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NES(海外ファミコン)がビデオデッキ型になった理由

 海外で発売されたファミコン「NES」はビデオデッキのような形をしています。このデザインは古今東西のカートリッジ交換式ゲームハード全体を見渡しても大変珍しい部類に入るでしょう。改めて考えると不思議ですよね。なぜNESはビデオデッキ型をしているのでしょう。先日、英国はシェフィールドに鎮座する「National Videogame Museum」にて、ファミコン開発者の上村雅之氏が講演を行うことを、弊サイトはお伝えしていました()。

 その講演の中で同氏が興味深い真実を語っています。

NES0123456.jpg

 そもそもNESでゲームをする場合、まず前面のフタを上に開け、内部のスロット部へカートリッジを挿入し、スロットごと下方へ押し込めて手を抜き、フタを閉めてから電源ボタンを押す必要がありました。当初こそ、このトースターのようなギミックは子どたちに受け入れられましたが、時が流れ、いつしかNESがヴィンテージコンソールと呼ばれる時代になるにつれ、疑問の声があがるようになりました。すなわち「なぜビデオデッキ型にしたのか」という原点懐疑論です。何を隠そう私もこの一連の動きに儀式的な意味以上の美点を見いだせない人間の一人でした。それどころかNES本体はその構造上、カートリッジずらしが不可能なので電源をつけるときの微調整ができないのです。これはハードにとって地味にマイナスポイントでしょう。いくら愛のこもった息を吹きかけようとも(カセットフーフー)、電源がうまく入る確率はカートリッジの端子部と、ハード側のスロット部が、どれだけうまく噛み合ってるかで、ほぼ全てが決定されてしまうのですから。何よりこの事実は「ファミコンの電源をつけるのが上手いやつ」がクラスの男子から一目置かれるという文化が世界共通でなかったことを意味しました。もし私がアメリカに生まれていたなら、きっと自分の存在意義を見失っていたに違いありません。

 それに、このトースターのようなギミックは物理的なバネを使用しているため、製造から30年以上経った現在、スロット周りの故障の主な原因になっているという現実的な問題を抱えています。日本の赤白ファミコン本体のイジェクトレバーも故障しやすい部品ですが、あれはお飾りなのに対して、NESの場合は接続と直結するギミックのため死活問題なのです。したがってNESマニアが唱える原点懐疑論は恨み節にも近い響きを奏でていました。しかしながらあの悪名高きVideo game crash of 1983を思い出してください。当時の北米ビデオゲーム市場は一種のアレルギーに苛まれていました。もうゲーム機はうんざりだ。これからはパソコンの時代だ。そんな声が飛び交う荒野へと進出しなければならなかった上村はNESについて「ビデオゲーム(玩具)に見えないデザインを採用した」と様々なインタビューで述べています。Nintendo Entertainment Systemt(NES)という名前からして玩具を想起させませんよね。それはあくまでもマーケティング由来の戦略であり、生き残る術だったのです。NESマニアたちはその弁明に奥歯を噛みしめるしかありませんでした。「そんなことしなくても売れてたろう」は結果論に過ぎません。

 そう考えると2020年2月26日は、全てのNESマニアのわだかまりが氷解した日になったでしょうか。上村はこの日の講演で、NESにビデオデッキ型を採用した経緯について以下のように説明したのです。

For the Famicom version, the Japanese version, the top is where you stick the cartridge. So this will directly connect the chip inside of the cartridge to the chip inside of the hardware. Where the static happens, in this type of device, it will short circuit. Bang! It will break. Japan has a high humidity, so there’s not much static. However, if you go to America, particularly a place like Texas, it is very dry, so it has a lot of static. So we wanted to make sure that the kids did not touch the connecting ports.


 なんと、これが真実か!

 解説しましょう。ファミコン本体はカートリッジを直接、内部ハードウェアへ接続する方式でしたが、湿度の高い日本と異なり北米の空気は乾燥しているため、子どもたちが誤ってスロット部へ触れると静電気が発生しショートする可能性が高いと判断した上村は、そのような事故を防ぐためスロット部分へ触れることのできないビデオデッキ型をNESに採用したのことです。この真実に多くのNESマニアたちが心根をくすぐられました。なぜなら、今までさんざん「ビジネス上の判断」というツンな回答だったくせに、突然「君を守りたかった」というデレな真実を語られたのです。おいおい、ただのツンデレじゃねえか。もちろん彼が守りたかったのは人間と機械、両方だったと思いますが、この問題がのちに改良されたことは「NES2」が日本のファミコンと同じ、上からガッチャン方式だったことからも窺い知ることができます。後継機であるSNESも64も同様に上からガッチャン方式が採用されました。

 果たして、静電気への懸念は心配性な開発者の杞憂だったのでしょうか。この知られざる真実に皆さんは何を思いますか?



orotima-ku1.pngちなみにNESカートリッジが大きい理由はビデオデッキ型にしたとき、出し入れしやすいようにとのこと。誰だ。「アメリカ人は手がでかいからカセットもでかい」とか言ってたやつは!

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