◆ebay大量流出事件◆ オロチさん、NESエージングカセットって知ってますか。
そのような問い合わせが情報提供ボックスへ届いたのは今月初めのことだった。なんでも
突然ebayに大量出品され海外コレクター界隈がざわついているんだとか。さっそくebayを覗いてみるとこの有様である。

とうとう、来たか、、、
私はモニターの前で何とも言いがたい焦燥感を噛みしめるしかなかった。じつはこのNESエージングカセットなるもの。現在でもメルカリ等で3万円前後で売られているのだが、
これが初登場したときに少し不可解な経緯があったのだ。
◆不可解な登場◆ それは去年の10月のこと――
謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」がメルカリに初登場し、1時間も立たないうちに購入されるという出来事があった。これがそのときの画面である。

さきに言っておくと、この画面は
現在は消滅しているので検索してもまったく出てこないのだが、ここで注目してほしいのはその販売価格だ。送料込み3500円という数字が見えるだろう。現在、同じ出品者によって3万円近くで販売され、そこそこの本数が捌けている代物が
初出のときはたったの3500円だったのである!
リアルタイムでその一部始終を見ていたというNESコレクター
しぇぼる氏の証言によると、出品者は当初このカセットを3500円で複数出品しており、ほぼ全て同じ人物が買っていったとのこと。このときSNSを駆使して調査した結果、購入者は
どうやら日本在住の海外業者っぽいということがわかっていた。だから私はebayの一報を聞いたとき「とうとう、来たか」以外の感情にならなかったのだ。
一方、どうしても諦めきれなかったしぇぼる氏は別の出品物のコメント欄を通して出品者から「まだ在庫がある」ことを聞き出していた。そして去年の12月に再びNESエージングカセットが出品されるようになったというわけだ。そのとき値段が約8.5倍になっていたのは言うまでもない、、、
◆そもそもエージングカセットとは◆ そもそもエージングカセットとは、任天堂のROM製造工場で使用されていた
動作チェック専用ソフトのことである。現在はヨーロッパ版SNES用と
ファミコンディスク用と
ゲームボーイアドバンス用のものが確認されており、機種こそ違えどまったく前例がないわけでない存在だ。

たとえばこちらの掲示板に掲載されているエージングカセットはヨーロッパ版SNES用である。ヨーロッパのSNESは通称PAL版と呼ばれており、米国のSNESとは異なり日本のSFCと同じ形状であることで知られている。気になる内容はこの人物の手によってダンプされているようで、
こちらのページから詳しく知ることができる。

設定を確認するような画面と、デモ映像のようなものが流れる仕組みになっているらしい。彼によるとこのカセットはフランス、またはドイツのコレクターから入手したとのことでWeb上で彼が発信した情報以外の情報は見つけられないという。
一方、ディスクシステム版は以下のような内容である。
ディスクシステムにセットすると、自動で書き込みと読み出しを行い、それをしばらくループさせることでエージングを行う物の様だ。2種類あり、画面や音楽が異なります。トータルカウントの表示がありますが、表示を超えてヘンな記号になってます。両方共、聞いているとトリップしそうな曲が鳴り続けます。
こちらも
デモのようなものが流れるようだ、、、
◆日本語表記の謎◆ ここで皆さんが疑問に思ったことを当ててみよう。
上記のエージングカセット、ヨーロッパ版のはずなのに、
なぜ日本語表記なのかってところだろう。実はファミコンをはじめ、NES、SNESの本体及びカセットはすべてメイドインジャパン。日本の工場で作られていたのだ。日本の工場で使用される目的である以上、日本語表記なのは至極当然なのである。
一方、エージングという名称について着目したひとは鋭い。一般的に「Aging」といえば年を取ることを意味する。「Aging Test」ならば経年変化試験というような意味になるものの、それを略してエージングカセットという言葉にしてしまうと
「年を取るカセット」という意味になってしまい英語ネイティブの海外コレクターにとってはヘンテコな響きをもっているらしい。
現にかつて任天堂が使用していたとされるテストカセットはその名も「Test Cartridge」であり、画像検索するとわんさか出てくるのだ。

※SCREEN SHOT:グーグル画像検索の結果 これらの画像を見てあることに気づいたと思う。そう、
「Test Cartridge」とされるものはすべて英語表記なのだ。これはエージングカセットが日本の工場で使用されていたのに対して、「Test Cartridge」は現地の任天堂支社、あるいは販売会社が使用していたからではないかと推測される。
◆そして男が立ち上がった◆ さあ、お勉強の時間は終わりだ。
これ以上のことが知りたければ、実物を入手して検証するしかあるまい。そこで立ち上がったのは
3500円を逃した男「しぇぼる氏」であった。彼は初めて出会ったときからそのカセットのことが気になって気になって仕方なかったという。なぜ俺はあのとき購入ボタンを押さなかったのだろう。3500円チャレンジをしなかったのだろう。この度、そんな後悔の日々にピリオドを打つ決心がついたという。

もはや約8.5倍に膨れ上がった数字が彼を躊躇させることはなかった。男を突き動かしたのは
「真相を解明したい」という知的好奇心のみ。ただそれだけなのだから、、、
<謎のファミコンソフト「NESエージングカセット」の正体を暴け!!>
・序章編
・検証編
・完結編
・追記編
|  | 次回は検証編! |
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