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マリオの名前の由来について最古の公式見解フィルムが発掘される!!(解説あり)

◆3つの検証ポイント◆

 前回の記事で私は「マリオの名前の由来」にまつわるエピソードを検証するためのポイントを3つ挙げました。すなわち以下であります。

1.会議中怒鳴り込んで来たか否か
2.由来になった人物の役職(肩書き)
3.マリオに似ていたか否か

 可能な限り調査できる資料をかたっぱしから調べ上げた結果、資料によって1~3に言及していたり一部しか言及してなかったり、はたまた言及していても内容が違ったりと諸説入り乱れているのが現状だったのです。

 時系列に並べた表がこちら。

marioyurai002.jpg
 出典:任天堂「マリオの名前の由来」をめぐる嘘と真実

 この表を見ると初めて「倉庫オーナー説」を唱えたのはアメリカの書籍「ゲームオーバー」であり、公式アナウンスはむしろ長いあいだ「倉庫事務所の管理人」だの「倉庫係のおじさん」だの「ビルの管理人」だの表現がブレブレだったことが一目でわかります。

 公式アナウンスがやっと「倉庫オーナー説」へ合流したのは2010年代なのでした。このことから見えてくるのは「公式はマリオの由来についてそこまで厳密に扱っていなかった」という事実です。それは今まで雑誌媒体や海外のニュースメディアなどで「マリオの名前の由来」を尋ねられた宮本茂氏の態度が、ずっと一貫して曖昧(あいまい)だったことからも我々ファンは何となくわかっていたことでしょう。



◆公式見解=真実とは限らない◆

 そして2017年6月21日付の「Nikkei Style」のインタビュー記事でNOA創業メンバーのドン・ジェームス氏が語った内容が、おそらく一番真実に近いのではないかと考えます。

「確かに、髭を生やしていた。イタリア人という設定も同じだ。でも実は、ほとんど誰もセガリさんの姿を見たことはないんだ」会ったこともなかったのかと問うと、「そう、ほとんど誰も。そのミステリアスな存在が面白くて、ジャンプマンにマリオと名付けたんだ」
モデルとなったのは確かだが、決して似ているわけではなくあくまでもルーツ。ただ、それをそのままキャラクターの名前にしてしまうところに彼らの遊び心が伺える。

 それならそれでいいのですよ。

E5aPLt8VEAUhfCi0.jpg

 たとえばパックマンが食べかけのピザから着想を得たキャラクターというピザ説なんかも、今では岩谷徹氏ご本人も開発エピソードとして語っておられますが、2017年2月2日付のねとらぼのインタビュー記事で遠藤雅伸氏に「後付けだった」と暴露されています。

 この「ホントのこと」というのは、メディアやネットが育てた伝説に対し、当事者としての一次情報を残して欲しいということです。例えばゲーム「パックマン」の開発に際して「開発者はピザを食べたときにパックマンの形を考え付いた」という伝説がありますが、これはリップサービス的に後から付けられたものです。
 本来は黄色という色がゲーム画面の中で一番大きく見える色であり、また丸い形が一番存在感を示せる形状ということ、従って「黄色い丸」が当時のビデオゲームにおいて最もプレゼンテーションを発揮するという論理的思考の結果です。
 そういう形状のキャラに「食べる」という動作のアニメーションをさせると、それがたまたまピザに似ていた。という話をメディアが膨らまして「ピザから思い付いた」と言い出し、エピソードとして面白いので一般化し、もはや否定するのも大人げない状況になっているわけです。

 いや、ホント。
 大人げないっす。(笑)

 ぶっちゃけた話、名づけエピソードなんて別にウソでもいいんですよ。いや、正確に言うならばご本人がそう言ってるならそれが公式見解でいいのです。少し盛られていたほうが夢があるじゃないですか。ゲームには夢があって欲しいんですよね。少なくとも顔を真っ赤にして否定するようなことじゃない。

 そういう私もマリオの名前の由来を調べているのは純然たる知的好奇心の赴くままなのであって、調べること自体が楽しいから調べているに過ぎないのですから。




◆ついに見つかった動画◆

 ということで本題に参りましょう。今回は前回の記事で不明だったテレビ番組「ファミン子全員集合」で任天堂の三木研次氏が語ったとされる最古の公式見解が見つかったので紹介したいと思います。動画をアップしていたのは任天堂マニアの@JohnAndersen21氏。どうやら私が探していたYoutube(削除済)からの転載のようですね。

 果たして三木氏はなんといっていたのでしょうか!
 こちら↓



 動画は中村有志のパントマイムから始まります。
 あいかわらず軽妙な動き。(笑)

miki001001.jpg

 犬の鳴き声は合成でしょうか?

miki001002.jpg

 なぜか慌て気味で任天堂へ入ってきた中村氏。
 開口一番「この子のパパを知りませんか?」って絶対やばいやつだろ。(笑)

 しかし受付の女性は毅然とした態度で「開発第二部のほうにいらっしゃいますよ」対応するのでした。

miki001001.jpg

 ここでまた猿芝居が始まります。

 なぜか動かなくなったマリオ君が受付の女性の体へ引き付けられたところで、何を思ったか「名前と電話番号おしえて」とナンパを試みる中村氏。1980年代の軽薄な空気感がここでも感じられますね。

miki001002.jpg

 しかしあっけなく断られこの表情である。

 ここから中村氏が開発第二部を探しまわる早送り演出がしばらく入って「ついに見つけた!」みたいなノリで開発第二部が見つかります。

miki001002.jpg

 「マリオ、やっとお父さんに会えるぞ!」と大袈裟に言い聞かせる中村氏。幼少期に生き別れたという設定でもあるのでしょうか......。

 そして中村氏は部屋に入るなり、そこにたまたまいた社員の男性に「お父さん!」と抱きつくのであった。

miki001002.jpg

 しかし男性から「私はお父さんではありません」と言われてしまい「ええー?」と驚く中村氏。

 いやいや、こっちが「ええー?」だよ。(笑)

miki001002.jpg

 そんなこんなでようやく中村氏は「マリオのお父さん」という触れ込みの任天堂・三木健次氏へ辿り着くことができたのでした。



◆質問内容◆

 ここからは質問の内容を要約引用させていただきましょう。

miki001002.jpg
中村:
マリオは子どもですか。おじさんですか。

三木;
おじさんです。

中村:
やっぱりおじさんなんですか!
おじさんのくせにお父さんなんか探してコノヤロウ。(泣)

 いや、べつにええやん。(笑)

 そしてすぐに本命の質問がなされます。

中村:
マリオの名前の由来は?

三木;
マリオという名前はなかったのですが、アメリカ支社にマリオという名前のひとがいまして、その方が本当にマリオのゲームが上手だったので、そのひとの名前から自然とマリオになったと、そういうわけなんです。

 な、なんと!?
 三木氏の口から飛び出たマリオの由来になった人物は以下の通り。

 1.会議中に怒鳴り込みに来ることなく
 2.倉庫のオーナーでもなく
 3.マリオに似てすらいなかった

 任天堂の最古の公式見解は「アメリカ支社にマリオという社員?がいてそのひとがマリオのゲームが上手だった」という、これまで調査したどの資料ともまったく異なる新説だったのであります!

miki001009.jpg

 ただ、証言する三木氏がたびたび下を向く動作が気になりました。

 おそらくカンペを読んでいたのでしょう。それは第三者が用意したものなのか、三木氏本人がしたためたものなのかはわかりませんでした。



◆まとめ◆

 フタを開けてみればマリオの名前の由来に関する最古の証言は、今までまったく聞いたことないものだったわけですが、そもそもこの命名エピソードがアメリカ支社(NOA)で起こった出来事だったことを忘れてはいけません。いくら三木氏が任天堂社員であり、あまつさえマリオのお父さんであったとしても伝聞には変わりないのです。

 それは当初ブレブレだった任天堂の公式見解が時代が経つにつれて「倉庫オーナー説」へ一本化していったことと無関係ではないでしょう。さらに2018年11月に各メディアがいっせいに報じたマリオ・セガール氏の訃報が「倉庫オーナー説」を世間へ広く伝えたことの影響も無視できません。それまで大手新聞社などゲーム系以外のマスコミが「マリオの名前の由来」について言及すること自体が、ほとんどなかったのですから。

 したがってこのまま「倉庫オーナー説」が公式見解に定着するのは確実とみられます。

 🐍🐍🐍

 ファミコンの総数問題もそうなんですけど、私は「真実は真実、公式見解は公式見解」という立場です。したがって公式が「これだ!」と言ったならば真実はどうであれそれでいいと考えます。逆にいえばファミコンソフトの総数のように公式見解でも真実でもない1252本説がさも既成事実のように広まっている現状は好ましくないと思っておりますけども()、どちらにせよ真実を軽視しているわけではありません。

 大切なのは公式見解に敬意を払いつつ、真実は真実として調査記録していくことなのでしょう。




orotima-ku1.pngこれより古い資料があったら教えてください!!



情報提供:@gosokkyu さん
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コメント

いつも楽しく拝見しております。
インタビューも見ましたが、以下、明言はされていないものの、否定もされていなかったですよー?
任天堂にゲームが上手い人がいた。というだけで、もしかしたら、会議中にどなり込んできたかもしれないし、倉庫のオーナーをしてたかもしれないし、似ていたかもしれないし。(笑)

> 三木氏の口から飛び出たマリオの由来になった人物は以下の通り。

 1.会議中に怒鳴り込みに来ることなく
 2.倉庫のオーナーでもなく
 3.マリオに似てすらいなかった

たしかにそうですねえ。
ただそのあたりは考えてなかったわけではなく、1.2については「アメリカの支社のほうにマリオという方が本当にいまして」という言い方からして倉庫オーナーとは考えにくく、倉庫オーナーでなかったとしたら会議中に怒鳴り込んでくる理由もないのでそう判断しました。3についてはたしかに似てるとも似てないとも言ってませんが、その代わりの「ゲームが上手い」というエピソードが3に相当すると判断しました。要するに私が冒頭で示した1,2,3とはもっと分解していうと以下のようになると考えます。

1きっかけ
2関係性
3命名理由

ありがとうございます。
おっしゃるとおり可能性としては倉庫のオーナー説等は低くなりますよね。
話は少し脱線致しますが、マリオブラザーズっていうネーミングには、NOAの人たちのツッコミはなかったんですかね?
おかげで、正式名称はマリオ=マリオみたいですし。
マリオブラザーズのタイトルに関してのインタビューとかはないのでしょうかね?ちょっと気になりました。

マリオブラザーズというネーミングに関して、名前なのにブラザーズなのはおかしいからきっと苗字だろうという指摘は海外では古くからありますけど、NOA内部から出てたという話は聞いたことないです。
当然、出ていたとは思うんですけどねえ。

海外のインタビュー記事で映画化した際にマリオ=マリオにした。って書いてありましたね。
(ブルーレイのパッケージにもマリオ=マリオって書いてありました(笑))
なんか、30周年くらいの時にも聞いた気がします。

宮本さんがおっしゃるにはミッキーマウスに苗字が無いように、マリオはマリオであり、ルイージはルイージであるとのことらしいです。

「最古の公式見解フィルムが発掘される!!」と書かれると、なんか大昔の縄文土器みたいな印象を受けますが、私この番組リアルタイムで観てましたよ・・(汗)

ビデオに撮って新作紹介の「魔界村」の部分を巻き戻して何度も何度も繰り返し観てました。(雑誌情報がメインだった当時は発売前のソフトが動いてる状態で見れるのは、今とは比べ物にならない位ありがたかったので)

3年前の春頃、ユーチューブでこの番組がコーナーごとに分けて公開されてた時、今回の三木氏のインタビューも
何の気なしに観てましたが、まさかこれほど歴史的価値のある証言が含まれていたとは思いもしませんでしたね(汗)同じ動画でも観る人が観ると全然価値が違ってくるんだなぁ・・と、痛感しました。

途中からだけど見てたな。おじいちゃんがテレビでやってるよって教えてくれた気がする。

皆さん、リアルタイムで見てたんですねえ。

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