◆おじさんが主人公◆ 今、私は「こちゲー」上下巻を読んでおります。
週刊少年ジャンプで1976年から2016年まで連載されていた長寿漫画「こち亀」に出てきたゲーム回を題材にしたエッセイ集ですね。文はファミコン神拳のカルロスでおなじみの、とみさわ昭仁さんですよ。単行本サイズですが、こち亀のゲーム回を寄せ集めた「よりぬき集」ではございません。そもそもおじさんが主人公の漫画が40年も少年誌に連載されていたなんて、とんでもない偉業ですよ。しかも秋本先生は1度も原稿を落とさなかったらしいです。いい意味で頭おかしいですよね(笑)




こち亀が連載開始した1976年っていうとあの、世にも不思議なコントローラが搭載されていることで有名な
「チャンネルF」が発売された年ですよ。主人公の両さんこと両津勘吉は35歳という設定だったので、現在70代後半ということになります。でも、当初こそ物語が進むにつれてちゃんと年をとっていたそうですが、そのうち両さんの年齢は35歳で固定されてしまいました。漫画の主人公が年を取らないという「サザエさん時空」ってやつですね。
でも。35歳っていうとジャンプ購読層であるティーンから見たら立派なおじさんですよ。逆に言えばおじさんだったからこそ、40年も続けられたのかもしれません。だってゲーム界にも「おじさんが主人公」の長寿シリーズがあるじゃないですか。
そう。
世界の
スーパーマリオですよ!
ヒゲがマリオの象徴ならば、両さんにとっての象徴はのあの特徴的なつながり眉毛ですよね。つまり主人公をおじさんにして、顔面の毛に何らかの特徴をもたせればご長寿コンテンツになるということですよ。これは普通に大発見じゃないですか?
たった2例ですけど(笑)
◆ジャンプ黄金期◆ こち亀は1976年から2016年まで連載されていたわけですから、当然、ジャンプ黄金期を経験していたわけであります。両さんは『ファミコンジャンプ2』の最強の7人のなかのひとりでしたからね。

そもそもジャンプ黄金期とは「北斗の拳」の連載が開始された1983年頃から「スラムダンク」の連載が終了した1996年頃までとされています。1983年といえば、そう。
ファミコンが発売された年ですよ。正直、ぜんぜん意識してなかったのですが「ジャンプ黄金世代」と「ファミコン世代」って、ほぼカブってるんですよね。
私オロチはファミコンが発売された年に小学1年生になってますから、まさに少年時代がジャンプ黄金期だったわけです。ただし厳密にいうと私がジャンプを読み始めたのは中学生になってからなので、バイブルと崇める「キン肉マン」の連載はとっくに終わってたし、ちょうど「スラムダンク」の連載がはじまっていたので、周りの男子たちが急にバスケなんて始めたりしてね。そう考えると、私にとってジャンプ黄金期に連載されていた漫画の主人公たちは、
ほぼ全員“年上”だったんですよね。改めて当時を振り返ってみても、剣桃太郎、承太郎、ターちゃん、太尊、ケンシロウ、星矢、一堂零、ぬけ作先生、桜木花道、幽助、全員年上でした。
それがいつしかジャンプを読まなくなってね。社会人になって。20代の頃の私は名古屋で独り暮らしをしていたわけですけど、あるとき、歯医者さんの待合室で久々にジャンプを開いたんですよ。そしたら、いつの間にか、主人公たちが全員、年下になってまして。あの、何とも言えない隔世の感は今でも忘れられません。大人になるってことは“ジャンプの主人公が年下になること”なのかなあ、なんて虫歯が身に沁みたりしてね、、、
◆ギークな趣味を極めている大人◆ でも、そんなジャンプ主人公のなかで唯一”年上のおっさん”がひとりだけいたのです。それが両さんですよ。
彼は少年コミック誌には似つかわしくないギャンブル、たばこ、酒といったものを嗜(たしな)んでたし、その一方で、プラモデルやゲームといったギークな趣味なんかも極めてるじゃないですか。よくホビー対決なんかで「お前たちとは財力が違う」とか言って、子どもたちを容赦なく叩きのめしてましたよね。私がジャンプ本誌を読んでいた頃はちょうどホビー漫画みたいなテイストが濃かった時期だったので、余計、そんなイメージが強かったんだと思います。言うなれば、両さんは私のなかで
「ギークな所ジョージ」なんですよね。

所さんは年齢的に我々の親世代ですから、だいぶ年上なんですけど、アメ車とかスカジャンとか、ちょっと世代がうえのホビーを極めてるじゃないですか。我々よりうえの世代が憧れる典型的な趣味人なんですよね。両さんもそんなずっとイメージでした。
こちゲーによると、両さんはまずインベーダーゲームにハマったらしいです。もうこの時点で絶対に年上ですよね。でも、その後はやっぱり両さんでした。彼は『ドンキーコング』、『ディグダグ』などアーケードゲーム、クレーンゲーム、ファミコンを初めとするコンシューマゲーム、ギャルゲー、格ゲー、音ゲー、オンラインゲー、たまごっちなどにハマりながらも、『ポケモン』、『電車でGO』、『メイドインワリオ』、『モンスターファーム』といったファミコンより後の世代のタイトル、はたまた『艦これ』といった2010年代のコンテンツまで節操なく手を出しまくっているんですよね。
いや、これは別に悪いことじゃないんですよ。両さんは永遠に35歳という設定なので、普通に年をとってしまう我々は、いつか彼に追いつき、追い越してしまうんです。時は戻せない。でも不思議なことに私のなかの
「ギークな趣味を極めている大人」というイメージは変わらないんですよね。その理由が「こちゲー」の巻末に収録されている秋本先生へのインタビュー記事でわかったんですよ。なんのことはない。先生自身がゲーマーだったんですよね。秋本先生はインベーダーゲーム(アタリVCS)からはじまって、ファミコン、PCエンジン、メガドライブからプレステ4に至るまで、ゲーム機を買い続けておられるそうで、『スマブラ』や『にとうしんでん』、『スペースチャンネル5』などがお気に入りなんだとか。
秋本先生自身がギークな趣味を極めている大人だったわけです。
もう、こうなったら、先生はVtuberに興味あるみたいですし、両さんの皮をかぶってゲーム実況とかやってほしいですよね。きっと登録者数がすごいことなりますよ。勤務中っていう設定で、毎回、ラスボスを倒す直前に、部長に怒られて終わるっていうね(笑)
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