◆すばらしきパーティジョイ◆ インターネット集合知といえども決して万能ではありません。たとえば
Wikipediaに「パーティジョイ」の項目が存在しない事実について、我々を納得させる明確な理由はあるでしょうか?
(※正確にいうと「項目」はあるが中身がない。誰か書いてください→Link) パーティジョイといえば、ファミコン世代ならば男女関係なく誰でも遊んだことがある超有名なボードゲームシリーズですよ。どこの家にも2、3個は転がっていましたよね。でもよく考えてみると我々はパーティジョイのことをあまり知りません。誰がつくったのか。どれだけ種類があるのか。コレクターがいるという噂すら聞きません。これは奇妙なことです。パーティジョイは誰もが知っているのに誰も知らないのですから!


この本は、そんな我々を悲しき輪廻から解放してくれるかもしれません。2019年12月2日、スモール出版発行「
すばらしきパーティジョイの世界
」です。全135タイトルを網羅。究極のパーティジョイ本。日本ボードゲーム史に残る巨大な足跡。帯に踊るフレーズに心が躍りますね。さっそくパーティジョイのすばらしい世界を覗いてみることにしましょう。
◆発売日がない謎◆ まずは
こちらの動画をご覧ください。
「ボードゲームはバンダイ♪」のジングルが懐かしい。
当時「人生ゲーム」で大当たりしていたタカラに対抗すべく、1980年にバンダイが世に送り出したのが「
おばけ屋敷ゲーム」でした。棒をさすと「ぎゃあぁぁぁ~!」とは「フハッハッハッハ!」とか「キシーン」とかランダムで鳴るやつです。バンダイはその勢いのまま「もっとお手軽に子どもたちへボードゲームを提供しよう」と考えました。そこでひねり出したのが1個1000円という低価格を実現したパーティジョイシリーズだったのです。その第1弾は「悪霊島の冒険」で、それを含む1~4作目まで同時発売されました。
出典:youtube 書籍「すばらしきパーティジョイの世界」によると、その記念すべき第1弾は「1983年発売」とあるだけで、不思議なことに
発売日の記載はありませんでした。それどころかこの書籍には「全タイトルリスト」が巻末に掲載されているのですが、すべての掲載作品について発売日の記載がないのは正直残念です。バンダイ公式サイトの商品検索にもパーティジョイ自体が出て来ませんでした。ただし冒頭で紹介したYoutubeのCM動画が1983年6月18日放送とあったので、少なくとも第1弾(4作品)はその時点で発売されていた可能性が高いでしょう。ファミコンの発売日が1983年7月15日ですからパーティジョイのほうが少し先輩なんですね。
総数については全135種類とのことですが、その内訳に、カセットタイプシリーズ、ダブルシリーズ、指南役シリーズなど様々な派生シリーズが含まれていないので
実際は135種類以上あるということになります。改めて帯を見てみると「パーティジョイレギュラー版全135タイトルを網羅」と書いてありました。この「レギュラー版」という言葉がクセモノだったのです。
◆ファミコンとの関係性◆ パーティジョイを語る上で「ファミコン」は外せないキーワードでしょう。パーティジョイとファミコンは同じ年に生まれ、ほぼ同じ期間を子どもたちのために現役であり続けたのですから。パーティジョイとファミコンの関係性については同著掲載の開発者たちの座談会にも以下のように言及されています。
(パーティジョイは)おこづかいでファミコンを買えない子どもたちにウケたの出典:「すばらしきパーティジョイの世界」119Pより
たしかに、ファミコンカセットが5000円だった時代にパーティジョイの1000円という価格はとんでもなく魅力的ですね。
また、バンダイというメーカーに注目すると、ご存知の通りファミコン界における同社はキャラゲー製造メーカーとして有名でした。当然、パーティジョイのラインナップもキン肉マン、SDガンダム、オバケのQ太郎、プロゴルファー猿、風雲たけし城、聖闘士星矢、仮面ライダー倶楽部、ウルトラマン倶楽部、アンパンマン、悪魔くん、ドラゴンボールなど、
ファミコンのタイトルとかぶるラインナップが多く見られるのです。



この事実からもパーティジョイとファミコンの濃密な関係性をすくいとることができます。これは余談ですが、巻末のリストを眺めていたら面白いことに気づきました。なぜか藤子作品のなかで「ドラえもん」だけはパーティジョイ化されてないのです。そういえばファミコンでも「ドラえもん」はハドソンとエポック社から出てました。もしかしたらバンダイはドラえもんの商品化の権利については弱い立場なのかもしれませんね。
そして1986年になると、パーティジョイのラインナップはファミコンとかぶるどころか、『スーパーマリオ』をはじめとするファミコンソフトそのものを題材とした作品を多くリリースするようになっていきます。次の段からはそのようなファミコン系パーティジョイ作品を順番に見ていきましょう。
◆ファミコン系ラインナップ◆ まずはレギュラー版。

ファミコン系パーティジョイの歴史はNo.51の「スーパーマリオブラザーズゲーム」から始まったようですね。この、ファミコンとほぼ同じパッケージデザインはたまにオークションで引っかかってきて「あれ?」となることがあります。バンダイはパーティジョイシリーズの他に通常サイズのボードゲームとして「スーパーマリオブラザーズDX」なるものも出していました。
つづいてNo.56はツインビーです。

ツインビーといえば元々アーケードであり、当時、喫茶店でカップルに人気だったというコミカル系シューティングゲームですね。そのわりには実はけっこう難易度が高かったりします。
こちらの記事によると本作は戦略系であり、単純にサイコロをふって決められたルートを進むのではなく方眼状マップを移動して、アイテムを取ったり、敵を倒したりする内容だったようです。空中と地上の概念があったり、ベルによって自分のステータスを変化させて、最終的に取ったアイテムや倒した敵の数の合計ポイントが高いプレイヤーが勝利しました。
続いてはこちら。

No.58は「ゲゲゲの鬼太郎」でした。前述の通り「すばらしきパーティジョイの世界」は発売日の記載がありませんので推測にはなりますが、バンダイは1986年4月17日に同名のファミコンソフトをリリースしており、おそらくこれも同時期に発売されたものと思われます。注目すべきは箱の
「TVゲーム鬼太郎の裏技、隠れキャラ、攻略情報付」という煽り文句で、パーティジョイの売りは「ファミコンと同じゲームがわずか1000円で楽しめる」というところにあったのですが、バンダイは、さらに付加価値として裏技や攻略情報といった要素も盛り込んでいくことになります。
パーティジョイのデザイナー野村紹夫さんはかつてインタビュー記事にて「ファミコンソフトを題材にしたボードゲーム作りは窮屈だった」と述べていました(
※)。ゲームの移植が大変だったという話はときどき聞こえてきますが、ボードゲームへ移植というのは、文字通り次元の違う大変さがあったのでしょう。一方で、月刊サイゾーのインタビュー記事には以下のような一節もあります。
当時、急激に勢いを増しつつあったファミコンを題材にしたゲームも多数制作されたそうだが、その中でも特に自信作なのが、同名のファミコンゲームを題材とした「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境」。妖怪が左右から襲ってくるというスピーディな横スクロールアクションゲームをボードゲーム化する際、野村氏はほかのプレイヤーが振った目で妖怪も動く、というアイデアを盛り込んだ冒険ゲームに仕上げた。その結果、自分以外のプレイヤーの番でも目を離すことができないという、原作のゲームとはひと味違う非常にスリリングな展開が可能となった。
大変ながらも並々ならぬこだわりはあったようです。

No.60は『グラディウス』です。なんとあの名作STGもボードゲームになっていました。
こちらの記事によると本作も「ツインビー」同様、戦略系の内容だったようです。本作はなかなかレアで市場でもあまり見たことがありません。
つづいてこちら。

No.61は「ゼルダの伝説」でした。
こちらの記事によるとプレイヤー同士の駆け引きや選択によって展開が大きく変わるといった要素はほぼないとのこと。ただしゲームの雰囲気はよく再現されており、元ゲームをやり込んだゼルダファンならば楽しめるようです。
つづいてこちら。

No.62は『マイティボンジャック』です。言わずと知れたテクモの名作ですね。ファミコン版『マイティボンジャック』は1986年4月24日発売です。内容はファミコン版を4人まで遊べるルールにアレンジしたもの。マイティコインを使うとジャックが立体コマに変身しました。
続いてはこちら。

No.63は「謎の村雨城」でした。
こちらの記事によると、本作はファミコン版に出てきた4つの城が舞台であり、各プレイヤーが直接対決するスタイルで進めて行く内容らしいです。

しかしアニメ調だったファミコン版パッケージと違って、パーティジョイ版は妙に劇画タッチなのが興味深いですね。さあ、次はお待ちかねのアレです。

NO.64は『戦場の狼』でした。何を隠そう私オロチが持っていたパーティジョイのひとつなんですよ。忘れもしないあれは私が小学生のときでした。市民祭りで輪投げで当たったんですよね。それはもうとてつもなく嬉しかったですよ。その場で開けてみんなで遊びました。もちろん今でも大切にもってます。敵を倒しながら戦場を駆け抜ける雰囲気はゲームさながら。マシンガンにパワーアップする特殊なルーレットが印象的でしたね。
お次はこちら。

番号がずいぶん飛んでNo.82には「ウルティマ」がラインナップされていました。これは正直、はじめて存在を知りましたね。ファミコン版は1987年10月9日の発売ですから、本作も同時期にリリースされたことでしょう。プレイヤーはエクソダスの復活を阻止するのが目的で、ダンジョンやムーンゲートに関する情報を集めながら、最終城への道のりを冒険するという王道RPGを体験することができたそうです。
次はこちら。

No.104は「ドラゴンボール 大魔王復活」です。同名のファミコンソフトは1988年8月12日発売。バンダイのドラゴンボールを題材にしたファミコン作品では2作目にあたり、前作『ドラゴンボール 神龍の謎』が激難度の奇怪なアクションゲームだったのに対して、こちらは独自のカードシステムを採用したボードゲーム風RPGでした。昨年、これがいかに画期的なことだったかと語る
こちらの記事が反響を呼んでましたね。以下引用。
でも、そこで「じゃあボードゲームにしよう」というのは、なかなか出ない発想だと思うんですよ。だって、当時まだ「桃鉄」出てませんよ? 前年の1987年に「鉄道王」が出ているとはいえ、ボードゲームというフォーマットは、まだまだファミコンでは「実験ジャンル」の部類だったはずなんです。それを「ドラゴンボールの2作目」というビッグタイトルで採用することが、冒険でなかったはずはないんです。
私はこの記事の中に「パーティジョイ」という言葉を探しましたが、ありませんでした。ボードゲームはバンダイ♪というジングルが存在するほど、バンダイはボードゲームに自信があったはずです。ちなみにファミコン版『DB大魔王復活』がボードゲームになった理由については、開発者側からも「トランプ遊びから思いついた
(※)」、「容量が無くて仕方なくスゴロク形式にした
(※)」などの証言が残っており、いずれもパーティジョイのことに関しては一切触れられてないんですよね。もちろんバンダイ内のボードゲームを担当する部署と、ビデオゲームを担当する部署(製作は下請け)がそもそも違うという事情があるにせよ、ファミコン版DBシリーズのボードゲーム化について、パーティジョイの影響が一切ないとはどうしても思えません。

NO.109は「スーパーマリオブラザーズ3」です。ファミコン版は1988年10月23日に発売されています。バンダイのマリオシリーズボードゲームといえばその前に「スーパーマリオブラザーズ2」が発売されているはずなんですね。これは所持しているのですが、立体コースを組むのが大変で一度しか開封してません。本作「3」はマリオチーム、ルイージチームに分かれてクッパ討伐を目指すという内容でした。
次はレギュラーシリーズとしては最後の作品となります。

No.128は「スーパーマリオワールド」でした。パーティジョイというといかにも昭和のイメージだったのですが、意外にも平成初期に出たスーファミのソフトもパーティジョイになっていたのですね。恐竜ランドが舞台で、敵のマスに止まるとサイコロ対決となり、敵を倒すと得点がもらえました。最終的に得点が高いプレイヤーが勝利となります。SFC版の発売が1990年11月21日ですから、同時期に発売されたものだと思われます。
◆指南役シリーズ◆ さて、ファミコン系パーティジョイのラインナップはこれだけでは終わりません。実はパーティジョイには多くの派生シリーズが存在するのですが、その中でも、よりファミコンの攻略に重点を置いた
「指南役シリーズ」というものが存在しました。書籍「すばらしきパーティジョイの世界」では派生シリーズは総数に含まれておらず、掲載されていないものもあるのですが、巻末のリストに名前だけは掲載されている点はありがたいです。さっそく見て行きましょう。
指南役シリーズ第1弾は「ドラゴンボールZII」です。

ファミコンカセットを彷彿とさせるパッケージデザインがグッと来ますね。指南役シリーズはずっとこの調子で、あくまでもファミコンの攻略情報が満載されていることが売りのシリーズでした。ファミコン版の発売日は1991年8月10日です。

シリーズ第2弾は「ナイトガンダム物語2」です。ファミコン版の発売日は1991年10月12日です。ドラクエに続けと何でもかんでもRPGになっていた時期でしたね。私がガンダムに疎いからか知りませんが、正直、内容はきつかったです。現在のレトロゲームショップでよくみるファミコンランキングがあったらおそらくトップ10に入るタイトルだと思います。バンダイだとこのナイトガンダムシリーズと『タルるートくん』はやたら見かけますね。
次はこちら。

シリーズ第3弾は「スーパーマリオワールド」でした。こちらはさきほどのレギュラー版と似たような内容だったらしいです。
こちらの記事によると、いきなり最終ステージのクッパ城が舞台となっており、ボードや説明書のそこかしこに攻略情報が掲載されていたそうです。

シリーズ第4弾は「マリオオープンゴルフ」でした。個人的には一番気になる作品ですね。
こちらの記事によるとファミコン版からピックアップされた9ホールが舞台であり、ボードゲームとはいえ本格的なゴルフが楽しめるらしいです。

シリーズ第5弾は「ロックマン4」です。バンダイの担当者さんの選定基準がよくわからないのですけど、ここに来て初のカプコン作品ですね。ファミコン版は1991年12月6日発売です。本作に関しては内容はわかりませんでした。

シリーズ第6弾は「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」です。スーファミ版からの移植はスーパーマリオワールドに続いて2例目。パーティジョイシリーズとしては3作品目ですね。この作品は希少なのか、まんだらけの買取金額がえらいことになっていました。(
※)

シリーズ第7弾は「ナイトガンダム物語3」です。
このパッケージを見て違和感をもったという読者の皆さんは流石ですね。私もこのパッケージを見たとき一瞬で「あれ!?」となりましたよ。今まで見て来たとおり、この指南役シリーズのパッケージデザインは本物のROMカートリッジを模してデザインされていました。したがって当然、本作のパッケージもファミコン版『ナイトガンダム物語3』と同じく、黒ベースじゃないとおかいいですよね?
こちらを見てください。
ほら、黒やん!
なぜ最後の最後にブレてしまったんでしょうか(笑)
◆Wシリーズ◆ ファミコンではありませんが、パーティジョイにはW(ダブル)シリーズという派生シリーズも存在します。その第3弾はゲームボーイ版『スーパーマリオランド』をモチーフにしたものでした。

このWシリーズの最大の特徴は定価が2000円と少し高くなっている分、内容がボリュームアップしているところでしょう。内容はゲームボーイ版に準拠したオーソドックスなもので、立体のキャラクターコマが付いていたらしいです。
◆まとめ◆ ということで、すべてのファミコンに関係すると思われるパーティジョイを見て来ました。その数は全部で20種類。うち3本がスーパーファミコン系、1本がゲームボーイ系だったので
ファミコン系パーティジョイは全部で16種類ということになりました。なお聖闘士星矢、仮面ライダー倶楽部、ウルトラマン倶楽部、ドラゴンボールZ、風雲たけし城など、バンダイのファミコン作品とネタがかぶる系もすべて調べましたが、ファミコン系とは言い難い内容でしたので除外しています。またNo.85の「おもいっきり探偵団 覇悪怒組 魔天郎からの挑戦状ゲーム」に関しては、1988年3月25日に発売されたファミコンディスク版「おもいっきり探偵団 覇悪怒組 魔天郎の挑戦状」とほぼ同じタイトルでしたが、よく見たらタイトルがビミョウに違う点、パッケージのデザインが違う点などを考慮して、ファミコン版とは無関係と判断し除外しています。

ちなみに書籍「すばらしきパーティジョイの世界」にも「僕たちファミコン世代の章」でファミコン系が紹介されてはいるのですが、そもそも名前しか掲載されてないものが含まれる指南役シリーズは除外されており、それ以外にも「マリオ3」と「ドラゴンボール大魔王復活」がその章には載ってないなど(それぞれマリオシリーズ、ドラゴンボールシリーズとしては載っている)、完全は目指していないようだったので、今回の記事がその補完になれば幸いです。
◆当時のCM◆ さいごに当時のCMをご覧ください。
|  | ボードゲームはバンダイ♪ |
|
<参考文献>
・すばらしきパーティジョイの世界
<参考記事>
・懐かしい当時の遊び - サミーハウスblog出張所
・パーティジョイ ゼルダの伝説 | みんな仲良く絆を育む! 魔法のゲーム制作記
・謎の村雨城ゲーム|ボードゲーム情報
・「ドラゴンボール 大魔王復活」はなぜ『ドラゴンボール』のゲーム化として最高だったのか - ねとらぼ
・マリオグッズ>アナログマリオゲーム - ALL SUPER MARIO
・まんだらけ TOY 買取情報 | バンダイ『パーティジョイ』シリーズ 強化買取表
・パーティジョイオフ | ☆スターヒルでお茶はいかが☆
・ピコピコカルチャージャパン - タナカマコトの「手番ですよ。」第7回「懐かしの『パーティジョイ』のデザイナーに聞く!」
・単なるすごろくを超えた、プレイヤー同士の白熱バトル「パーティジョイ」今昔物語|日刊サイゾー
<※注釈>
・集英社発行「ドラゴンボールZ外伝 サイヤ人絶滅計画」146P
・集英社発行「30th Anniversary ドラゴンボール超史集」182P
- 関連記事
-