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ドラクエ訴訟の原点「ハイスコア事件」をめぐる調査記録(3) ~消えたドラゴンロード~

 これはファミコン雑誌「ハイスコア」の竜王掲載伝説を、12年間にわたって追いつづけた筆者の調査記録である――

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 前回の記事はこちら



◆マイナー誌は蚊帳の外だった!?◆

 幻級の稀少本であるファミコン雑誌「ハイスコア」の蒐集が思うように進まないなか、私はひとまず、他誌の竜王掲載事情を調査することにしたのだった。

 前回はメジャー誌を中心に見ていったので今回はマイナー誌に注目してみよう。まずはマイナー誌のなかではハイスコアよりも知名度の低いであろう「ファミコントップ」である。驚くべきことにこの雑誌、1986年8月22日発行の第4弾で、がっつりと竜王城のマップと変身後の竜王の姿を掲載していたのだ。

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資料提供:ナポりたん

 正直、なぜ、これが問題にならなかったのか逆に意味がわからないくらいのネタバレっぷりではないか!

 ファミコントップは学習研究社(のちの学研)が発行していた科学雑誌「UTAN」の別冊として1986年4月に創刊された超マイナー誌である。毎回、芸能人の似顔絵を表紙にしているのが特徴的だったが、いつまで発行されたのか、発行部数はどのくらいだったのか、詳しいことは何ひとつわかっていない。

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 ちなみに1988年7月5日発行の、同じく超マイナーファミコン雑誌である「ファミコンBEST」第2号に掲載された「いきなり業界フリートーク」という記事に、少しだけドラクエ訴訟問題について触れられた箇所があるのだが、そのなかで、業界の記者Eの話として「やっぱり出版社は怖がってますもん。学研だけですよ、勇気あるの(笑)」と言及されている一節がある。これがファミコントップのことだったとしたら(というか他に該当がない)、業界内では「勇気のある雑誌」と見られていたということだ。

 そして、少し時代がくだって、こちらはまたまた超マイナー誌である1987年2月1日発行「ファミコンチャンピオン」2号の『ドラクエ2』の特集である。

dorakue1001003.jpeg
資料提供:ナポりたん

 この時代になると竜王(変身後)の姿は解禁になったのか?と錯覚するほどのナチュラルに掲載されているが、これがハイスコア事件が起こる前の出来事だったことを忘れてはいけない。まかり間違えば「チャンピオン事件」と呼ばれていた世界線だってあり得たのである。

 ちなみにファミコンチャンピオンは1986年7月に発行されたマイナー誌で出版社は秋田書店。つまりファミコンチャンピオンの「チャンピオン」は週刊少年チャンピオンの「チャンピオン」なのだった。

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 ※こちらはチャンピオン創刊号

 ここで改めて「超実録裏話ファミマガII」に目を凝らしてみたい。

 同書によると『ドラクエ』には、キャラクターデザインが鳥山明氏だったこともあり、事前情報はエニックスより提供された画面写真に則って記事を作成、発売直前にようやくゲームプレイしての記事が掲載できるという規制が存在したらしい。そして、ある日突然、エニックスが一方的に規制を強化してきたときには4大メジャー誌の編集長が連名で抗議書を送ったというのだ。

 私はこのエピソードから「ドラクエの掲載規制がいかに厳しかったか」という事実よりも、どちらかというと「いかにマイナー誌が蚊帳の外だったか」という事実を読み取ってしまったのだった。当然、ハイスコアもメジャー誌からしたら眼中にない存在だったことだろう。

 嗚呼、愛しのハイスコアは何処、、、



◆発売前に消えたドラゴンロードの謎◆

 これまで様々なファミコン雑誌を調査してきたことで、少しずつではあるが、竜王掲載が決して珍しいケースではないことがわかってきた。もしかしたらドラクエの父・堀井雄二氏は当初、竜王掲載についてそこまで神経質ではなかったのかもしれない。

 そんな私の疑念が、確信に変わったのは何のことはない。初代『ドラゴンクエスト』が発売される前に配布されたチラシを見せつけられた瞬間だったのだ。

dorakue1001001.jpeg
資料提供:あかみどり

 なんとそこには竜王の儼乎(げんこ)たる姿が現れたではないか!

 ドット絵ではなくイラストバージョンではあるが、これは、まぎれもない竜王の変身後の姿である。しかもチラシ面積のおよそ6分の1という特大サイズに私は、たじろぐしかなかったのだ。しかし同時にそこはかとない違和感を憶えたのも確かである。なぜ、堀井氏は発売前のチラシに、わざわざラスボスであるはずの竜王(変身後)の姿を登場させたのだろう、、、

 すると、初代『ドラクエ』が発売される3ヶ月前の週刊少年ジャンプ1986年2月24日号(11号)に、その答えのヒントが隠されていたのだった。

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 この記事はジャンプ誌上に「ファミコン神拳」が定番化する前に組まれたごく初期のファミコン特集であったが、こちらにもデカデカと竜王のイラストバージョンが描かれていたのを私は見逃さなかったのだ。しかしそんなことよりも注目すべきはそのキャプションであった。そこには「ドラゴンロード」という灰殻(ハイカラ)な名前が記載されていたのである。

 おそらくこの竜王(変身後)のキャラクターは、開発中の段階ではドラゴンロードと呼ばれていたのだろう。つまり、堀井氏は当初、このキャラクターをラスボスと想定しておらず、まったく別のモンスターとして考えていた可能性が見えてくるのだ。

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 ※デビルロード(左)とガメゴンロード(右)

 一般的に「ロード」という言葉には王、君主、支配者というような意味があるものの、ドラクエシリーズにはデビルロードやガメゴンロードなど、○○ロードと名付けられた通常モンスターが何体か存在するのはご存知の通り。そして、ずいぶん後の話ではあるが2017年7月29日に発売された3DS版『ドラゴンクエスト11』には、その名もドラゴンロードという通常モンスターが登場しているのだ。もしこれが初代『ドラクエ』の開発段階で幻となったドラゴンロードの復活劇だったとしたら、なんとも因果な話ではないか。

 ただし、このドラゴンロードの謎については「ただ単に名前が長かった説」も根強い。たえばNES版の竜王はその名も「Dragonlord」なのだ。したがって竜王は元々「ドラゴンロード」という名前だったのだが、容量節約のため短くしたのではないかというのがこの説である。初代『ドラクエ』の容量節約エピソードはあまりにも有名。たかが名前の長さといえども、死活問題になり得たであろう。



◆自らネタバレしていく堀井スタイル◆

 いずれにせよ、ひとつだけ確かなことが言えるとしたら、このキャラクターが竜王の変身後の姿に設定されたあとも堀井氏はネタバレには寛容だったということだ。彼が「ゆう帝」という名のライターとして週刊少年ジャンプとずぶずぶの関係だったことを知らないファミっ子など存在しないだろう。1986年6月23日号(28号)の綴じ込み記事「ファミコン神拳」には思いっきり、竜王(変身後)の姿が掲載されているのだった。

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 その横にはしっかりと逆立ちした「ゆうてい」のイラストが差し込まれているところが秀逸ではないか。このネタバレは作者公認ですよと言わんばかりの演出である。

 驚くべきことに彼は、初代『ドラクエ』発売から1ヶ月も経たないうちに自らつくったゲームのクライマックスにおける最高のサプライズであるはずの真のラスボスの姿を、当時400万部を超える発行部数を誇った少年漫画誌の大人気コーナーに、自分から晒していたのである。むしろこれは「ここまで来てみろ」という彼なりのエールではなかったか。

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 ちなみに「竜王なんてパッケージに描いてある時点でネタバレも糞もねえだろ」というようなことを仰る御仁をまれに見かけるのであるが、私は、ファミコンソフトのパケ絵に描かれた竜王については「ネタバレ」ではなく、どちらかといえば「伏線」と解釈しているため、あえてここでは言及しないことを念のため断っておこう。もし興味がおありならば「初代『ドラクエ』のパケ絵はネタバレではなく伏線論」を参照して頂けたら幸いである。



◆まとめ◆

 以上。

 前々回、前回を含め、ここまで調査したハイスコア事件における竜王周りの主な出来事を、時系列にまとめてみたのでご覧頂きたい。

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※雑誌については誌面に記載された発行日を参照しています

 こうして見ると、やはりファミコン雑誌における竜王掲載のタブー性に対する疑念はますます晴れないのであるが、一番肝心な「ハイスコア」に登場した竜王を見つけられない限り、私はこうやって延々と外堀を埋めつづけるしかないのだった。しかしそれは私が竜王探しの旅を始めてから約3年が過ぎた2012年10月のことだ。インターネットの海に突如として竜王掲載説に関する決定的な証言が現れるのことになるのだが、、、

 それはまた別のお話。



orotima-ku1.pngつづく



ドラクエ訴訟の原点「ハイスコア事件」をめぐる調査記録

(1) もうひとつの竜王伝説
(2) 公式ガイドブックの謎
(3) 消えたドラゴンロード
(4) マスコミの発禁報道
(5) そして都市伝説へ…
(6) 竜王説は生きていた
(7) 信じ抜いたすえの邂逅
(8) 堀井雄二のネタバレ観
(9) すべての伝説を越えて
(番外編) ファミマガ編集長の視点
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