◆謎のマリオトランプ◆ 先日、なんとなくメルカリを眺めていたら、謎のマリオトランプを発見。中央あたりに地味にマリオが描かれているのがわかるだろうか。任天堂マニアのはしくれとして非常に興味をそそられたので秒でゲットしてみたのだった。
新品未開封品である。表も裏も同じデザインのパッケージだ。ちなみに中身も同じ絵柄らしい。任天堂表記が見当たらないのでオフィシャルグッズではないかもしれない。とりあえず刻印されていた文字を読んでみよう。
EVERYONE ENJOYS KRISWORLD (みんなで楽しむKRISWORLD) THE WROLD'S MOST ADVANCED INFLIGHT ENTERTAINMENT SYSTEM (世界で最も先進的な機内エンターテイメントシステム) 要領を得ない。
すると下側面に「SINGAPORE AIRLINES」の文字を発見。どうやらこのトランプはシンガポール航空の機内サービス「KRISWORLD」が任天堂と提携していた頃に発行された
搭乗記念品 であることが判明したのだった。
◆奇妙なCM◆ こちらのサイト(
※ )によると、2004年の時点で10年以上前からシンガポール航空ではKRISWORLDにて任天堂のゲームを遊ぶことができたいうことから、少なくとも1990年代前半から、提携していたことが予想される。
液晶が安くなった2004年現在、エコノミークラスも個人用ディスプレーが無い航空会社の方が、少ないかも知れませんが約10年以上も前、まだCRTの価格が高く、液晶なんて高嶺の花だった時代になんと!エコノミークラスの私の席に付いていたのは「液晶画面」当時 エコノミークラスの席は狭くて苦痛、退屈が常識でしたが これに感動しました。 「クリスワールド」 当時流行っていた任天堂のスーパーマリオのゲームに夢中になり NRT-SINの6~7時間の飛行はあっと言う間でした。 さらに調査をすすめると……、
YoutubeにCM映像があがっていたのだ。
VIDEO こちらはシンガポール航空の公式チャンネルが8年前にアップロードしていた動画である。ただし、マリオモデルが64時代のものであることや、効果音やボイスがゲームキューブ版『スーパーマリオサンシャイン』のものであることを考慮すると、CM自体はもっと古いと見ていいだろう。
すると、海外メディア「Campaign Asia」が2003年4月4日に
「シンガポール航空が新しいマリオCMを制作した」 という主旨の記事を掲載していたことが判明。つまりこのマリオCMは2003年4月以降に放映されていたことがわかったのだ。
ゲームキューブ版『スーパーマリオサンシャイン』が2002年7月19日発売なので、年代的にはバッチリだ。
◆任天堂ゲートウェイシステム◆ ここで私は
「任天堂ゲートウェイシステム」 という聞き慣れないシステムの存在を知るのだった。
米国任天堂(NOA)は1993年頃から2000年代後半まで任天堂ゲートウェイシステム(Nintendo Gateway System)というサービスを展開していたという。任天堂といえば、1970年代に社運を賭けて展開したもののオイルショックのあおりを受けて大失敗したという「レーザークレーシステム」や、ファミコンの「ディスクシステム」、あるいは野村證券などの「ファミリーコンピュータネットワークシステム」、何なら海外ファミコン「NINTENDO ENTERTAINMENT SYSTEM(NES)」など、「○○システム」というネーミングが大好きなことは知っていたが、正直、ゲートウェイシステムは初耳だ。
かつて存在した公式サイトによると「Nintendo Gateway System」は以下のように説明されている。
ニンテンドーゲートウェイシステム™とは? 店頭で購入して持ち帰る従来の任天堂ゲーム機とは異なり、任天堂ゲートウェイシステムは、民間航空機やホテルで利用できる独自のハードウェア/ソフトウェアシステムです。任天堂はホストシステムを提供するのではなく、サービスプロバイダーのエンターテインメント配信システムに任天堂の技術を統合します。 現在、ニンテンドー・ゲートウェイ・システムには5つのバージョンがあり、ホテル業界向けにはスーパーファミコン、N64、ゲームキューブの構成が、航空会社向けにはスーパーファミコン、ゲームボーイカラー、ゲームボーイアドバンスの構成が提供されています。ニンテンドーゲートウェイシステムは、世界中の宿泊施設や航空会社が、何百万人もの旅行者が自宅で楽しんでいるのと同じ楽しさやエンタテインメントを、顧客に提供することを可能にします。 ニンテンドー・ゲートウェイ・システムは、1993年7月に航空会社向けに、同年12月に宿泊施設向けに発売されました。現在、「ニンテンドー・ゲートウェイ・システム」は、全世界で40,000席以上の航空座席と955,000室以上のホテルの客室に設置されています。(DeepL翻訳) このサービスは米国のノースウエスト航空をはじめ、bmi(英)、ヴァージンアトランティック航空(英)、アリタリア航空(伊)、エア・カナダ、クウェート航空、マレーシア航空、タイ国際航空、シンガポール航空、中国国際航空、全日本空輸などに展開していたとされる。ちなみに、今回の主役であるシンガポール航空のKrisworldとの提携は2012年頃まで続いており、最も長かったっぽい。
Nintendo Gateway Systemについての資料をまとめた海外サイト
Snes Central によると、本システムはゲームを開始するのに数分かかることもあり、機内でアナウンスがあった場合、ゲームがリスタートされるという不幸な欠点があったとのこと。
また、シアトルのNOA本社に併設された任天堂博物館には、少なくとも2002年には座席ごと展示されていたという。
出典:Nintendo Gateway controller from 1993 looks like wii controller . : retrogaming 電話のようなコントローラがマニア心をくすぐるではないか!
十字キーがすこし曲がっているのは、コントローラーの横幅が長いので、そのほうが操作しやすいためなのだろう。なんとなくファミコン通信アダプタのコントローラを思わせる造形にコントローラーマニアとしてはグッとくるね。
◆当時の資料◆ ここで、日本ビデオゲーム考古学会のナポりたん氏から導入当時の資料を提供いただいたので、詳しく見ていこう。マリオが飛ぶ!春麗も空を飛ぶ!と題されたこちらの記事によると、以下引用。
このシステムを利用してゲームを遊ぶには、液晶モニタわきのカードスロットにクレジットカードを通し、料金を先に支払う。(略)。遊びたいゲームのジャンルをえらび、いくつかのタイトルのなかから遊びたいゲームを選択するようになっているのだ。※ファミコン通信1994年3月号より どうやら、業務用ファミコンのような時間制だったようだ。
機内ハードといえばセガのMEGAJETが想起されるが、任天堂(NOA)がゲートウェイシステムを導入したのは、同時期だったらしい。
両社は、空の上でもバチバチやってたのね。(笑)
VIDEO さすがに日本で任天堂ゲートウェイシステムを解説しているサイトは存在しなかったので、海外マニアによるこちらの動画を貼っておこう。
◆不思議なアレンジ曲!?◆ ここからは余談(ネタ)なのだが……。
任天堂が2000年3月1日にリリースしたGBC専用ソフト『SUPER MARIO BROS. DX(スーパーマリオブラザーズデラックス)』は、海外では物理パッケージで販売されていたものの、日本ではニンテンドウパワー配信のみであった。そんな、ただでさえレアなこのソフトには
シンガポール航空バージョン が存在したらしいのである。
通常版と何が違うのかと言うと、地上BGMが途中から『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディングテーマだったことでもお馴染みのJAZZスタンダードナンバー「Fly Me To The Moon」に変わるのだという。百文一聴にしかず。Youtubeに動画があがっていたので聴いてみてほしい……。
こちら。(0:12~)
VIDEO えっ、えっ!?
フライミーになったあとも入るマリオっぽいズパッパパ♪っていう合いの手が、何とも絶妙で笑えるではないか。しかし結局、意味がわからないままだ。(笑)
出典:Ground Theme (Singapore Airlines Version) - Super Mario Bros. Deluxe | SiIvaGunner Wiki | Fandom ただしこれに関しては、マッシュアップアレンジされたものを大量にアップしている人物の動画とのことである。したがって
「第三者による創作の可能性が高い」 のでネタと思って楽しんでいただきたい。
◆まとめ◆ 謎のマリオトランプを調査していたら、まさかこんな魅力的なシステムに巡りあえるとは夢にも思わなかった。
今回のトランプは世間的には数百円の価値しかないかもしれないが、コレクションというのはだた入手して終わりというわけではなく、知的好奇心を満たす旅をすることで
さらに知見が広がっていく魔法の宝物 なんだなということを、改めて思った次第である。次はどこへ行こうかな……。
調査続行中。シンガポール航空に詳しいひとの情報求む!!
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