◆地面がめりこむやつ◆ 遠いある日――
親父がワープロを買ってきた。
それはよくある一体型の専用機ではなくテレビにつなげるタイプの代物で、名前を
「RX-78 GUNDAM」といった。いわゆるホビーパソコンというやつである。しかも親父はワープロソフトの他にゲームソフトもいくつか買っていたようだ。あの
ゲームにまったく興味がないはずの親父がゲームソフトを買って来た理由はよくわからない。
もしかしたら当時、小学1、2年生くらいだった私のためにファミコンと間違えて買ってきたのかもしれないが。今となっては何も憶えていないのだ、、、
RX-78 GUNDAMは、1983年7月にバンダイから希望小売価格59,800円で発売された、家庭用ゲーム機のような性格を有するパソコン、いわゆるゲームパソコンである。ゲームソフト以外に学習ソフトやグラフィック・BASIC・ワープロソフトなどのビジネスソフトも発売された。シャープとの共同開発により誕生した[1]。バンダイの看板商品であるアニメロボット「RX-78ガンダム」の形式番号を名付けたほどの意欲的な製品だったが、売り上げは芳しくなかった。
正直、どんなゲームソフトがあったのかもほとんど憶えてない。
ひとつだけ強烈に印象に残っているのは戦闘機を操縦するゲームだ。それはバグなのか、
墜落する寸前で回避すると地面がめりこむという挙動があって、幼い私はただそれだけのことが楽しくて仕方がなかった。
※イメージ図 毎日毎日わけもわからず、この
「地面にめり込むやつ」を遊んでいたことが、唯一のRX-78体験の記憶である。
◆ガッチガチの原理主義者◆ それから数年後――
世はプレステ黄金時代。大学生になっていた私はとにかくお金がなかったので身の回りの物をヤフーオークションで売っては小銭を稼いでいた。私はその頃からすでにファミコンを集めていたのだが
ゴッリゴリのファミコン偏重主義者だったので、ファミコン蒐集の過程でたまたま手に入ったそれ以外のゲームグッズは容赦なく売りさばいていたのだ。そんなとき押し入れから出てきたのがこの「RX-78 GUNDAM」だった。懐かしいなどという感情は1㎜も湧いてこなかった。むしろラッキーとばかりに
即決1万2000円で出品したらすぐに海外コレクターに落札されて私は大喜びしたものだ。
その頃の私は鬼だったので、ファミコン以外のものどころか、Hucker製品などファミコンの非正規品ですら「不要」とばかりに売りさばいていたのである。ファミコン偏重主義者の中でも
ガッチガチの原理主義者だったわけだ、、、
※ファミコン本体パッケージ横の写真を再現したもの それからさらに数年が経ったある日――
私はファミコンのことをもっと深く理解するためにファミコン偏重主義者をやめた。それと同時に猛烈な後悔をした。いくら貧乏学生だったとはいえ、自分に
初めてのゲーム体験を与えてくれたRX-78をゴミくずみたいに手放すなんてあまりにも軽率だった。悔やんでも悔やみきれない。それからというもの、私はオークションで「RX-78 GUNDAM」が出品されていても直視できなくなっていた。いわゆる「トラウマ」ってやつである。
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僕がファミコン偏重主義者をやめた理由 なぜなら
RX-78に「どれくらいの市場価値が付いているのか」知るのが怖かったから。私は現実に己の愚かさを突き付けられるのが怖かったのだ。私にとってRX-78は、できれば一生思い出したくもない代物なのだ。しかしこんなブログをやっているとどうしても見かけてしまう。そんなとき反射的にブラウザを閉じたこともあった。
幸いなことに!?私はこの世代(再放送世代)では珍しくアニメのほうの「ガンダム」は見たことがなく、まったくハマらなかった人間なので、そっち方面からRX-78の名を聞くことはなかった。それだけが救いである。
◆運命的な出会い◆ さてここからが本題だ。
先日、とある場所に「ロックマンの棚」が売っているという情報をもらって行ってみたところ既に売り切れだったので、帰り道に某ハードオフへ寄ったときのことだ。ひとしきりレトロゲームコーナーのファミコンソフトをひっくり返したあと、満足げに店を出ようとしたそのときだ。私の目に飛び込んできたのはネオジオ本体の横にひっそりと置かれていたホビーパソコンだった。よく見ると「RX-78 GUNDAM」ではないか!
思わず目を背けたものの、視界に一瞬だけ入った
『連合艦隊』というソフトを見た瞬間、私の頭にビビビと電撃が走ったのだ。
!?
これだ!
改めてパッケージを凝視すると、ジョイスティックを操縦しながら
戦闘機を地面にめり込ませて遊んでいる幼い日の自分の姿が蘇っていく。背筋が震えた。なんという運命か。私が一も二もなくそれを買って帰ったのは言うまでもない。それはあまりにも突然だった。なんの前触れもなくトラウマを克服する日がやってきたのだ、、、

ジャジャーン。
ということでGetして来たRX-78である。
決して安くなかったがそんなことは関係ない。
よくぞこんな綺麗な状態で残っていたものだ。
さっそく開封である。
おおーっ
これこれ。

意外と小ぶりなボディ。
ストロークの浅いキーボード。
これこれ。
BS-BASICのオーバーレイが装着されているのは、前の持ち主が使ったままなのだろうか。背面にはダブルスロット。しかもRF出力しかないと思っていたらなんと
RCA(コンポジット)出力も備えていたとは嬉しい誤算だ。さすがホビーパソコン。ファミコンと同い年でありながらこの高性能!

連合艦隊のほうも開封。これこれ。
ソフトごとに専用のオーバーレイがあって、いちいちキーボードに貼り付けて遊ぶんだよね。たしかF1レースみたいなゲームも家にあったなあ。記憶が徐々に蘇ってきたぞ、、、
◆いざ、動作確認へ◆ さっそくテレビにつないでみようと電源アダプターを手に取った。するとことのほか重い。いったい何グラムあるのだろうか?

計ってみたところ731gもあったのだ。
おそらく私の持っている電源アダプターの中ではかなり重い部類に入るだろう。試しにそこらに転がっていた他のゲーム機の電源アダプターを計ってみたのだが、思った通り
RX-78のやつが一番重いという知見を得た。

なにげにDUO-Rの電源アダプターも重い(笑)
って、こんなことをやってる場合ではなかった。私は早くあの
「地面にめりこむやつ」をやりたいのだ。さあ早く私にめりこむやつをやらせろ。焦る気持ちを抑えつつRX-78をブラウン管テレビにつなぐ。本来、見せるような場所ではないが(ケーブルとか超ぐちゃぐちゃだし)、私のゲームプレイスペースをついでに公開しよう。

まるでゲームオタクの部屋みたいだ!(やかましいわ)
さっそく私は祈るように電源を入れた。あれ。
RX-78はウンともスンとも言わなかった。おかしいな。流れ出る脂汗。最悪の事態が頭をよぎる。ハードオフの店員さんはちゃんと動作確認したと言ってたのにどういうことだ。
こいつ、、、動かないぞ!
|  | 次回へつづく |
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「ガンダムがトラウマになった日、克服した日」(全3話)
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