覚えやすい名前でしょ?
ぼく、ポポポ……。
出典:ティンクル☆ポポ 誰も覚えてないっていうね(笑)
◆カービィ成功譚◆ いまや任天堂を代表をする人気キャラクターのひとり。カービィの記念すべき第一作目といえば、ゲームボーイ版『星のカービィ』でありますが、このゲームソフトは元々、HAL研究所が『ティンクル☆ポポ』という名で制作していました。

いや、制作どころではありません。
実際に広告を出し(冒頭の画像)、問屋から注文まで受けていたのです。そこへ「待った」をかけたのが任天堂でした。その時の様子を元HAL研で任天堂の社長でもあった岩田聡氏と、MOTHERシリーズで何かとHAL件と縁のあった糸井重里氏が2005年3月9日付「ほぼ日刊イトイ新聞」にて以下のように述懐しています。
岩田:
あのタイトルでゲームボーイのソフトとして出す予定でしたが、「もったいない」と宮本茂さんがおっしゃって、調整して、任天堂発売の『星のカービィ』に変わるんですね。
糸井:
じつはそのシーン、ぼくは見てるんです。宮本さんが「『ティンクルポポ』っていうのがあるんですけどね……ちょっといじるだけで、ものすごくおもしろくなるやつがあるんです。あれ発売を中止して作りなおしていいですか?」というところからはじまってるんですよね。
HAL研究所はこの作品を当初、『ティンクル☆ポポ』という名前で広告を出し、問屋から2万6000本もの注文まで取っていたのにも関わらず、任天堂はそれを中止させてまで作り直したそうです。『星のカービィ』という名前はそのとき決まったものなんだとか。ちなみに生みの親・桜井政博氏は「カービィ」という名前の由来について「諸説ありますが実際どーなんでしょう?」と述べています。
(※参照) 結局、任天堂によって作り直された『星のカービィ』は、全世界で累計500万本を売り上げる快挙を達成。人気シリーズとしての礎(いしずえ)を築いたのでした。この成功譚は
Wikipediaや
Fandomなどにまとめられており、ファンの間で語り草となっております。
◆任天堂の味付け◆ ただし、このよく知られた「カービィ成功譚」、しばしば
「任天堂が内容に手を加えて大ヒットさせた」とやや間違った解釈をしているファンを見かけることがあります。
そりゃそうですね。元社長の岩田氏や糸井氏までもが「作り直した」と証言しているのですから。そう思ってしまうのも無理はありません。そもそも、この話の源流となっているのは任天堂・山内博社長(当時)が1992年8月26日に開催されたファミコンスペースワールド'92(第4回初心会展示会)にて行った講演でした。山内氏は「コンピュータ・ゲーム市場の展望」というテーマで以下のような発言をしたのです。

現在不幸にも和議を申請中でありますハル研究所というのがありますけれども、このハル研究所さんに対しては、任天堂は全面的に支援協力をいたしまして、早急に再建を軌道に乗せる準備を進めておりますけれども、このハル研究所さんが今年の1月にお作りになったゲームボーイ用ソフトがございまして、そのゲームボーイ用ソフトは流通のかたがたに受注活動をされたんですけれども、わずかに2万6千本しか注文が集まらなかったわけでありまして、これに対して任天堂内部のゲーム評価部隊が、このソフトは大変うまくできているのに、これだけの数しか集まらないのはあまりにももったいないと、なんとかこれを売れるようにしてあげねばならないし、また任天堂はそうすべきだというように強く要請がありまして、ハル研究所さんと話し合いした結果、任天堂が味付けをする。
このソフトに味付けをして、名前を変える。これをやろうということで、そして、4月の末に名前を「星のカービイ」という名前に変えました。出典:「マイコンBASICマガジン」1992年11月号
この「味付け」という表現が絶妙でした。
◆製作者による反論◆ いかにも任天堂の手柄という風に語ったこの講演は関係者やファンの間で広まり、いつしか『星のカービイ』は任天堂がゲーム内容を調整して大ヒットさせたというやや大げさな話となっていったのです。しかしこのような風潮に対してまっこうから反論したのは他でもない。製作者である桜井政博氏でした。
彼は2011年3月に以下のようなtweetをしています。
「当時多くの人が勘違いしたこと」とハッキリおっしゃってますね。
氏は任天堂に感謝の言葉を口にしながらも、反論をつづけたました。
◆任天堂が行ったこと◆ それでは実際のところ、任天堂はいったい何をしたのでしょうか。桜井氏によると任天堂が行ったのは以下の三点のみだったといいます。(
出典)
・タイトルを変えた
・ROM容量が2倍になった
・それに伴い2周目を追加できた
なるほど。
任天堂はよく言われているような、ゲームバランスを調整したりとか、そういった内容に関わる部分には手を加えていなかったんですね。やはり「味付け」という表現が、誤解を生んだようです。
いずれにせよ、製作者本人が
「無能と言われたような気がした」とまで独白しているこのカービィ成功譚をさも本当のことのように、我々がドヤ顔で語るべきではないのは間違いありません。
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