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ドラクエ訴訟の原点「ハイスコア事件」をめぐる調査記録(番外編) ~ファミマガ編集長の視点~

 先日、完結した連載記事「ドラクエ訴訟の原点「ハイスコア事件」をめぐる調査記録」に対して、SNS等で多くの反応を頂いたわけですが、その中でファミマガ2代目編集長さあにん@山本直人さん(@sarnin)から直々に「ファミマガについて記述が少し間違っている」とのご指摘を受けてしまいました!

 わ~
 どうしよ~(笑)

 たしかに今回はハイスコア事件のみに焦点を当てるつもりが、書いているうちにぜんぜん話がまとまらず、どうせなら「全部をブチ込んじまえ!」ということで、他誌のこと、エニックスのこと、堀井雄二さんのこと。調査していく中で判明した様々な事実を詰め込みすぎた結果、本筋でない部分は憶測で終わっているところも多々ありました。

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 そんな私の記事を読んでいただいた山本さんから「ファミマガ関連の件は、聞いてもらえれば答えたのに(笑)」とまで仰っていただいたので、さっそくお話を伺って来たよ。しかもどういう訳か人生初のZOOMだったよ!

 ということで、今回は、ドラクエ訴訟の原点「ハイスコア事件」をめぐる調査記録“番外編”と銘打ち、元祖ファミコン雑誌である「ファミリーコンピュータMagazine」2代目編集長、山本直人さんの視点から語るハイスコア事件、及び、ファミマガ関連の件をお送りしましょう。

<プロフィール>
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山本直人(やまもとなおと)
通称さあにん。『ぱふ』勤務後、徳間書店『テクノポリス』を経て『ファミリーコンピュータマガジン』二代目編集長となる。著書「超実録裏話ファミマガ」等。



◆ハイスコア事件について◆

 まずはハイスコア事件について業界内からどう見ていたか伺いました。

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 連載第4回「マスコミの発禁報道」で紹介した週刊ポスト1987年3月13号によると、ハイスコア事件は業界内から「適当なところで手打ちになるはず」「お互い縁を切る気はない」「一種の出来レース」と、皆一様にして冷ややかな反応を示していたという。これについて山本さんは「ハイスコア事件はとくに大騒ぎするようなことではなかった」と述懐します。結果的にマスコミが騒いで大事になってしまっただけで、雑誌業界では回収騒ぎなどよくある話だったという。

 また、エニックスはサンプルROMを貸し出す際に「ゲームの謎解きはしない」「発行前に事前チェックをする」という条件を出していたのですが、これに対してハイスコア側が「そんな約束をしたことはありません」とキッパリ否定した件については、エニックスが無条件でサンプルROMを貸し出すことはありえないので約束はしているはずと指摘。「約束を守らなかったのだから訴えられて当然と思っていた」とのことです。

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 ハイスコア事件の裁判の争点はあくまでも「画像の著作権」であって「謎解き」でなかったことは、WEB上で公開されている「ドラゴンクエストⅡ事件仮処分決定」で示されている通りです。

 山本さんによるとゲーム画面写真を「引用の範囲外」で無断使用することが著作権や映像権違反となることは「過去にナムコが起こしたパックマン裁判で判例が出ていた」という。



◆ファミマガが載せなかったゲームソフト◆

 次にハイスコアとファミマガの関係について興味深いエピソードを聞きました。ファミマガは「すべてのゲームの紹介記事を掲載する」というカタログ的ポジションに徹する雑誌だったのですが、山本さんが語ったところによると、少なからず例外があり、それが『ゾンビハンター』と『MADARA』だったとのことです。



 『魍魎戦記MADARA』は原作:大塚英志、作画:田島昭宇という「多重人格探偵サイコ」コンビが手掛けていた漫画で、そもそもが、ファミマガのライバル誌のひとつであった「マル勝ファミコン」に連載されていたものでした。それがメディアミックスの一環としてファミコンソフト化した作品だったのです。当然、その攻略記事は「マル勝ファミコン」が優先されたため、ファミマガには載らなかったのですね。

 かつて『魔界村』のMAPをめぐって両誌がやりあっていたことが関係するかもしれないと一瞬、思いましたが、山本さんが言うには、ファミマガとマル勝は本当は仲が良く、お笑いのノリでツッコミ合戦をしていたとのこと。関係はなさそうです。



 そしてご存知『ゾンビハンター』はハイスコアが制作したファミコンソフトでした。こちらはハイスコア誌が攻略記事を書いてからでないて載せてはいけないという規制があったので「だったらやめよう」となったらしいです(笑)



◆完全攻略本について◆

 続いて連載第2回「公式ガイドブックの謎」で紹介した完全攻略本について伺いました。



 ファミマガ(徳間書店)が出した初代『ドラクエ』の完全攻略本に竜王が掲載されている件で、私は「なぜ咎められなかったのか」と憶測を展開していたわけですが、その答えは何のことはない。「エニックスと2年契約していたから」とのことでした。

 しかも、すべてのデータを公開してもいい契約になっていたそうです。当然、竜王の変身後の姿もその範囲に含まれていたんだとか。第6回「堀井雄二のネタバレ観」でも言及させてもらいましたが、エニックスのネタバレ観と堀井さんのそれが必ずしも一致してなかったので、このあたり、堀井さんの心境はどうだったのか気になるところではあります。

 当時、1985年の出版業界を震撼させたという「スーパーマリオ攻略本伝説」を筆頭に、ファミコンの攻略本がバカ売れすることが判明し、メーカーが続々と攻略本を出し始めました。エニックスも例外ではなく自ら出版部門を立ち上げて1988年8月19日に『ドラクエ3』の公式ガイドブックを発行することになるのです。

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出典:ファミマガ1988年9月16日号(NO.17)

 その際、『1』『2』の公式ガイドブックは少し遅れて9月15日に発行されているわけですが、その理由について山本さんが語ったとろこによりますと、「エニックスは出そうと思えば出せたが、礼儀として契約期間が切れるのを待ってくれた」とのことです。つまり徳間書店が攻略本を出している間、あえて公式ガイドブックを出さなかったわけです。

 なるほど。エニックスはファミマガに仁義を通したわけですね!



◆メダパニ広告について◆

 しかしファミマガは、そんなエニックスの公式ガイドブックを挑発するような「メダパニ広告」を打っています。何を隠そうこれをつくったのは山本さんご本人なわけですが、「これはさすがにエニックスに怒られましたよね」と聞いたところ、意外にもエニックス側は了承していたんだとか。

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出典:ファミマガ1988年8月18日・9月2日号(NO.16)

 山本さんによると、契約期間が切れるタイミングで在庫一掃の意味も込めて、この広告を制作したとのことで、例の縦読みは完全なる洒落。エニックスにもそれは了承されており、むしろ「また、こんなことして~」と笑っていたということです。ファミマガとエニックスが良好な関係だったからこそできたことだったんですね。

 ただし、あの悪名高き攻略本「どらくえ3」の広告を、徳間の広告部が間違えて取ってきて載せてしまったときは、大騒ぎになりすぐに謝りに行ったんだとか、、、



 以上。番外編でした!

 今回、さあにん@山本直人さん(@sarnin)には「真実を伝えるために協力したい」と快く了承いただき、記事にさせていただくことができました。心から感謝申し上げます。まさか、私の竜王探しの旅のエンディングに、こんな素敵な出来事が待っていたとは。山梨県の横田くんにも感謝です(笑)



orotima-ku1.pngこれで本当に完



ドラクエ訴訟の原点「ハイスコア事件」をめぐる調査記録

(1) もうひとつの竜王伝説
(2) 公式ガイドブックの謎
(3) 消えたドラゴンロード
(4) マスコミの発禁報道
(5) そして都市伝説へ…
(6) 竜王説は生きていた
(7) 信じ抜いたすえの邂逅
(8) 堀井雄二のネタバレ観
(9) すべての伝説を越えて
(番外編) ファミマガ編集長の視点
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コメント

追記ネタにできるのは、SNS時代って感じだけど。

当時のお互いわかってるからこそのやり取りはSNS時代だとできたんだろうか。顔つき合わせてが当たり前の時代だけに。

逆にSNS時代でなかったからこそ、ゲーム雑誌が乱立していたわけで、そこはパウリの排他原理が働いているのですよ。きっと。

オロチ様はじめまして。
ドラクエwiki見たら
ファミマガがDQ3の「へんげのつえ」を使って
エルフの隠れ里で買い物できる裏技を掲載して
時期的にバレるのが早すぎた為に
後日謝罪文を載せたらしいのですが…
この事も編集長様にあったら聞いてみてください。
お願いします。

まずは私の方でしらべてみますね。情報ありがとうございます!

はじめまして。大変興味深い記事で楽しく読ませていただきました。
ただ一点、「マダラ」の攻略記事は一度だけファミマガ本誌に掲載されていましたよ。次号の広告でなぜかコナミ社の謝罪文がありましたが(笑)

はじめまして。教えていただきありがとうございます。探してみます。

ファミマガの「MADARA」は1990年9号に6ページの記事(っぽい広告)が掲載される
→翌号でコナミの「あの広告は編集記事と酷似しており誤解を招く恐れがありました」という文が掲載されるという流れですね
あれは「MADARA」の記事を載せない事になってるのを逆手に取って、
編集部とコナミが確信犯的に作ったんじゃないかなと感じます。

実際に記事ではメーカー名や価格、ROM内容とかまで他のソフトと同じように紹介されている
ようにしか見えないんですが、その号の目次や索引を見るとMADARAの文字がなかったり、
記事の最後に「ファミリーコンピュータ・ファミコンは任天堂の商標です」とあったり
良く見ると広告であると読み取れる部分もちゃんとあったりします。
なので敢えて実際の記事と同様の形で作成して、次の号でお詫び的な文章を
掲載するのまで話し合いの上でやったんじゃないのかなと…。

ウル技とかRPG攻略大全には普通に掲載されていたので、
MADARAのゲーム自体がファミマガでNGだった訳ではないんですよね。
このへん今見ても面白かったです。

補足情報ありがとうございます。まだ見てないので、探してみますね。

徳間書店 2の攻略本

徳間書店 2の攻略本はラスボス シドーは掲載されていません(厳密に言うとモザイクをかけています)。

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