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デマ情報により高騰化!? 謎のドラクエ攻略本「どらくえ3」事件は意外な結末だった!!

◆異色のドラクエ本◆

 皆さんは1988年7月25日に冬樹社より発行された『ドラクエ3』の攻略本、ドラゴンクエストIII マルヒ公式ガイドブック「どらくえ3 謎の魔王をやっつけろ」のことをご存知だろうか。おそらく当時、持っていたという元ファミっ子も多いことだろう。

dorakue3001.jpg

 三好竜二&RPGオールスターズという、ムード歌謡グループみたいな筆者が書いた、見るからに怪しい攻略本である。

 一瞬、公式ガイドかと思ってしまう「マルヒ公式ガイド」というネーミングは、すなわち「非公式ガイド」という意味だ。かなりチャレンジャーである。したがってこの本、内容にゲーム画面がいっさい出てこず、小説の挿絵のような渋いイラストが要所要所に描かれているだけで、あとはひたすら文章がつづく。

oe0ji10032.jpg

 文章は、どこか上から目線な雰囲気を醸して出しているのが特徴的だ。

 攻略情報は書いてあるものの、ご覧のように終始、プレイ日記調であり、およそ我々のイメージする攻略本ではない。しかし巻末に袋とじがあり、それを開けるとマップ図が描かれたまともな攻略情報っぽいコンテンツが、突然、出てくるのだった。

oe0ji10031.jpg

 いや、それどころか、その袋とじの攻略情報っぽい箇所は、けっこう終盤(ラスボス)まで踏み込んでしまったためエニックスに怒られて裁判沙汰になったという曰く付きなのである。私はいつかネタにしようと思いながらもタイミングを逃したまま、ずっと本棚の肥やしにしていたのだった。



◆謎の高騰化◆

 それが、ここ最近――
 妙に高騰化しているもんだから、おかしいなあ、と思っていたのだ。

dorakue3002.jpg
 ※出典:オークションリスト - オークション価格相場研究所

 Amazonだと1万円
 駿河屋に至っては1万5000円だ(笑)
 いったい何事であろう!?

 ちなみにAmazonの価格推移データを見ると、、、

dorakue3007.jpg
 
 データが始まる2012年以降、ずっと700~2500円だったのが、2014年後期に突然2万円を超え、その後、また落ち着いたと思ったら2020年8月に突如驚異の6万円を超えを達成。現在、1万円前後をキープといった状況である。



◆デマ情報の拡散◆

 調査を開始すると、どうもこの本「販売停止になった」というデマ情報が飛び交っており、それによって妙に注目を浴びてしまった結果、高騰化を招いたっぽいのだ。では、デマの震源地はどこだろうか?

 調べてみたらさっそくwikiが出てきた。

なおこの本、公式ガイドブックには掲載されていない【アレフガルド】以降も収録されており、袋とじ形式で【ゾーマの城】のマップと攻略法まで書かれていた。これがエニックスの逆鱗に触れたようで、あえなく発売停止となってしまった。出版元の冬樹社も1991年に廃業しており、現在では入手困難なレアものだろう。

 「あえなく発売停止となってしまった」ってハッキリ書いてあるではないか。このwikiの記述はいつから存在するのだろう?

 さらに調査をすすめると「2ちゃんねる」に以下のような書き込みを発見。

dorakue3004.jpg


 このスレにリンクされていたgeoctiesのサイトはとっくに消滅してしまっていたが、Internet Archiveで調べたところ、以下のように記述されていたことがわかったのだ。

 1988年 7月23日 マニアが制作の3解説本を著作権侵害として販売差止申請
 エニックスは、ゲームマニアの制作したドラクエIIIの解説書が著作権の侵害にあたるとして、東京地方裁判所に販売差し止めを求める仮処分を申請した。この解説書は『マルヒ公式ガイドどらくえ3』というタイトルで、巻末には最終段階の攻略ヒントも袋とじでついている。出版元は「ストーリーを独自に再構成したもので、著作権は侵害していない」と話している。

 アーカイブされた日付は2000年7月である。

 たしかに、そこには「販売差し止めを求める仮処分を申請した」と書いてある。これはまぎれもない事実なのだが、しかし、もう一度読み返してもらいたいのだ。そこには、エニックスが、販売差し止めを求める仮処分を“申請した”と書いてあるだけではないか。そう、エニックスは販売差し止めを求めたのであり、その申請が認められたのか。実行されたのかということについては、何も書いてないのだった。



◆実は示談&和解していた◆

 それではこのエニックスの訴えが実際にどうなったのか、当時の資料などを参考に、経緯を追ってみよう。

 まずは1988年8月31日付けの「朝日新聞」の朝刊から。記事によると「どらくえ3」が訴えられたのは88年の7月23日。エニックスが販売差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請したとある。8月15日に第1回の審尋が開かれたが双方の主張は平行線だったらしい。

 つぎに「ファミリーコンピュータMagazine」1989年3月3日号。ファミマガJournalの記事から。

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 ここにもエニックスから「発売禁止」の仮処分が申請されたと書いてあるが、むしろ裁判所は11月に「在庫の販売は認めるが今後販売する分については一部マップを外す」という和解案を提案しているのである。つまり裁判所側はエニックスの訴えを本訴訟するまでもないと判断したわけだ。

 たぶん当時の裁判官には、ゲームのネタバレ情報の重大性がわからなかったのだろう。「まあ、ようわからんけど和解せえよ」と言ってきたわけである。当然、エニックスは納得できるわけもない。のちに、本訴訟を起こすことになるのである。

 つづいてファミコン通信1992年5月22日。ドラクエ事件簿の記事から。

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資料提供:ナポりたん


 こちらの記事では「どらくえ3」はわずか一ヶ月で10万部を売ったとある。10万部っていうと半端じゃない数だ(ちなみに公称は30万部らしい)。しかし注目すべきは次の文章だった。そこには以下のように記述されていたのだ。

その後、この事件は両者和解して幕を閉じた


 続いて、ファミコン通信1992年10月2日号では、、、

dorakue3010.jpg
資料提供:ナポりたん


こちらは示談という形で終わった

 和解、そして示談、、、

 つまり、攻略本「どらくえ3」の発売禁止を求めるエニックスの訴えが認められることは無かったということだ。具体的には、エニックスが著作権侵害の仮処分を申請 → 裁判所が和解を提案 → それでもエニックス本訴訟 → 結局和解という流れであった。よって「どらくえ3」の発禁は真っ赤なデマなのである。



◆デマが発生した経緯◆

 それでは、なぜこのようなデマが生まれてしまったのだろう?

 じつは原因になったであろう出来事が起きていたのだ。味をしめた冬樹社はその後、同じ手口で『ドラクエIV』の攻略本を出そうと計画していたのだが、さすがに「どらくえ3」で辛酸をなめさせられたエニックスは黙っておらず、今度は対策を練りに練って訴訟を起こしたのだ。すると見事に販売差し止めの仮処分をくらわせて本懐を遂げたのである。

dorakue3011.jpg

 1990年6月28日の「朝日新聞」朝刊によると、問題の解説書は冬樹社の「ドラクエ4攻略マニュアル」と題された攻略本で、90年5月中旬に発売予定だったらしいが、地図など城の絵などが描かれていたらしい。そして6月27日、東京地裁はエニックスの申請通り、解説書の発行や販売の禁止などを命じる決定をしたとのこと。

 同じ内容をファミコン通信1990年7月20日号も報じている。ちなみにこちらでは、攻略本の名前は「ドラクエ4パーフェクトデータ」となっていた。

ファミ通01
資料提供:ナポりたん


 また、 2015年10月2日発行「ファミコン攻略本ミュージアム」によると、この幻となった『ドラクエ4』の攻略本は一般流通書籍を示すISBNコードまで取得していたらしいのだ。


 
 ちなみに冬樹社はその後、90年代前半に廃業したという。

 以上の点を考慮すると、つまり、「どらくえ3」が販売停止になったというデマは、本当に発禁になった『4』の攻略本と話が混同されている可能性が高いということだ。まとめると以下のようになる。

 攻略本「どらくえ3」が販売停止になったというのはデマ。
 裁判にはなったのは本当だが、結局両社は和解した。
 ただしその後、冬樹社が発行しようとしていた『4』の
 攻略本については本当に発禁となった。

 これが答えだ!



◆真偽不明な情報には注意しよう◆

 しかし疑問も残る。

 結局「どらくえ3」のほうは発禁にならず和解が成立。10万部も売ったわけだから、そこまで品薄になるような代物ではないように思うのだが、不思議なことに市場であまり見かけないのは事実なのだ。この現状について、日本ビデオゲーム考古学会のN氏に見解をうかがったところ「内容があまりにも最低だったので、多くはやぶり捨てられたのではないか」とのこと。

 案外、さもありなんである。

dorakue3012.jpg

 いずれにせよ、出典を示さない真偽不明の情報は鵜呑みにするのではなく、すぐに一次ソースをあたることをお勧めする。もしくは弊ブログ「ファミコンのネタ!!」で質問しよう。運が良ければきっと誰かが答えてくれるぞ!(他力本願)
 


orotima-ku1.png噂によると、この幻となった『4』のやつを持ってるひとがいるらしい

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コメント

ああ某動画でも取り上げられてた奴か。

書籍コードまで取ってあるということは発売寸前である4の攻略本も少なからず現存はしてたという事かな?

冬樹社は魔界塔士サガの攻略本でも同じように訴えられていましたね。

この会社は攻略本に「公式」が生まれるきっかけのひとつを作ったといっても過言ではないと思います。
時期的にみても、メーカーが「公式ガイドブック」をだすようになったのは、ドラクエ4とサガの事件直後からですから。

11042さん
YouTubeなど動画の影響は高いですね。最近は文字情報だけでなく、動画にも敏感にアンテナを張らなければなりません。

11043さん
そこまで進んでいたということは印刷を終えていた可能性もありますね。

貝さん
どらくえ3は、攻略本のあり方に一石を投じた本でした。結果として、公式ガイドブックの重要性を説いたことは、皮肉というか何というか。

この本当時買って持ってたと思うがどこかに行っちゃったな。
はぐれメタルにドラゴラムなんて話も書いてあったような無かったような・・・もう昔過ぎて定かじゃないや。

友達の友達の家にあった記憶
どこが攻略本なのかと、当時ただの小説と言う感覚でパラ読みしていた記憶

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