価格推移データから見た「任天堂」を知る10冊(+α)


 Amazonの価格推移ツール「keepa」を活用したシリーズ第2弾。今回は私が独断と偏見で選りすぐった任天堂を知る10冊を紹介しましょう。それらの価格推移データはいったいどんな動きを見せているのでしょうか?

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※オロチファミコン部屋の本棚・ビジネス系書籍コーナー


<おことわり>
 Amazonの価格は市場価値をそのまま反映している数字ではありません。吊り上げ行為や、低価格詐欺なんかも横行しました。フィギュアスケートの採点方式のように、妙に高い値や低い値は除外して考えるくらいがちょうどいいのでしょう。逆に言えばAmazonの価格ほど、その界隈の情勢に対して敏感な動きを見せてくれる数字はないと考えます。その動きにはきっと何かの背景があるはず、、、
 この企画はそんなことを妄想しながら、生暖かい目でデータを眺めつつ、レトロゲームや関連グッズを紹介していくシリーズである!





◆1986年◆
任天堂商法の秘密

 まずは(まだ本格的なマスコミ嫌いになる前の)山内元社長のインタビュー記事が掲載されている数少ない資料のひとつ。1986年5月発行『任天堂商法の秘密』です。あのイトーヨーカ堂の創業者・伊藤雅俊氏も推薦する本書は、とりあえず山内イズムを学びたかったら必読の一冊ですね。任天堂原理主義者のバイブルといっても過言ではありません。(すいません、言い過ぎました)

 プレミア任天堂本の代表格みたいなイメージの強い本書ですが、推移データを見てみると2010年代初期は数百円だったことになっています。しかし2013年末に突然狂ったようなプレミアがついて以来3000~4000台をキープしたあと、2016年にふたたび上昇。それ以降はときどき1万円を超えるプレミアをつけながらじりじり上昇傾向にあることがわかります。現在は7000円台と、やけに高いですが、改めてデータを見てもらったらわかるとおり、本書は3か月~半年に一度ほど3000円を切るタイミングがあるので、興味があるひとはそこを狙ってみてはいかがでしょうか。



任天堂の秘密
任天堂の秘密
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上之郷 利昭
現代出版
売り上げランキング: 1,530,782
任天堂の秘密

 つづいてこちらは同じくファミコンブーム真っただ中の1986年に発行された『任天堂の秘密』です。筆者は西武鉄道グループ堤一族や、ソニーに関するビジネス本でベストセラーを続けている上之郷利昭氏。彼の表現を借りるならば本書は「たかがトランプメーカー・任天堂を、あのNEC、富士通が恐れる理由」といったところでしょうか。内容は、カルタ・トランプ時代からの始まった任天堂の歴史、ファミコン開発周りの話、任天堂の経営論が中心。社会現象となっているファミコンを玩具業界、教育、ネットワークなど様々な切り口で論じているところなんかは経済ライターならではの視点です。当時の経済界がいきなり台頭してきた京都のトランプ屋さんを驚きを持って迎えている様子が伺い知れるような一冊ですね。

 推移データを見るとずっと1000円前後だった本書が突然プレミア価格になったのは2016年のことだったことがわかります。それ以降は4000円前後で上下しています。いつの間にこんなにプレミアが付いたのでしょうか!?



◆1991年◆
スーパーや棒

 時代が少し飛んで1991年に発行された『スーパーファミコン 任天堂の陰謀』です。何を隠そう、私が人生で初めて買った任天堂本ですよ。高校生のときにブックオフでこの本を買って、任天堂のハードよりもソフト重視路線とか、極悪な(笑)ライセンス制度の仕組みを学びました。私の任天堂観のいしずえを築いた本といっても過言ではありません。スーパーファミコンをフィーチャーした数少ない書籍です。スーファミは1990年11月に出たばかりだったのでファミコン時代も多く載っていますが、一番印象に残っているのはスーパーファミコンが発売される前夜、日本中の玩具店、ゲーム店、量販店へ向けて一斉に数十万台が出荷されたという、流通業界では伝説になっている話ですね。(うろ覚え)

 データを見てみましょう。この本は私が1990年代に購入したときからずっと100円前後でした。Amazonでは1円です。ところが2016年に突然上昇。1000円を越えるプレミアがつきましたが、結局は現在たったの3円です。決して内容が悪いわけじゃないのに昔からやたら安い本です。まだ読んでないひとは是非チェックしてみてください。

 ちなみに著者の高橋健二氏は一番最初に紹介した『任天堂商法の秘密』の他に「「ドラクエ」「信長」ソフト産業の崩壊―神話の正体は!? (カッパ・ビジネス)」という光栄とエニックスにスポットを当てた本を出しています。



◆1993年◆
ゲーム・オーバー―任天堂帝国を築いた男たち
デヴィッド シェフ
角川書店
売り上げランキング: 586,134
ゲームオーバー

 アメリカ人著者による海外ノンフィクション物。任天堂のアメリカ法人である「Nintendo of America」を中心に語られる本書ですが、たとえば山内元社長のご自宅の様子など、他の書籍には載っていない任天堂マニアがうなるようなネタが豊富に登場します。ただし翻訳本特有の細かすぎる背景描写、登場人物たちの心理描写、セリフまわしなどが読むひとによっては冗長に感じるでしょう。
 推移データを見てみます。ずっと500円以下でしたが2017年あたりから上昇しているのがわかります。まるで激しく上下しているように見えますが最高で2000円。現在は1000円強。任天堂本の中では変化に乏しい部類に属する書籍のひとつです。

 ちなみに本書のような海外ノンフィクション系の任天堂本は他に、1995年発行『交渉術―任天堂、大リーグを買う』や2011年発行『ニンテンドー・イン・アメリカ: 世界を制した驚異の創造力』などが挙げられますが、いずれも価格推移については本書と似たような線を描いており、1000円以下で安定しているのは興味深いです。安価の割に読み応え十分なので、興味あるひとは是非チェックしてください。



◆1997年◆
横井軍平ゲーム館
横井軍平ゲーム館
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横井 軍平 牧野 武文
アスキー
売り上げランキング: 556,560
ゲーム館

 ラブテスターやマジックハンドの開発で知られる横井軍平氏の任天堂時代の実績を、彼自身の言葉とともに振り返った書籍。1997年5月発行の『横井軍平ゲーム館』です。横井氏が著者に名を連ねていますがどちらかというと同氏へのインンタビュー集のような体裁となっています。ちなみに彼自身はこの著書が発行された5か月後の1997年10月4日に不慮の事故で亡くなってしまいました。

 早い時期からプレミア本として知られ、私もずっと欲しかったのですが手が出ませんでした。推移データを見てもらえばそのムチャクチャぶりがわかると思います。5万円くらい平気でしましたからね。そんな状況を受けて共同著者・牧野氏は2010年に『横井軍平ゲーム館 RETURNS ─ゲームボーイを生んだ発想力』という復刻本を出版しました。この本にはブルボン小林氏による追悼文のような解説が追記されています。するとすぐには影響は出なかったのですが、2013年頃から徐々に現実的な値段になっていき、2015年に『横井軍平ゲーム館: 「世界の任天堂」を築いた発想力』が出版されたことで、本書のAmazon価格はさらに落ち着きを取り戻していきました。現在は2000円台で安定しています。



◆2000年◆
It’s The NINTENDO
It’s The NINTENDO
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武田 亨
ティーツー出版
売り上げランキング: 1,283,315
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 つづいてこちらは2000年に発行された『「It’s The NINTENDO』です。英語表記のタイトルですが武田亨という任天堂専門のライターのような人物の著書で、任天堂のキーパーソンのインタビュー集のような内容です。しかしながら「ゲームキューブ」が発売される1年前にもかかわらず「ニンテンドウ64の未来」という章があるなど、2000年に発行された本にしては内容がやや古い感じがします。それにはちゃんと理由があって、実はこの本が出る1年前に同じ著者が『任天堂の法則―Digital Entertainment 2001』という本を出版しており、本書はその改訂版みたいな形で出版されたものだからです。ちなみに武田亨氏は1995年にも『売られた喧嘩、買ってます。―任天堂勝利への青写真』という任天堂本を出版しています。

 推移データを見てみると2014、2015、2016年にかけて、まるでホップステップジャンプを描くようにプレミア化していることがわかります。この線の動きは憶えておいてください。あとで面白いものをお見せしましょう。



◆2006年◆
ゆりいか

 時代が少し飛んで、こちらは2006年に発行された批評雑誌『ユリイカ2006年6月号』です。ハードでいうとWiiが発売された年ですね。この号では任天堂をテーマにした166ページにも及ぶは大特集が組まれました。最近まで、本誌が本棚にあるかないかで、任天堂マニア度がわかると言われるくらい知る人ぞ知る一冊でした。内容は鴻上尚史氏と八谷和彦氏の対談、ブルボン小林氏と飯田和敏氏、米光一成氏の鼎談、みうらじゅん氏のコラムなど著名人たちによる任天堂語りが中心になっており、サブカル界隈、批評界隈、学術界隈の雰囲気をまとった数少ない任天堂本に仕上がっています。

 推移データを見てみましょう。長い間、2000円前後ぐらいのプチプレミアがついていました本書ですが、2018年に入って急激に上昇したあと、なぜか最近になって急降下。現在200円くらいで買えるので超絶オススメです。もう一冊買っちゃおうかしら、、、

2019/03/04 追記:すぐに売れました。現在3000円以上に戻っています。



◆2009年◆
任天堂 “驚き”を生む方程式
井上 理
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 49,858
方程式

 2009年に発行された本書はファミコンではなく、WiiやDSのヒットによって長いトンネルを抜けた出した当時の任天堂を取材したものです。トンネルを抜け出したどころか、ここから任天堂は破竹の勢いを見せ株価が一気に7万円台を突破するなど、狂ったように躍進を始めました。著者の井上理氏は任天堂愛あふれる日経ビジネス記者(当時)として知られていた人物だったのですが、任天堂は「マスコミとマニアが大嫌い」なので、そのふたつの要素を兼ね備えている彼の(漏れ出す愛を抑えながらの)取材は並大抵のものではなかったと推測されます(笑)

  内容は、当時社長だった岩田氏をはじめ、宮本茂氏、山内元社長、横井軍平氏、などキーパーソンを中心に語られる任天堂の経営哲学が中心となっております。特筆すべきはやはり2002年に社長に就任した故・岩田聡氏について、本書は初めて本格的に取材した書籍だということでしょうか。なお、岩田氏に関する書籍としては他に、2016年に電子書籍で発行された『ゲーム界のトップに立った天才プログラマー 岩田聡の原点: 高校同期生26人の証言』や2019年に発行された『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』が挙げられます。

 推移データをみるとものすごい上下しているように見えますが、ずっと400円以下です。本書に関してはプレミア気配はまったく見られないところが興味深い。ファミコン時代じゃないからでしょうか。



◆2012年◆
決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば (P-Vine Books)
横井軍平
スペースシャワーネットワーク
売り上げランキング: 77,893
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 つづいてはまたまた出ました横井本。2012年に発行された『決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば』はゲーム雑誌や業界誌など、彼が過去に様々な媒体で語った言葉を寄せ集めた発言集です。当時の雑誌などは今では手に入りませんし、ゲーム業界の一人の人物にスポットを当てた出版社の垣根を越えた発言集というのは今までありそうでなかったものなので、大変、貴重だと思います。中でも、かつて文藝春秋 1996年11月号に掲載された「わたしが任天堂を辞めた理由」が収録されていることは界隈からも注目されました。あのガードが固いことで知られる任天堂の内部事情を(多少ぼかしながらも)赤裸々に語っていたのですから、それはもうセンセーショナルでしたよ。ちなみに現在その原稿は文春オンラインで全文を読むことができます。まったくいい世の中になったもんです。かつて、この文藝春秋をどれだけ探し回ったことか。結局県立図書館までいってコピーを取ってきたのは今ではいい思い出です。また本書は、さきほど紹介した『横井軍平ゲーム館』(私がもってるのは復刻のほうですが)より字が大きくて読みやすいです。

 推移データを見てみると、本書はそれこそ『横井軍平ゲーム館』の二の舞になっているような気がしないでもありません。2016年に一瞬、爆発的なプレミア価格になり、その後、徐々に上昇、なんだかんだで現在1万円を超えています。

 横井軍平氏に関する書籍は他に、2010年に発行された「ゲームの父・横井軍平伝 任天堂のDNAを創造した男」や、その加筆修正版である「任天堂ノスタルジー 横井軍平とその時代 (角川新書)」が挙げられます。いずれも著者は先に紹介した『横井軍平ゲーム館』の牧野武文氏です。ただしこれらの書籍は著者が同じということもあってか『ゲーム館』と重複する箇所が多いことを指摘しておきましょう。あとはフランスの出版社が出している横井本もあります。なんとフランス語で書かれています!(当たり前か)



◆2013年◆
ファミコンとその時代
上村 雅之 細井 浩一 中村 彰憲
NTT出版 (2013-06-28)
売り上げランキング: 387,626
ファミコンとその時代

 最後は2013年に発行された『ファミコンとその時代』を紹介しましょう。この書籍はなんといってもファミコンの生みの親として知られる上村雅之氏の初著書ということで、世界中のファンがその内容に注目していました。ふたを開けてみると、期待された任天堂の赤裸々な内部事情や、開発者ならではの生々しい話などは皆無であり、同氏が任天堂を退社されて立命館大学の教授職に就かれていることもあってか、あくまでも客観的なビデオゲームの歴史、ファミコン開発の経緯、当時の時代背景などが、やたら注釈の多い論文調のお堅い文章でつづられており、肩透かしを食ったファンも多いようです。
 ただし、さきほども述べたように任天堂のガードの固さが異常なのはマニアの間では周知の事実であり、上村氏は現在も近いポジションで活動されているので、むしろそのへんのところはガッチガチに固めてくるだろうなということはある程度予想されていました。ファミコン開発周りの話については、かつて日経トレンディネットに無料掲載されていた「ファミコンはこうして生まれた」という記事が想起されます。この記事は貴重な写真が数多く掲載されていることが特徴的でした。現在は有料記事となっているので、興味があるひとは本書と読み比べてみるのもいいかもしれません。

 さて、推移データですが、元々2730円という割高の書籍であり、ときには3000円を超えることもありましたが、じわじわと現代にいたるまで下がっており、中古本なら1000円台で買えるところまで来ました。何ならいまだに新品で売ってるので、購入を考えているひとはなるべく新品で買いましょう!



◆プレミア傾向の関連性◆

 以上。1986年~2013年に出版された任天堂本10冊(+α)を見て来ました。何か気づいたことはありませんか?

 そうです。2016年頃に突然プレミア化している書籍がやたら多いんですよね。何か原因がありそうです。たとえば2016年といえば、長らく低迷していた任天堂の株価がポケモンGOの大躍進によって復調した年でしたね、、、

 こちらの表をご覧ください。

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※画像:主要ハード・ソフトから見た任天堂株価 2011-2017より

 これは私が制作した任天堂株価と代表的なゲーム作品や出来事をまとめた表です。これを見ると任天堂の株価の動きと、一部の任天堂本(It’s The NINTENDOとか)の価格推移が驚くほどそっくりなのがわかりました。任天堂関連のプレミア本を安く買いたいときは同社の株価が下がっているときが狙い目なのかもしれません。



<価格推移シリーズ>
価格推移から見る互換系「新作&再販ゲームソフト」の歴史
価格推移データから見た「任天堂」を知る10冊(+α)




orotima-ku1.png次回はどんなテーマにしようかな、、、

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[ 2019/08/03 22:27 ] 任天堂 | コメント(0)
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