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元任天堂プランナー著「ついやってしまう体験」のつくりかたを読む

◆表紙の赤文字◆

 今宵は「ついやってしまう体験」のつくりかた。といういかにもビジネス書といったタイトルの本を紹介してみたい。


  2019年8月7日発行

 なぜ、そのような本をこのブログで紹介するのかというと、表紙をよく見てください。大きな「つ」の横に赤文字で小さく「元・任天堂企画開発者の発想法」と書いてあるでしょう。任天堂マニアのはしくれとして、ついつい手にとっちゃいました。(笑)

 著者の玉樹真一郎氏はBOOK著者紹介情報によると、プログラマーとして任天堂へ入社。その後、プランナーに転身してからは、全世界で1億台を売ったWiiの企画担当者として尽力。「Wiiのエバンジェリスト(伝道師)」「Wiiのプレゼンを最も数多くした男」などと呼ばれたた人物だそうです。恥ずかしながら初耳だったので調べてみたらところ、少なくともWikipediaに氏のページはなく、wiiなんちゃらっていう二つ名をググっても、氏のプロフィール文章しか出てきませんでした。是非とも、それ以外の出典を探し出したいところです。



 さて、本書の内容ですが「BOOK」データベースによると、「元・任天堂の企画開発者による、人の心をつかむ商品・サービスのつくりかた」とのことでした。しかし、実際に読んでみると、これが意外にも『スーパーマリオブラザーズ』や『ドラゴンクエスト』などファミコンのヒット作についてゲームデザインなどを解説したものになってたんですよ。表紙や目次にすらそんなことは一言も書いてなかったので、この本、発売から2年くらい経ってるんですけど、今までまったく気づきませんでした。

 なので、非常に興味深く読ませてもらったんですけど、途中からついついスイッチが入っちゃってね……。

 ※以下、ネタバレを含みます。




◆スーマリの場合◆

 まず本書は『スーパーマリオブラザーズ』について、素直そうな子どもたちを呼び集めスーマリの冒頭の画面を見せて「おもしろくなさそう?」とたずねてみたところ「おもしくなさそう」と言われたというエピソードを挙げ、なぜ世界一売れたゲームがおもしろくなそうなのかという命題をかかげました。

su-mari1-1.jpg

 実はこの時点で私は少し不穏な感じがしたのですが、ひとまず読み進めます。

 しかし本書は、この問いを考えるのは少々面倒とのことで、補助的な質問として「このゲームは何をしたら勝ちでしょうか」と問いかけてくるんですよね。え、今「勝ち」と言いましたか。スーマリにおける「勝ち」とはどんな概念でしょう。まず言葉の定義を共有したいところ。なんて思っていると、この質問に答えられる人間はほぼゼロなんて煽ってくるもんですから、だったら答えてやろうじぇねえか!って急にスイッチが入っちゃいました。もうここからはスミマセン。30年以上ファミコンをやり続けてる人間として忌憚なく、言いたいこと言わせてもらいますわ……。

・クッパを倒す
・ピーチ姫を助ける
・得点を取る
・コインを集める
・ワールドをすすめる

 すると本書は、上記のような一般的な答えをことごとく全否定し、さんざん回りくどい説明をつづけた挙げ句に、以下のように仰々しく答え合わせをしてきたのです。

もうおわかりでしょうか。いよいよ次のページ答えとなりますので、さいごに改めて問います。このゲームは何をしたら勝ちか。このゲームのいちばん大切なルールとは?

(次のページ)

こたえは「右に行く」。それこそ、このゲームのいちばん大切なルールです。

 質問が変わっとるやないかーいッッ!!!(笑)

 そもそもスーパーマリオに「勝ち」というワードがあまりにも唐突すぎて、私は当初「ゲームのことを知らない読者に合わせて、あえて我々ファミっ子がスーマリをやるときあまり意識しない「勝ち」というワードをぶっ込んだんだな」と好意的に解釈してたんですけど、本書は「勝ち」の定義をあいまいにしたまま話を進めてくるので、どうやって着地するつもりなんだろうなあと眺めていたら(←答える気ねえやん)、まさかの質問すり替え。「勝利条件を答える問い」から、いつの間にか「いちばん大切なルールを答える問い」に変わっていたんです。そりゃあ回答者ほぼゼロだわな。そしてスーマリの画面がおもしろくなさそうなのは「右に行く」というルールをプレイヤーへ伝えることだけにデザインを全振りしたからだと説明しました。勝ち云々どこいったん?

 さんざんもったいつけて出てきた答えがゲームニクスかよ……。


 参考:サイトウ・アキヒロ先生「ゲームニクス」を語る5 - みらいぶプラス/河合塾

 いや、ゲームニクス自体はタイヘン素晴らしい研究ですよ。本ブログでも注目されはじめた2010年頃から度々紹介させてもらってますし、マリオが右に云々のネタは今でも定期的にBUZZってますよね。でも、おかげで不穏な感じの正体がわかってしまいました。本書では何度も何度も読者へ回りくどい問いかけが投げかけられるのですが、それらのすべてが「答えありき」の疑問なんですよ。だから、いちいち「おもしろくなさそう」とか「勝ち」とかいう、我々のようなファミっ子やゲーマーには耳馴染みのない、え、なんでそう思ったん?というような唐突ワードが出てきててしまうんです。

 つまり本書はスーマリをやりまくって、血ヘドが出るまでやりまくった果てに脳裏に浮かんできた血ヘドの結晶みたいな疑問から”自ら”導き出した答えを披露しているんじゃなくて、ゲームニクスって立派な先行研究があって、もう既に答えが先にあるもんだから、その答えに合わせてでっち上げた疑問を投げかけてくるからチグハグなんだ。

 思い出してみてください。冒頭で本書は素直そうな子どもたちを呼び集め、『スーパーマリオブラザーズ』の画面を見せて「おもしろくなさそう?」とたずねているんですよ。普通なら「どう思う?」ってニュートラルな立場でたずねませんか。それに集めたのは、おそらく現代の子どもですよね。当時のファミっ子はゲーム画面だけでマリオの世界なんか判断しませんでした。友達やファミコン雑誌・攻略本・テレビなんかの情報でスーパーマリオのことなんて誰もが知ってましたからね。説明書やパッケージからも想像できますし。ああ、そういえば時代背景とか考慮すると込み入ってくるのでデザインだけに注目するって断ってましたっけ。でも『スーパーマリオブラザーズ』だけが世界で唯一、右に行くゲームじゃないですよね。その定義は本当にスーパーマリオにしか当てはまりませんか?

kuppaono01.jpg

 私は昨年「クッパの斧」考というエントリーで、ちょうどクッパの斧のことを深く考えたことがあったんですね。

 本書ではクッパの斧について「子どもが遊ぶにしては倒し方が地味なのに貴重なデータを費やしている」と指摘。デザイナーはこの倒し方をしたかったのではなく、この倒し方にするしかなかったと解説しています。図らずも私は「クッパの斧」考にてそのようなゲームニクス的な答えを「ファミっ子にはまったく関係ない話」とキッパリ拒絶させていただきましたよ。まるで今宵、この本を手に取ることを予言していたかのようにね。そもそも、クッパってファイアボールでも倒せますし。「この倒し方にするしかなかった」とは、どの世界のスーマリの話なのかな……?

 それにデザイナーって宮本さんのことですよね。なぜ名前を出さないのです?宮本さんは本当にそのようなことを仰ったのですか。もしかして「質問に答えられる人間はほぼゼロ」に宮本さんも含まれてるんじゃないでしょうね。(笑)




◆ドラクエの場合◆

 つづいて本書はファミコン版『ドラゴンクエスト』1~4について、なぜドラクエは眠気を我慢してでも遊び続けられるのでしょうかと読者に問いかけてきます。ほう、次の唐突ワードは「眠気」ですか……。

 すると、本ブログも過去に紹介したことのある初代ドラクエに関する有名なトリビアである「最初の王様の部屋がチュートリアルになっている」という話を取り上げ、ドラクエは「教科書的なゲーム」と賛美します。またまた唐突なワードが出てきましたね。きっとこの「教科書的」というワードが次の話題へのフックでしょう。そう思っていたら案の定「そんなドラクエにも非教科書的なものが登場します」ときたもんだ。いやいや、そもそも教科書的って言ったのそっちやんか!(笑)

 百歩譲ってドラクエが教科書的だったとして、定義を共有しましょうか。「教科書的」というのは当時のファミっ子たち(享受する側)に対してなのか、ゲーム制作者(提供する側)に対してなのか、両方なのか。どちらでもないのか。いったいどういう意味で言ってるのでしょう。しかし本書はとくに説明がないまま「非教科書的なもの=ぱふぱふ」と位置づけ、なぜ「ぱふぱふ」はゲームに組み込まれなければならないのかという命題について、真面目な考察を披露しはじめました。

 なるほど。あくまでも言葉の明確な定義を避け、回答者ほぼゼロを目指すスタイルは崩さず、ですか……。

tikubi33.jpg
 ※ファミ通1987年19号より

 私は今までこのブログで「なぜロトの剣は安いのか」など、ドラクエについて様々な切り口の考察記事を書いてきましたけど、これは正直やられたと白状します。まあファミコン世代の人間なら堀井さんがもともとギャルゲー好きなことや、ファミコン版『オホーツクに消ゆ』の制作においては「めぐみの乳首をピンクにするかしないかで他のスタッフと大議論になったエピソード」などを当時のファミコン雑誌なりで知っているので、疑問に思わなかったのかもしれません。あぶない水着とか、ゆうべはお楽しみでしたねとか、他にも小ネタはありますし、「ぱふぱふ」も堀井節のひとつとしか思えなかったのが正直なところ。まさか「組み込まれなければならなかった」要素だったとは……。

 本書では、そんな「ぱふぱふ」を特定のタイミングでしか効果を発揮しないイベントと定義。「ぱふぱふ」が性的イベントなのはタブー(非日常)だからという解釈に基づき、冒頭のチュートリアルからはじまった学習の連続による、つらい冒険のあとに適切なタイミングで非日常なイベントが発生することで疲れと飽きを癒やすという答えを披露しました。つまり「眠気」をふっとばすというわけですね。ああ、つながった。つながった。

 でも、そもそも「ぱふぱふ」って強制イベントでしたっけ。見過ごす人もいますよね。そこまで計算して配置されたイベントが任意なのは、なぜですか。それにタイミングは本当にそこしかないのでしょうか。すべてのタイミングを検証しましたか。「ぱふぱふ」の疲れと飽きを癒やす効果にはどの程度の実証性があるのでしょう。女性プレイヤーの存在は考慮されてますか。『5』以降の「ぱふぱふ」の存在が無視されている理由は。そもそも「ぱふぱふ」がタブー云々って堀井さんが仰ったことなんでしょうか?

 🐍🐍🐍

 タイヘン申し訳ないのですが、本書は終始、このような「唐突なワードが含まれた疑問→唐突なワードが含まれた疑問→唐突なワードが含まれた疑問(とにかく回りくどい)→答えありきの答え」という調子なもんですから、こちらの「?」が尽きないので、これ以降は飛ばし読みしてしまったことを白状します。でも最後にひとつだけ、どうしても気になった箇所をピックアップさせてください。

 本書は「どんなゲームが売れるのか」という命題について、以下のように断言するのです。

ゲームはおもしろいから遊ぶのではありません。
「つい思いついちゃった。ついやっちゃった」から遊ぶんです。

 うっせえわ!
 面白いから遊ぶんです。
 


orotima-ku1.pngいちいち一般的な答えを全否定せんと、何か主張できないんやろか。

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コメント

ストレス溜まりそうな本ですねw

こういう「意外だ」と思わせたくて取ってつけたような理由を、さも唯一の真実かのように解説する本は全く信用ならんです。

紹介されているゲームやったことない人なら「そうだったのか」と感心するのかもだけど
心の底からそれらのゲームの世界に浸って楽しんできた感覚からすると全く腑に落ちない。

ぱふぱふって元々は「ゆうてい」たちが登場するのと同じように当時の鳥山明作品を含めたジャンプっ子が共感できるセルフパロディ的なお遊びと思います。

そういえば「ぱふぱふ」ってドラゴンボール発祥でしたっけ。それを指摘するのを忘れてました。ありがとうございます!

私もとくに意味のない遊びだと思いますね。ある程度、配置は考えたと思いますが、強制イベントでもないですし、少なくとも本書が挙げているような理由を主張したいなら、圧倒的に検証が足りないと思います。もしくは本人に聞く!(笑

これ読破したんですよね…
クソゲークリアより苦行じゃなかったですか?

「Wiiのプレゼンを最も数多くした男」
この称号は普通に考えて不名誉なものですよ

自分の考えた企画が通ってしまえば、開発作業がひと段落するまで
次のプレゼンの機会はないですからね

11435 さん
最初のファミコンゲームの解説以外は飛ばし読みしました。

11436 さん
たしかにそうですね。「俺は禁煙が得意だぜ。もう10回以上成功してる」と同じ構文か。

Amazonレビュー高評価でおどろきました

にんじゃ さん

Amazonの評価が高くても、結局は自分で読んでみなくちゃわからないってことですね。

オロちゃんニュース!!
orotima-ku1.png Youtubeチャンネル「オロチレーベル」を開設しました!!
 失われたファミコン文化遺産「ショップシールの世界」2020年6月26日発売

Seach

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