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ゲームの「巻き戻し機能」は内なる原理主義者を呼び覚まします

 先日、任天堂スイッチオンラインのファミコン/スーパーファミコンの巻き戻し機能について「ゲームの寿命を縮めてる」というtweetを見かけました(リンク不可)。私はこの指摘にドキっとしてしまったんですよね、、、

 なぜならこの問題、個人的には「うるさいって声が一番うるさい現象」の変奏として捉えていたためです。昨年9月にスイッチオンラインスーパーファミコンのこの機能が話題になったとき、ネットメディアはこぞって賛否両論と報道してましたが()、実際はほとんど賛だったのですよ。2ちゃん系まとめサイトなどネット深淵部まで潜ると、やっとあからさまな否が観測できる程度で、浅い所はだいたい賛で埋まってました。でも、それはいつもの光景なんです。ただ少し聴こえてくる音色が違うなと思ったのは、今回の問題については多くの皆さんが仮想敵を外部ではなく自分自身のなかに想定しているように見えたからなんですよね。

 どういうことかというと試しにtwitterで「巻き戻し 卑怯」「巻き戻し 邪道」と検索してみるとわかります。およそ7割以上のユーザーが「卑怯」や「邪道」という言葉を自分自身に向けて使用しているんですよ。まるで自分自身のなかの原理主義者をなだめすかすように。自分自身のなかの原理主義者の顔色をうかがうように。wを交えながら「巻き戻し機能が卑怯すぎて楽しい」だの「邪道だけど便利」だの呟いておられるのです。私はSNSでよく見られる自分の意見を主張するために居もしない敵をでっちあげる行為のことを「うるさいって声が一番うるさい現象」と呼んでいるのですが、通常の場合、外部に仮想敵を想定するのがセオリーであるにもかかわらず、今回のケースでは多くの皆さんが自分自身のなかの敵と戦っておられたのであります。

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※SNS上の「巻き戻し機能」に対する反応図(オロチ調べ)

 私はこのデリケートな状況を、息を呑んで眺めていたのでした。そこへ冒頭のような切れ味鋭いご指摘が流れて来たもんだから、思わずドキッとしてしまったわけなのです。だったらお前はどうなんだとツッコミが飛んできそうなので、先に申し上げておきますと、私はバリバリの原理主義者です。考えてみてください。こんなサイトを20年以上やってるやつが原理主義者じゃないわけがないじゃないですか(笑)

 ただ、正直なところ、うちの息子(小学生)も当然のようにスイッチオンラインのファミコンで巻き戻し機能を使いこなしておりましたよ。私はスイッチオンラインにそのような機能があることを息子のプレイで初めて知ったクチですけども、ぶっちゃけた話、そのとき「羨ましいな」と思う自分もいたんですよね、、、歴史を紐解くと、元々「いかに客を楽しませつつ金を巻き上げるか」というアーケード世界で生まれたビデオゲームにとって、巻き戻し機能が言語道断なのはわかるんですが、買い切りのコンシューマソフトになったファミコン時代からは、そもそも、そのような目的は必要なくなったはず。それなのに長い間、ゲームはそのような価値観の転換をしてこなかった。それは多くの開発者が「巻き戻し」をゲームの大切な部分が台無しになる機能と考えたからであり、ユーザーもそう思っていたからだと思われます。しかしながら、もし、我々の時代に巻き戻し機能があったなら、、、そう考えたとき小学生の私は何のためらいもなく使っていたでしょう。息子の喜々としたプレイを見ていて、私はそう思わざるを得なかったんですよ。そうでなければファミコン時代「無敵モード」や「面セレクトモード」といったデバックコマンドが「裏技」という名目のもとで爆発的に広まった事実を私は説明できません。

 10年前、Wiiのマリオに自動クリア機能が付くと付かないとかで物議を醸したことが想起されます()。「巻き戻し機能」に限っていうと、今のところファミコンやスーパーファミコンのソフトといった過去作品の配信ソフトに実装されている話しか聞きませんが、これから先、スーパーマリオの新作タイトルに「巻き戻し機能」が実装される日が来るかもしれませんよね、、、

 その頃には我々も自虐をしなくて済んでいるでしょうか。






orotima-ku1.png皆さんのご意見をお聞かせください。

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コメント

コンティニューは一時的な巻き戻しなのか、違うのか 問題は?

なるほど。巻き戻し機能はコンティニュー機能の最たる進化といえますね。

ノー巻き戻しという縛りプレイが一つ増えるだけじゃないかなと感じてます
子どもや初心者にはとっつきやすくなっていいんじゃないでしょうか
巻き戻しありきで作られるようになるとやっぱり難易度上がるのかな?

マリオとかのゲームオーバー⇔リトライなどの単なるクリアのための反復作業は短期的なコンティニューと実質同じだからいいとして、RPGやSLGの戦闘時やエンカウントなどの乱数行動でベストなものを引くまで粘って繋げていったり、レースゲームでリトライを繰り返してレコード更新するのはゲーム破壊な感じがする、一概には言えないかも

もう昔のゲームになっちゃいましたが、プリンスオブペルシャの時の砂っていうゲームがあって、時間を戻す「時の砂」がある限りは自由に時を戻せる。ミスしても戻せる。
っていう、巻き戻しを上手に使ったゲームがありました。
こういう風に一見ズルのように感じる巻き戻しの機能も使い方次第ではゲームの面白みに変えることができるっていう教科書のようなゲームでした。
ただ、最終ボスが強すぎて、巻き戻ししてもクリア出来なかったってことを「今思い出したよ!」

巻き戻し機能が初めて実装されたゲームってなんだろうと考えてみましたが、「倉庫番」じゃなかったかなと。
一手づつ戻す機能がついていたと思います。

星を見る人なんか、「町から出たら必ずスタート地点に戻る」っていう巻き戻し機能がついてるんだぜ。w
まぁそういう意味ではドラクエのルーラなんかも巻き戻しの機能と言えるのか?
まぁ失敗したとこだけ戻すっていうんじゃなくて、全部なかったことにするっていう意味じゃファミコンのリセットボタンなんかも巻き戻し機能ですよね。
昔は技術的に細やかな巻き戻しが出来なかったので、面セレクトやコンティニューなんて機能が主流だったんでしょうね

地点ワープやスタート地点の選択、全リセットは今回の部分的な巻き戻し&リトライ問題とは明らかに異質だと思う

難しい問題ですが、反復チャレンジすることでクリア出来るような絶妙なバランスを持っているゲームにとっては(ゲーム制作者の苦労が無意味になるという意味で)悪なような気がしますが、ファミコン全盛期にバランス調整不足でリリースされてしまったソフトとかでもエンディングを見られるようにするという意味では、まぁアリなのかなとも思います。(クリアしてクソゲー供養するため)
ただ、巻き戻し機能ありきでバランス調整を怠るっていう方向には向いてほしくないかな。
繰り返しスルメのように長く遊ぶきっかけが無くなる可能性もあるかもしれないなぁ。と思いつつ、でも面白いゲームって何年も繰り返し遊んじゃうし別に関係ないかとも思います。
まぁスポーツゲームとか、記録を争うゲームではナシですね。

素晴らしい記事だと思いました。考えると、私はあまり原理主義ではない感じでした。
私は人よりちょっと多めにロードランナーの自作面を作ったり解いたりしています。
すると、ときどき猛烈な面に出会う事があります。
エディット画面で最初は面を正確に入力しますが、一発クリアが困難な場合は、ここまで進んだと言う事にして、とその状態に面を修正します。それを繰り返して、クリア出来る事を確認し、また最初の状態に戻して再度一発クリアを目指します。
でも、この最後の一発クリアが出来なくても当時の私は「解けた」に分類していたと思います。
巻き戻し機能やリプレイ機能みたいのは、強烈過ぎるゲームに挑戦する身には非常にありがたいものです。
今やそれに「溺れている」と言って過言でないレベルかも。

10396さん
ノー巻き戻しという縛りプレイですか。ふつうにプレイすることがもはや縛りプレイになるという逆転現象、、、マジコンが流行った頃、ふつうに購入してプレイしているひとたちが、購入厨などと呼ばれていたことが想起されます(笑)

10397さん
レコード更新に巻き戻しはご法度でしょうね。冒頭のツイート主さんもおっしゃっておられましたが、せめて「巻き戻し回数を表示する」機能がほしいところです。

10399さん
巻き戻し機能が実装されたソフトがすでにあったんですね。知りませんでした。プリンスオブペルシャ。チェックしてみます!

>反復チャレンジすることでクリア出来るような絶妙なバランスを持っているゲームにとっては(ゲーム制作者の苦労が無意味になるという意味で)悪なような気がしますが

プレイヤースキルに個人差がある以上、ある程度の手応えを残すという意味での「絶妙」な調整というのが必ずしも万人に当てはまる「絶妙」とは言い切れず、難易度選択などのオプションが行き届いていなかったファミコンゲームなどでは巻き戻してでも先を見る権利を与えてあげることはそこまで悪ではないと思うな(失敗が続いたら徐々にヒントを増やしたり難度を緩和させていく近代的なゲームデザインならまだしも)

10400さん
パズル系で一手戻るのにリスクがなかったやつといえば「上海」を思い出します。

10401さん
昔は容量は技術の問題で実装したくてもできなかったというのは私も考えましたね。でも技術が進んだ今でも、純然たる「巻き戻し機能」を実装している新作ソフトが見当たらないというのは、そうでもなかったのかなと思って書くのを控えました。あと、巻き戻し機能というのは「ドラクエ」のルーラとかと違って、物語の外のちからなんですよね。プレイの流れとかまったく関係なくできるというのが、ちょっと異質かなと思います。小説で言うメタ表現とでもいいましょうか。物語重視の世界ではこの可逆性は「冷める」に値する機能なのかなと。

10402さん
巻き戻し機能というのは「物語の外のちから」という意味で異質ですよね。

10403さん
バランス調整不足を補う機能としてはアリというの視点は、なるほどと思いました。実際に、そういう意味でスイッチオンラインのファミコン/スーファミに実装されているのかもしれません。

ロボ平さん
ありがとうございます。これまたピンポイントな話。わかる。わかりますよ。私も「ロードランナー」での面作りは3~4の独立した謎解きを散りばめることが多いので、理論的に解けるということがわかった時点でOKと、ある程度、決めてしまいますが、相互にからむ部分もあるので、そうとも言い切れませんし、たまにやらかして全然簡単な別解とかが見つかったりして往生します(笑)
そういえば最近面つくってないですが、またロボ平さんをうならせるような面がつくりたいですねえ

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

日本では趣味なのに~道みたいに求道者よろしく取り組む人が一定数いるのですよね。「ゲーム道」の修行でもしてるの?とかね。
自己完結しているまではいいのでしょうが、大抵そういう人は他人にもソレを強要してくるのが困ったところです。
個人的には巻き戻しはアリだと思ってます。実際ダンスや楽器とか難しい部分はソコだけ何度も反復練習しますよね?最初からやり直すばかりではないはずです。
それと同じだと思います。

耳が痛い(笑)
強要までがセットみたいなところありましたからね。そこは我々ガチ勢もすなおに反省するところです。

また極端な意見が出てますが、この話題に関しては結局全否定も全肯定も出来ないということになると思います。巻き戻しが単なるリトライ、コンティニュー以上の意味を持つ場合(本来不可能な記録を出すなど)は公平性の観点から巻き戻しをしたという事実が記録されて然るべきですから、ケースバイケースで考えないと建設的な議論にはなり得ません。

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オロちゃんニュース!!
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 失われたファミコン文化遺産「ショップシールの世界」2020年6月26日発売

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