突然ですがクイズです。
私オロチは熱心に何を見ているのでしょうか?

答えはカセット裏面上部の
「KONAMI」のロゴマークでした~!。
コナミ形状のファミコンカセットには、裏面のロゴマークスペースに4種類のバージョン違いがあって、これはそれを見ていたときの写真です。まあ、ぶっちゃけて言うと「そういう設定の写真」なんですけどね。だって、実際はこんな悠長に見比べてる時間なんて1秒もなかったんですから!
………………。
…………。
……。
◆すべてのはじまり◆ 「ファミコンカセットが大量にあるので遊びに来ないかい?」
きっかけは一通のDMでした。送り主は日本レトロゲーム協会(JARGA)代表の石井豊さんです。石井さんとは、2017年9月にJARGA主催のレトロゲーム資料展示会を見に行ったとき知り合い、それ以来、何かと声をかけてくださるようになったのです。三度の飯よりファミコン好きな私オロチがそんな誘いを断るわけもございません。ただ、このときは
「なにか面白いもんが見つかったらいいな」くらいの軽い気持ちだったと言っておきましょう……。
※JARGA公式サイト さっそく私は
ピクニック感覚でコレクター仲間の石之丞さんをさそい、胸をおどらせながら関西方面某所にある会場へ向ったのです。
でも、いざ到着してみると……。
そこにはまったく予想だにしない光景が広がっていました。
バ~ン!

その数、およそ2万6000本!
いやいや、どこがピクニックやねんっ!!!(笑)
こちらのファミコンカセットは世の中にレトロゲームブームが到来するずっと前に、大阪方面で廃棄されていたものを、石井さんが独自ルートで回収したもの(私物)なんだとか。とんでもない量を前に、私オロチと石之丞さんは、ただただ立ち尽くすのみであります。だって、ファミコンカセットが大量にあるって、普通、1000本とか2000本くらいを想像するじゃないですか。それが2万6000本だったんですから、ピクニックだと思ってラフな格好で出かけたら
チョモランマ登山だったみたなもんですよ。こりゃあ、全部見るのに2、3日かかるぞ……。途方に暮れていたそのとき!?
「ファミコン三銃士を連れてきたよ」
※イメージ画像 そんな幻聴とともに、ミキさん(
そうさめも)、藤田さん、泉さんという頼もしい3人の助っ人が颯爽と登場したのでした。なんでも、我々が作業をすることを聞きつけて、わざわざお手伝いに駆けつけてくれたんだとか。おお、なんという銀河の三人。まさにファミコン版のドリームズカムトゥルーやっ!
いやホントに。ただ、カセットの裏に貼られているショップシールを探しに来ただけの、こんな、頭のおかしいマニアに付き合ってくださるなんて恐縮で仕方ありませんでした。


名刺代わりに私の著書「ファミコンショップシールの世界」をお渡ししたのは言うまでもありません。つまり今回の目的はあくまでも「ショップシール探し」であって、ファミコンカセット検証ではなかったんですけど、どうせ2万6000本も見るなら「何かやろう」ってことで、何となく検証みたいなことをやりましたってのが、実際のところであります。そんな軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。
2万6000本のファミコンカセットを検証したらわかった18の事実!

前半戦。
◆検証の仕方◆ 華々しく始めちゃったものの、ほら、私が、ピクニック感覚で来ちゃったもんですから、もう、まったくのノープランだったわけですよ。

ファミコンカセットは1つのダンボールに200~250本くらい入っておりまして、ナムコやバンダイなど独自形状のものはメーカー別。任天堂ノーマル型のものは、あいうえお順に入っておりました。我々は作戦を練った結果、以下のような流れ作業をすることになったのです。
皆がダンボールからファミカセを床に並べる
↓
私オロチがそれをが見分ける
↓
気になったものをピックアップ
↓
他のものは再びダンボールへしまう
こうして、私は、ひたすら床に並べられるファミコンカセットを、ひたすら見分けるという、
わけのわからんギネス記録の挑戦者みたいなポジションで、頑張ることになったわけであります。
※オロチが検証する姿(手のみ) 幸いなことに、私は
同時に4本のファミコンカセットを1秒以内に見分けることができる能力をもっているので(なんだそのしょうもない能力は)、床に4列に並べていただければ30秒で100本を検証することができました。それは1時間でおよそ1万2000本を見分けることができるという計算になるんですね。な~んだ、並べる手間を考慮しても3時間あれば全部終わるじゃん。おいおい、楽勝かよ!(笑)
そんなふうに考えていた時期が私にもありました……。
実際はそう簡単に行くわけないのです。腰がバッキバキになる。手が震える。目の焦点が合わなくなるなどの症状を発しながら「とんでもなく大変な思いをした」とだけ言っておきましょう。いくら理論上は可能だからと言って、人間はこんな
道路に穴を掘ってひたすら埋め直すような作業を延々とやっていられないのですよ。
◆子ガメカセット◆ ともかく検証は始まりました。
もはや、前に進むしかありません。
すると間もなくして我々はサンソフトの『なんてったって!!ベースボール』の一群に遭遇しました。そこでちょっとしたサプライズが起こったのです。

なんと、『なんてったって!!ベースボール』の中から子ガメカセットが出てきたのです。しかもレアなほうの『`91開幕編』ではないですか。裸でも5万超えで取引されている鬼アイテムですよ。
昔はリサイクルショップとかでよくあったんです。
親ガメに子ガメカセットが刺さったままというパターン。かつてSFC版『鮫亀』のダブルカセットに非売品の天外魔境バージョンが刺さっていたという報告もありました。現在でもワンチャンあるかもしれませんね!
事実 その1
『なんてったって!!ベースボール』には
たまに子ガメカセットが刺さってる。
はい。1個目の事実がこれです。(笑)
こんな感じで18個やっていくんで、最後までお付き合いください。
ちなみに、『`91開幕編』はその後、さらに2本発見しました。出たな。プレミア物が普通にゴロゴロ出てきて価値観ようわからんなるやつ。でも残念ながら私オロチは世間一般的にもてはやされているプレミア物には一切興味ないので問題ありません。探し求めているものはひたすらショップシールのみという生粋の変態なのですから!(やかましいわ)
◆ロックマンゾーン◆ 検証がはじまって30分くらいたった頃、我々はいつの間にかロックマン領域に突入しておりました。

すると私はあることに気が付いたのです。
ロックマンシリーズ、上面に落書きされている率、多くね?
事実 その2
ロックマンシリーズのカセット
上面にタイトル名が書いてありがち。
あくまでも推測になりますが、ロックマンシリーズは当時、喫茶店とか床屋とか不特定多数の人間にファミコンをやらせるような場所に置かれたファミコンで人気だったんじゃないかな。ステージセレクトで好きなボスから始められますし。知らんけど。
ちなみにここで新種のショップシールを発見しました。

右上『テニス』の裏ラベルに注目してください。一見、セタの『内藤九段将棋秘伝』の裏ラベルにそっくりなんですけど、そこにはソフトショップ・アイランドの文字が刻まれているではないですか。そう、これはショップシールなんですよ。こんなもん、私でなかったら見逃してたでしょうよ。(笑)
ちなみに下はブルートのセタ風ラベルです。
◆にじみブラザーズ◆ つづいて我々はナムコ領域へ突入しました。皆さん『クインティ』はご存知ですよね。ポケモンの生みの親である田尻智さんがアマチュア時代にナムコに持ち込んだというヤンデレ妹ゲームですよ。(
※)

そんな『クインティ』のファミコンカセットには決定的な特徴があります。それは、なぜか裏シールが必ず
“にじんでいること”なんですよね。理由はわからないんですけど、私が今までのコレクター人生で出会った『クインティ』は必ずにじんでおりました。果たしては裏シールがにじんでない『クインティ』なんて存在するのでしょうか……!?
検証した結果がこちらです。

事実 その3
裏シールがにじんでない
『クインティ』など存在しない。
(悪魔の証明)
30本やそこらで存在しないとは大きく出たなって思ったなら、お願いだから、にじんでない『クインティ』を私のところへ持ってきてください。10万で買いますよ。10万で!(円とは言ってない)
これ、不思議なのはナムコのカセットで唯一『クインティ』だけなところなんですよね。他のタイトルでも、にじんでる個体はあるのですが、このように
全滅状態なのは『クインティ』だけなんです。なぜなんだぜ!?
※検証をつづける様子 にじみと言えば、、、
にじみブラザーズの元祖『ワイルドガンマン』と『ダックハント』を忘れてはいけません。もちろん検証しましたよ。こちらの場合は表シールなんですがね。ご覧の通りです。


事実 その4
『ワイルドガンマン』のにじみ率はおよそ80%。
事実 その5
『ダックハント』のにじみ率はおよそ50%。
そもそも『ワイルドガンマン』は『ダックハント』より数が少なったものの、にじみ率は高かったです。ついでに『ホーガンズアレイ』も30本くらい調べてみたんですが、そのなかでにじんでいたのはわずか1本でした。この光線銃リーズ三兄弟はそれぞれ1984年2月18日、同年4月21日、同年6月12日に発売されているのですが、なぜか最後の『ホーガンズアレイ』のシールだけ?にじみ耐性”をもっているのようなんですよね。
なぜなんだぜ!?
◆サンソフト後期作品の謎◆ 大変申し訳ないですが「にじみ」の話が続きます。(笑)
にじみといえばサンソフトの後期作品も大概なんですよね。1991~2年に発売されたサンソフト後期作品のなかでもロイヤリティタイトル(カセットがサンソフト独自形状のタイトル)の5作品『へべれけ』『ダイナマイトバットマン』『ギミック』『ドッジ弾平』『バーコードワールド』の
にじみっぷりと言ったら他の追随を許しません。


事実 その6
サンソフト後期のにじみっぷりがすごい
表ラベルについては、『ドッジ弾平』『ギミック』『バーコードワールド』の3本が顕著で、これらには
シールの内側部分が黒ずんでしまう現象が見られます。とくに白地の多い『バーコードワールド』はやばいですね。たとえ新品未使用品であろうとも「箱を開けたらすでに黒ずんでいた」という報告が多数受けております。ちょっとしたホラーですよね。ただ、不思議なことに『へべれけ』『ダイナマイトバットマン』には、そのような現象は見られません。
逆に
裏ラベルが赤くなる現象は『バーコードワールド』以外で多く見られます。つまりサンソフト後期5作品のうち『ドッジ弾平』と『ギミック』だけは表も裏もにじんでいる傾向が強いという“二重苦カセット”なのでした。今回の検証に『ギミック』は見つかりませんでしたので『ドッジ弾平』のほうを見てみましょう。

事実 その7
表ラベルが黒ずんでない
『ドッジ弾平』など存在しない。
(悪魔の証明)
検証の結果、『ドッジ弾平』の表ラベルは全滅でした。本日、二つ目の
悪魔の証明の誕生であります。

また、裏レベルは8本中6本が赤くにじんでいました。どなたか「いっそのこと、こっちも全滅しててほしかった」という心理現象の名前を教えてください。(笑)
原因については、いまだに解明はされてませんが、表ラベルに限っていうと、内側しかにじんでいないため、印刷方法やインクというよりも
「接着剤が悪さしてる説」が唱えられています。この現象は同じく丸いバンダイのラベルにも見られますよね。ちなみに『ドッジ弾平2』は大丈夫でした。不思議ですねえ。
不思議といえば、大阪市内を走っていたら変な信号機を見かけたんですよ。

すごい。4つ目の信号機だ!
テンションあがってきたイチローかよ。(笑
◆ドラゴンニンジャの謎◆ さて、検証を開始して3時間くらい経ったでしょうか……。
ここからはマジでガチの話。我々はいつしか再びナムコプリズムゾーン(←なんやねん)へ迷い込んでおりました。するとそこへ日本レトロゲーム協会のゲーム博士・キタヤマミウキさんから『ドラゴンニンジャ』について興味深い助言をいただいたのです。なんでも、『ドラゴンニンジャ』のラベルは
だいたい雑なんだそうです。
だいたい雑?

これか!
みなさん、わかりますか?
右上のやつがわかりやすいかな。そうなんです。ナムコの『ドラゴンニンジャ』は、なぜか知らないけど、だいたいラベルの貼り方が雑でズレてるんですよ。ためしに手持ちの『ドラゴンニンジャ』を調べてみたところ、おもっくそズレとるやないかい!(上の隙間が異常に空いてる)

事実 その8
『ドラゴンニンジャ』のラベルは
なぜかズレているやつが多い。
任天堂製やサードパーティ製に限らず、ファミコンカセットのラベル貼りは手作業だったと推測されます。おそらくですが、工場に犬が迷い込んで来たとか、すずめが窓に体当たりしてきたとか、何らかの理由で『ドラゴンニンジャ』のラベルがものすごい貼りにくい状況にあったことが推測されます。学校でよくあったトラブル!(笑)
なお、『ドラゴンンニンジャ』は表のみならず裏ラベルも上部が浮いちゃってる状態のものが多く見られました。
◆ナムコ工員の手癖◆ ここで私はひとつの仮説を立てたのです。『ドラゴンニンジャ』のラベルが雑ということは、その周辺のタイトルも怪しいんじゃないかと……。
すると、なんと『ドラゴンニンジャ』のひとつ前に発売されていたのが、前述の『クインティ』だったんですよね。これは偶然とは思えません。つまり両ソフトが発売された1989年6月~7月にかけてのタイトルが
全体的にラベルに異常がある可能性が高いという仮説が導き出されるのです。
さっそく調査してみました。こちら。

該当6本のなかでナムコノーマル型カセットについては『クインティ』以外、とくに異常は見られなかったものの、ナムコ大型カセットについて『ファミスタ'89』と『スプラッターハウス』にラベルの異常が見られたのです。
しかも両ソフトともに『ドラゴンニンジャ』のような雑な貼り方というよりも、「派手な剥(は)がれ方」といったほうがいいような状態です。


事実 その9
『スプラッターハウス』と
『ファミスタ'89』の表・裏ラベル
派手に剥がれがち。
ナムコ大型カセットはその形状の都合上、アールになった上部が剥がれやすくなってしまう理屈はわかるのですが、なぜか
決まって右側が剥がれているのがおもしろいですよね。もしかしたら工員が手張りする際に、ラベルの右側の上部を右手の指でつまんで貼っていたため、その部分だけ皮脂が付着して、経年劣化を促進させたことにより剥がれやすくなっているとか!?
ただし、だとしたら、なぜこの時期のナムコ作品にだけ、そのような傾向が見られるのか。やはり謎なんですね。この案件については改めて本格的に調査したいと思います。
🐍🐍🐍
1.『なんてったって!!ベースボール』には、たまに子ガメカセットが刺さってる
2.ロックマンシリーズのカセット、上面にタイトル名が書いてありがち
3.裏シールがにじんでない『クインティ』など存在しない。(悪魔の証明)
4.『ワイルドガンマン』のにじみ率はおよそ80%。
5.『ダックハント』のにじみ率はおよそ50%。
6.表ラベルが黒ずんでない『ドッジ弾平』など存在しない。(悪魔の証明)
7.『ドラゴンンニンジャ』のラベルは、なぜかズレているやつが多い
8.『スプラッターハウス』と『ファミスタ'89』の表・裏ラベル、派手に剥がれがち
ということで、前半戦が終了しました。
みんなー、ついてきてるかなー?(笑)
|  | 後半へつづく |
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2万6000本のファミコンカセットを検証したらわかった18の事実
・前半戦(1/2)
・後半戦(2/2)
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