさんあるはず。

:たしかにファミコンで言えば、当時のエニックスはドラクエシリーズ以外だと『ドアドア』、『ポートピア連続殺人事件』、『ジャストブリード』の3作品しかリリースしていませんでしたね。(※)


orotima-ku1.png<オロちゃんポイント>
1987年にエニックスより発売されたPCゲーム『ジーザス』も、ファミコン版はエニックスからではなくキングレコードから発売されているぞ!



◆永井豪のパッケージ絵について◆
:これはファンの間で語り草になっている話ですが、漫画家・永井豪先生のパッケージデザインは色んな意味で衝撃的でした(笑)

九葉:ファミコン版の作成にあたりどうせなら有名な漫画家に書かせたらという判断があり、出版事業とつながりの強かったプロデューサーが永井豪先生を勧めてそのまま作成されました。パッケージはゲーム作成中にすでに出来上がっていたと記憶していますが、うーん、30年前なので微妙に違うかも。

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 ※パッケージのリミ(左)と、ゲーム中のリミ(右)

:ここだけの話、私は小学生の当時、あのパッケージの絵を見て、買うのを躊躇しましたからね。念のために確認させてください。この女性はリミですよね?

九葉:私もリミだと思っています。そもそも設定ではコンピュータードール・ミオは実態を持たない。

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 ※コンピュータードール・ミオとマドンナ系ガルム

:キャラクタでいえば私はマドンナ族の女性人型ガルム軍がお気に入りです。敵キャラのデザインも永井豪先生によるものなのでしょうか?

九葉:私の記憶では 敵キャラは全部眞島さんのデザイン。私も製作中は永井豪さんに直接お会いしたことはないです。でも永井豪デザインっていうことになっているので、そういう事にしておいたほうが良いかな(笑)

:そういうことにしておきましょう!



:音楽担当はYMOの高橋幸宏さんですよね。戦闘曲の出だしがYMOのライディーンにそっくりです。

九葉:詳細は憶えてませんが、エニックスの誰かのつながりがで紹介されました。たしかエニックスの社員の方が「ライディーンみたいなかっこいい戦闘曲をお願いします」というようなことを注文していたはず、、、



◆幻の水着シーン◆
:本作は他のRPGゲームと比較しても色違いの敵キャラが断トツに多いことが、今でもネタにされることもあります。

九葉:設定ではガルム軍階級構造(ヒエラルキー)が有って、名前の前の部分が階級、後ろの部分が種族を表していました。本当はもっとグラフィックに変化をだして、階級ごとに違う能力を表現したかったんだけど、どうしても容量が足りなかったのです。

:ズバリ、お気に入りの敵は?

九葉:個人的にはドン族の顔を閉じて固くなる技が好き。

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 ※ドン族が固くなる技

:容量が足りなかったとのことですが、その関係で削ってしまった要素などはありますか?

九葉:アルファベットはE,S,Pの3つしか入れることができなかった。もっとアルファベットを使えるようにしたかったですね。あと、インターミッションの地球でのリミとの会話シーンがテキストと顔グラフィックだけになってしまったのは残念。PC版並みに海水浴シーンを入れたかったのですが容量的にどうしても無理でした。

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 ※PC版の海水浴シーン

:それが実現していたら任天堂ゲームの女性キャラでは『メトロイド』のサムスに次ぐ水着キャラ誕生だったかもしれませんね、、、(※)
 

orotima-ku1.png<オロちゃんポイント>
『メトロイド』の主人公サムスは条件によってエンディングで水着姿になったんだよ。




◆斬新なアイデアの数々◆
:戦闘時のブルーが喋ったり、ツッコミをいれたりする演出も九葉さんのアイデアですか?

九葉:セリフは基本的に全て私が考えて、プロデューサーがチェックしました。パックスソフトニカのひとがアドリブで入れたところが若干あると思う。

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 ※戦闘中に仲間が喋る演出は斬新だった

:リミを超能力によるサポート役にさせたのも?

九葉:リミの魔法は企画会議でウィザードリィっぽく(ドラクエっぽく)したいというエニックス側の意見で取り入れました。ESPの技「あい」とか「なぐさめ」は企画会議で一つ一つアイディア出しをして決めました。

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:私はこのゲームを発売当日に買いました。何といってもブラックホール出現イベントがトラウマ級に印象に残っています。結局、リミのESPで窮地を脱するわけですが、そのとき彼女は主人公の名前を叫び続けました。その後、ブルーと主人公の関係がギクシャクしてしまうところがありまして、ゲームであのような気まずい雰囲気になったのは初めてでした。

九葉:ブラックホールイベントは道を歩いていたらアイデアが降ってきましたね。

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 ※ブラックホールイベントで苦しむリミの様子

:戦闘後に一般人からの通信が届くという演出も斬新だと感じました。

九葉:あれを考えるのは楽しかった(笑)

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 ※一般人から届くメッセージのひとつ

:お気に入りの設定とかありますか?

九葉:個人的にはSF設定の生体力場が気に入っています。ライーザの活動エネルギーはパイロットのESPパワーをエネルギーに変換したもの。ブラックホールはガルム艦のエネルギー源。後にガイナックスから「トップをねらえ!2」が出ましたが、生体力場のイメージはこれに近いと思います。



◆ラストダンジョンの謎◆
:当時を思い出すと不思議だったのは、任天堂はゲームソフトを出すと必ずテレビCMが放送されていたのですが、『銀河の三人』だけCMがなかったことです。

九葉:販売に関しては 任天堂の内部事情なので私もよく分かりません。色々あって開発が遅れてしまいましたが、今思えば何としてでも1986年に発売すべきだった。

:たとえばどんなことがあったのですか?

九葉:エニックス初期のファミコンソフトということで、社員の方々の大変な期待を受け、みなさんから結構バラバラな意見が沢山でました。多くのユーザーに受け入れられるようにわかりやすいゲームシステムが必要と言うことになり、初期版は二次元のマップが否定され一次元のマップになってしまいました。

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 ※マップ画面

九葉:しかし、実際にプレイしてみると世界に広がりを感じられず、結局二次元マップで作り直すという事になり、余計に工数と時間がかかってしまったのです。

:それは大変でしたね。バランス調整についても意見があったのでしょうか。たとえばあのラストダンジョンは、発売当日に買ってプレイしていた私でも、鬼エンカウントと広大なマップに打ちのめされて、結局、クリアを断念したという苦い思い出がありまして、、、

九葉:それも社員から「他のゲームでは苦労してクリアしたイベントで感動した」というユーザーの声を紹介され、『銀河の三人』もラストダンジョンの難易度を上げることになったのです。作った本人ですら20回トライして1回クリア出来るくらいの難易度でした。挫折した人ごめんなさい!という気持ちです。

:いえいえ、それでも私は『銀河の三人』が大好きです!


◆まとめ◆

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 1987年12月のクリスマスゲームソフト商戦。 『ファイナルファンタジー』『ロックマン』『ウィザードリィ』とその後シリーズ化されていく強豪ソフトがひしめく中、私が『銀河の三人』を選んで発売日に買った理由は「任天堂だから」の一言に尽きます。私は「任天堂=ハズレがない」と信じて必ず購入する「任天堂ソフト狂信者」でした。

 そのような狂信者でも、購入時に『銀河の三人』のパッケージイラストから漂う違和感にかなりの抵抗がありましたが、いざ遊んでみるとその違和感はすぐになくなりました。広大な宇宙空間を冒険している感覚があり、BGMもカッコイイ。ブルーの戦闘中のツッコミや、戦闘後、地球からの通信メッセージが届くのが斬新で、ガルム軍との殺伐とした戦闘を和らげ、自分は地球を守っているという使命感を感じずにはいられない。リミが主人公に想いを寄せていくストーリーにヤキモキするところもあり、私は発売日に買って大正解だったと今でも誇りに思ってます。

 今回、いろいろな機会に恵まれて『銀河の三人』の開発者である九葉真さんにインタビューできたことは夢のようであり、自分の墓場まで持っていきかけそうになった『銀河の三人』に関する30年来の謎が解け、感動と感謝の言葉しか出てこないです。ありがとうございます。

 本当は九葉さんから『銀河の三人』のエンディングについても聞きたかったところなのですが、記事にもあるように私がクリアしていないのでリアリティに欠けてしまうと思い、そしてネタバレにもなってしまうので、やめておきました。今回の記事を読んで気になった方はエンディングを目指してクリアしてみてください。ラストの敵の鬼エンカウントが貴方の訪問を楽しみに待っております。

 今回の記事によって『銀河の三人』の素敵な魅力に気づいてくれるきっかけになれば幸いです。

 (市長queen)



orotima-ku1.png『銀河の三人』というタイトルを考えたひとは任天堂の誰なのだろう、、、
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コメント

やっぱりこういう記事は面白い!

ラストの展開には衝撃を受けたけど、子ども時代に見なかったのは幸運だったかもしれない…

復刻してほしいけど、エニックスはやらないだろうし、経営的にはそれが正しいだろうし。

>『銀河の三人』というタイトルを考えたひとは任天堂の誰なのだろう、、、

もし山内社長に言われたら逆らえない

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