◆真贋ポイントは拡散しちゃダメ◆

　先日、コレクター仲間I氏とレトロゲーム巡りをしていたら、我が地元が誇るゲーム屋チェーンO（通称：買うニャン）に、なんとあの『サマーカーニバル'92 烈火』が入荷してるじゃないですか。ファミコンソフトの中でも１、２を争うプレミアソフトですよ。正直言ってここ数年、ローカルチェーン店のリアル店舗の在庫は減る一方なんです。そろそろレトロゲーム巡りも限界かなあ、なんて話してたとこですよ。まさか地元にこんな大物が入荷するとはね。もはや事件だよ。事件。

　どれどれ、お値段は税込で10万ちょっとか、、、


　値段は黒塗りしてあります。っていうか今気づいたけどポップが思いっきりヴィレバンのパロディやん。そういえばヴィレバンも愛知の企業やね、、、


　店員さんの話では入荷したのはつい先日であり、社内のレトロゲームに詳しいバイヤーが数人がかりで鑑定した結果「本物」だと判断したのだそうです。同ソフトについては何度かやらかしてる有名店もありますからね、そりゃ、慎重になるってもんですよ。かくいう私の場合『烈火』の真贋については本物が手元にありますし、独自ルートで偽物のことをいろいろと調べており、常に情報をアップデートしてますからね。さっそく中身を確認させてもらいました。確かめるポイントはいくつかあります。でも詳しく書けないのが歯がゆいですね。たまにSNSで見かけるんですけども、真贋のポイントはたとえ見つけたり教えてもらったしても不用意に拡散してはいけません。現在、妙にクオリティの高い偽物が出回っている原因は、そのような善意の拡散のおかげで偽物業者の情報がアップデートされるからと言っても過言ではないのですから。したがって情報を共有するのは信頼できる仲間だけにしておきましょう。

　というわけで、ラベル、裏ラベル、端子、説明書、パッケージ、色んな所にポイントがあるとだけ言っておきましょう。そんな感じで見させてもらった結果、僭越ながら私も「本物」だと判断させてもらいました。惜しむらくは箱が少々ボロいことですが、カセットの状態はすこぶる綺麗で、説明書もはがきも緑のやつもついている。何より「本物」であることが確実という点は大きいじゃないですか。オークションでは偽物が多くリスクが高い。通販Sは写真が1枚しかなくてガチャ的要素が多い。そう考えると高額品は少々割高でも「安心を買う」という意味でリアル店舗のほうがいいというコレクターは多いのです。万が一の時、返品もスムーズにできるし、あと地産地消っていうじゃない。どうせ金落とすなら地元だよね。なんて店員の女の子が感じ良かったのでついつい長話しつつ、「たぶんこれすぐ売れますよ」と言い残して我々は店を後にしました。(←こういう謎の予言するやついるよね)




◆勇者、現る！◆

　それからコレクター仲間S氏と合流した我々はスシローで寿司を食いながら『烈火』の話すると、なんと彼は「どうしようかな」と迷い始めたのです。「オタクは他人が金を使いまくるところを見るのが好きなので、オタク同士で買い物に行くとお互いがつい何かしらを買わせようと必死になる」って最近、話題になってましたね。（※）

　この心理を私なりに分析するならば、結局、我々は誰かに背中を押してもらいたいわけですよ。コレクター道というのは一定のところまで行くと「バカバカしさとの戦い」になるというのが私の持論です。普通に考えたらファミコンソフトに10万円払うなんてバカバカしいじゃないですか。ふと自分の信じた道に臆するときだってある。そんなときは誰かに「その道で合ってるよ」って背中を押してもらいたいのですよ。きっと自分の中で買うことは決まっていて、きっかけだけ誰か任せにしたいパターン（笑）

　そういうの知ってるからこそ、我々は「買っちゃいなよ」って気軽に言うのです。べつに「他人が金を使いまくるところを見るのが好き」なわけではないのですよ。ということで引き返しましたよ。同じ店へ。そもそもS氏はファミコンカセットのコンプリートを目指しているコレクターなので、『烈火』はいつか通る道。これから先、さらに高騰化するかもしれないし、そもそも地元のゲーム屋で出会うことなんて奇跡でしょ。これはもう運命だよ。とか何とか言いながら上客を連れてきましたよ！


　※レジで迷っているS氏（イメージ図）

　お店でもさんざん迷っていましたけど、周りから煽られ、自分を奮い立たせるように買う決断をしたS氏。よかったよかった、、、

　さあレジだ。しかしそのとき、さっきまであんなに感じの良かった女の子の店員さんが、S氏が口を滑らせた「箱がちょっと劣化してるなあ。烈火だけに。」という『烈火』を買うとき絶対に言っちゃいけないギャグにも愛想笑いしてくれたあの店員さんがレジを見ながら表情を曇らせたのです。

　いったい何が起こったのでしょうかッッ！？




◆まさかの二重価格方式？◆

　どうやら値札とレジを通して出てきた値段が違ったようで、店員さんが「確認してきます」と言って奥へ行ってしまいました。一気に不安がよぎる3人、、、

　実はレトロゲームショップの中にはレジへ持って行ったあと値段が吊り上がるという二重価格行為をおこなっている店も少なからずあるんですよ。全国的に有名なのが三重のAですよね（※）、この店はレジへもっていって買う意思を示すと初めて値段を調べられ、だいたい値札より3割～5割くらい高い値段を提示してきます。信じられないことに（うっかり吊り上げるのを忘れたのでしょうか）会計が終わったあと、店の外まで追いかけてきて追加金を取られたなんてケースもあったそうですよ、、、怖いですねえ、、、あと売ってくれない店として有名な安城のGにも、私は同じ方式をされたことがありましたね。（※）

　それはレトロゲーム界隈では珍しくない展開だったのです。我々にとってあまりにもディジャヴでした。頼む、地元チェーンOに限ってそんなことはやめてくれ。私個人でいえばO（F）とは20年以上の付き合いで、ファミコン収集時代からさんざんお世話になって来た。レトロゲームはもちろん、SWITCHなど現行ゲームも必ずOで買ってるよ。だから、どうか二重価格行為なんてバカなことだけはやめてほしい。他の2人、I氏もS氏もそれぞれこの方式に心を痛めてきたコレクターたちだ。I氏は三重在住であり、まだ正常だったころのAを知っているだけに失望が大きかったらしいし、S氏もまだ正常だったころのGにはよく通っていたという。なぜひとは変わってしまうのだろう、、、

　だからお願いだ。
　どうか、値段が吊り上がるという展開だけはやめてくれ～～～！！！





　――何分経ったでしょうか。
　やっと、店員さんが戻ってきて驚くべきことを言いました。

　「すみません、、、このソフト、本当は14万円でした、、、」

　


◆結末◆

　ある意味「やっぱりか」という展開にガッカリしすぎて言葉も出ない3人。空気が一気に重たくなります。しかし店員さんの言葉はまだ続いていたのです。

「でも箱の状態が悪いし、、、
　上の者がこの値段で出そうと決めていたそうです
　すみません、なので値札が合ってました（テヘッ）」

「えっ！？」

　一気に安堵する3人。ありがとうございます。本当にありがとうございます。思わず涙ぐむS氏。さすが我が地元が誇るゲーム屋さん。値札のまま売ってくれるなんて天使みたいな店やで！（←完全に麻痺してる）

　……

　……

　……


　※オロチ所有の『烈火』はまだ偽物が出回ってない当時に買ったものなので間違いなく本物


　こうしてS氏は見事に念願だった『烈火』を手に入れたのでした。さっそくオロチ邸に戻って私のと見比べて、徹底的に真贋チェックした結果、S氏の『烈火』は間違いなく本物でした。おめでとうS氏！ありがとう買うニャン！

　関連記事：レトロゲームコレクターを悩ませる「コンプリートの壁」の正体

コンプリートの壁をひとつ越えたな！

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