「市場価値でゲームを語るな」というジジイ仕草の正体

2020年12月06日15:37  コレクター論 写真あり

◆プレ値主義◆

 先日、TV番組「アメトーーク」のスニーカー芸人回を見ていた。その中でひときわ異彩を放っていたのは、かまいたちの山内氏だ。なぜなら彼はことあるごとにプレ値でしかスニーカーを買わない!と豪語していたからである。

 私は以前、こちらのエントリーで価格が高いこと自体に価値を見出すコレクターの存在を指摘したことがあるが、山内氏はまさにその手の極端な輩(やから)だったのだ。しかも彼はプレ値の推移を株価に例えてみせるなど、自らのコレクションが投機的であることを隠しもしなかったのである。だが私が最も驚いたのは、そんな彼に対して「よく言ってくれた」という激励が届くという発言だった。



 おそらくスニーカー界隈には市場価値ばかり口にしてると「デザインを語れ」と一喝してくるジジイがいるのだろう(笑)

 レトロゲーム界隈にも似たような構図がある。市場価値の話ばかりしているとジジイたちに「今の若いコレクターは値段のことばかり言いやがる」と嘆かれてしまうのだ。たまたまかもしれないが私の知ってる若いコレクターたちも皆、驚くほど市場価値を熟知しているし、当然のように自らのコレクションの市場価値が上がることを望み、それを隠そうともしない。つまり彼らもまたレトロゲームを投機的に蒐集していることを何ら恥じていないのだったのだ。

 残念ながら、ジジイである私はその感覚をにわかに共有できなかったのだが、気づいたことがひとつだけある。



◆青から赤へ◆

 少しばかり昔話をしよう。(ジジイの「昔は安かった話」にウンザリしてる方はこの章を飛ばしてもらっても構わない)

 私がファミコン蒐集をはじめた90年代半ば頃は、ファミコンソフトが投げ売りされていた時代だった。すでに東京や大阪ではファミコン再評価時代が始まっていたようだが、私の住んでいた田舎の海はとても青かったのだ。いわゆるブルーオーシャンってやつである。

ブルー‐オーシャン【blue ocean】 の解説
経営学の用語で、競争のない未開拓市場のこと。新しい商品やサービスを開発・投入することで創出される競合相手のいない市場。→レッドオーシャン
出典:goo辞書

 当時はインターネットなどまったく普及しておらず、都会との情報格差は凄まじいものがあった。田舎にはプレ値もへったくれもなかったのだ。私はただワゴンからファミコンソフトを山のように抱えてレジへ持って行くだけで良かったのである。ただし、その代償として私は孤独だった。コレクター仲間と呼べるような存在は周りに一人もいない。そんな私が「たった一人のファミコン少年」というホームページを開設したのは1997年のことだった。

 やがて田舎にもファミコン再評価の波が押し寄せると、全国的にレトロゲームブームが到来。ファミコン市場はレッドオーシャンへ変貌していくのである。



◆そこには事実があるのみ◆

 その流れはSFCやMDなどその他のレトロゲームにも当てはまるだろう。そんな「レッドオーシャン以降のコレクター」を「歴の若いコレクター」と定義してみるならば、彼らは、歴だけ長いジジイと違って、レトロゲームに一定の市場価値が付与された時代に蒐集をはじめた人間ということになる。

 単純に“蒐集を始めた時期”の話だ。そこには事実があるのみ。

tana001.jpg

 つまり歴の若いコレクターは最初から”レトロゲームに投機的価値があることをわかった上で蒐集をはじめている”という事実があるのみ。それこそが世間的には無価値だった時代に蒐集をはじめたジジイたちとの決定的な違いであり、感覚が噛み合わない最大の原因なのである。

 恥ずかしながら私は、今更そんなカンタンなことに気づいたのだった。



◆紺碧の海◆

 さすがに今の時代、一部のレトロゲームに血反吐が出るくらいプレ値がついてることを知らずに、この界隈へ飛び込んでくる人間なんていないだろう。むしろ私は尊敬しているのだ。たまにSNSでファミコンのコンプリートを目指してる若いコレクターを見かけるが、いい意味で狂ってるよね(笑)

 それなのにジジイたちときたら、ことあるごとに、ついつい「市場価値でゲームを語るべからず」なんて説教を垂れてしまう。悪気はないのだ。なぜなら、(くどいようだけど)かつて市場価値なんか気にせずレトロゲームを楽しめる時代が本当にあったから。たぶんそのままのノリなんだよ。もしかしたら我々は「そんな時代があった」という過去の亡霊をいつまでも追いかけているのかもしれない、、、

 いや、認めようじゃないか。
 少なくとも私は過去の亡霊を追いかけている。

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 しかしそれは「まだ諦めてないからだ」と、最後に言い訳させてほしい。いまだに諦めきれないのだ。真っ赤に染まりきってしまったように見えるファミコン界にも、きっと、まだ誰も足を踏み入れていない紺碧の海が広がっているはず。市場価値など関係ない。独自の文化を形成している世界がきっとあるはずだ。私はそんなブルーオーシャンを切り拓(ひら)いてみたいのだ。いつまでもそんな夢を追いつづけていたいのだ。

 あの頃の情熱を胸に燻(くす)ぶらせながら、、、



◆以下、蛇足。◆

 ここからは蛇足なのだが、そんな私が今、開拓している「ショップシールの世界」の話を少しだけさせていただこう。

 ファミコンカセットをひっくり返すと、純正の裏ラベルの代わりにどこかのファミコンショップの独自ラベルが貼られていることがある。私はそれらをファミコンショップシールと呼び、世間的にはまったく価値がないのにも関わらず勝手に「失われたファミコン文化遺産」と位置づけて、なりふり構わず保護活動を展開して来た。「いったい俺は何のためにやってるんだろう」と、ふとした瞬間、真顔になるくらい時間も、お金も注ぎ込んできた。


※こちらはkindle版

 今年6月には、かつて日本全国に存在したファミコンショップを網羅した資料本まで出版してしまった。するとどうだろう。我が活動との因果関係は不明であるが、たまに驚くほど高値で取引されるファミコンショップグッズを目撃するようになったのだ。

kati003.jpg

 こちらのショップケースは3000円を超えている。


kati002.jpg

 こちらのシールセットに至ってはなんと8000円を超えてしまった。何のことはない。両方とも私が落札したのだが、ファミコンショップシールの文化的価値を叫んできた身として、このような結果になるのは素直に嬉しいよ。こんなもの、私以外にも欲しがるひとがいるってことだからね。だけど、入札価格がどんどん上がっていくにつれ、なんだこいつ。山内か?と、だんだん疑心暗鬼になり、最終的には「こんな静謐(せいひつ)な海にジェットスキーで乗り込んでくるなよ!」とガチギレしていたのは内緒だぞ(笑)

 ショップシールの文化的価値が認められるのは嬉しいけど、市場価値が上がることなど、私は望んでいないのだ。まあそんなジレンマを楽しむのも、ブルーオーシャン開拓の醍醐味ではあるのだけど、、、



orotima-ku1.pngみんな、勘違いしてはいけない!
こんなもんに市場価値なんて無いぞ!?


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