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ドラクエ訴訟の原点「ハイスコア事件」をめぐる調査記録(8) ~堀井雄二のネタバレ観~ 

 これはファミコン雑誌「ハイスコア」の竜王掲載伝説を、12年間にわたって追いつづけた筆者の調査記録である――

haisukoa08.jpg

 前回の記事はこちら



◆“ちぐはぐ”問題◆

 ついに竜王を発見した私は新たな疑問と直面していた。それは、竜王(変身後)の姿を載せてしまったファミコン雑誌「ファミ通」や「ハイスコア」は抗議を受けたにも関わらず、同じく竜王(変身後)の姿を載せてしまったファミマガ(徳間書店)が出した初代『ドラクエ』の攻略本はお咎めなしだったというエニックスのネタバレ対応“ちぐはぐ”問題である。

 すると、ファミコン通信1994年5月20日号にそのヒントが載っていたのだ。

 nintendouge-mukisei0.jpg
資料提供:ナポりたん


 記事によると任天堂の場合、ゲーム雑誌と攻略本では規制内容が違ったらしいのだ。もしかしたらエニックスも、そのようなシステムを採用していたのかもしれない。とくにエニックスの場合、1988年に自前の出版部を設立しているので、他社の攻略本には厳しく対処しそうなものである。逆に言えば厳しくしないということは、徳間書店と何らかの合意があったと見るほうが自然であろう。

 ただし、作者である堀井雄二氏がどう思っていたかはまったく別問題なのであった。というのも、エニックスはあくまでも企業なのだから、常にビジネス的判断を優先するのは当たり前なのだが、その考え方が必ずしも堀井雄二氏と一致したわけではなさそうなのだ。

 追記:2021/01/24
 やはりファミマガの攻略本はエニックスと契約した上で発行されていたようです。詳しくは「番外編」を御覧ください。




◆堀井雄二のネタバレ観◆

 思い起こされるのは「ドラクエ7制作中止騒動」である。ゲーム批評2000年3月号によると、この事件は1999年12月に起こった。『ドラクエ7』を制作していた堀井氏が、集英社が発行する週刊少年ジャンプに「ネタバレ情報が公開され過ぎている」と激怒。当時、自ら運営していたホームページの掲示板へ制作中止を匂わせるメッセージを書き込んだとされる。
 
dorakue7soudou0.jpg
資料提供:ナポりたん

 残念ながらその文章はすぐに消されてしまったため、オリジナルは残っていないのだが、個人ホームページ「う~'s ゲーム」によって、そのときの全文が確保されているので、以下に一部引用させて頂こう。

今日は みなさんに かなしいお知らせが あります。
DQ7の発売日が さらに のびそうです。
というのを 今週発売のジャンプを読んで シナリオが
これまでのシリーズとちがって かなり明らかにされていることに
驚かれた人もすくなくないと思います。

これまでは ほんんどの記事をボク自信がチェックしてきましたが
今回はその時間をとれず エニックスの広報にまかせました。

これまで 10年以上 ヒントは書いても結果は書くな と
何度となく雑誌記事 攻略本を直させてきました。

(中略)

ボクのわがままかも知れませんが そんなわけで
今は 作業をすすめる気になりません。

 ドラクエ特有の記述法である「分かち書き」が印象的な文章である。注目すべきは10年以上「ヒントは書いても結果は書くな」と(中略)直させてきました。という発言だ。1999年時点で10年以上ということは、この言葉はファミコン時代から言い続けてきたということになるだろう。それは堀井氏側もエニックス側も10年以上、そのスタンスを変えて来なかったことを示唆している。

 すなわち、この発言の背景には「ヒントだけならOK」の堀井氏と「ときには結果までOK」のエニックスという構図が横たわっているのだ。それを踏まえた上で、初代『ドラクエ』から始まった各メディアの竜王掲載事情を改めて振り返ってみるならば、それぞれのネタバレ対応に見える“ちぐはぐ”の正体はどうも、そのまま堀井氏のチェックの入り具合だった臭いのである。

dorakue1001001.jpeg
資料提供:あかみどり

 たとえば、初代『ドラクエ』発売前に配られたというこちらのチラシに、変身後の竜王のイラストが思いっきり掲載されてしまっている件に関しては、エニックス側が“見映えのみ”でモンスターを選んでしまい、たまたま堀井氏のチェックをかいくぐった結果だったかもしれないのだ。

 なお、青い髪のローラ姫については、おそらく初期デザインであり、以降はまったく登場してないことから、鳥山明が関わったものではないとされている。



◆両者が出会っていた作品◆

 前回、インタビューを試みた大森田不可止氏につづいて、堀井雄二氏の話題となったのは偶然ではない。最後に両者に関する興味深いエピソードを紹介しよう。



 1991年3月21日に発売された名作テーブルゲーム『いただきストリート』でプログラムを担当していたのは大森田氏であり、そのゲームデザインを担当していたのが堀井氏なのである。なんと両者はハイスコア事件後に『いただきストリート』によって邂逅(かいこう)を果たしているのだ。

 しかも、それだけではない。驚くべきことに、このとき大森田氏と堀井氏はドラクエ裁判について話をしたんだとか。すると堀井氏は「そんなこともあったね」とまったく気にかけない様子だったという。大森田氏曰く「気遣いだったかもしれない」とのことであるが、ハイスコア事件によって対峙せざるを得ない立場にあった両者が、のちに手を携えてゲームをつくっていたなんて、なんとも因果な話ではないか。私はそんなところからも堀井雄二氏のネタバレ観が垣間見える気がしたのである。

 ということで、次回はいよいよ最終編。
 ハイスコア事件をめぐる都市伝説を一気に解決していこう。



orotima-ku1.pngつづく



ドラクエ訴訟の原点「ハイスコア事件」をめぐる調査記録

(1) もうひとつの竜王伝説
(2) 公式ガイドブックの謎
(3) 消えたドラゴンロード
(4) マスコミの発禁報道
(5) そして都市伝説へ…
(6) 竜王説は生きていた
(7) 信じ抜いたすえの邂逅
(8) 堀井雄二のネタバレ観
(9) すべての伝説を越えて
(番外編) ファミマガ編集長の視点
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