◆貴重な映像◆ 先日弊ブログがアップした
海外メディアによる未編集の任天堂取材テープの記事が大反響となり、動画主である
Rare Mix-A-Lot Music氏から「もっと面白い動画があるよ」と声をかけていただいた。今回は氏がInternet Archiveへアップした動画の中から「Nintendo Factory NYTB12023Q.000」を紹介しよう。
ご本人から聞き出した情報によると、この映像は1990年9月7日に任天堂宇治小倉工場の作業の様子が撮影されている未編集の素材テープである。任天堂宇治小倉工場といえば先日、2024年に任天堂資料館としてリニューアルされることが発表されたばかり。さっそく拝見するとこれがまた
驚愕の内容ではないか!

なぜ驚いてるかというと、今まで任天堂の工場の様子をつたえる資料は皆無に等しかったからである。唯一確認されているものは1989年12月16日にPHP研究所から発行された書籍
「ファミコンゲームの主役たち」くらいだ。ちなみにこの書籍は数ある任天堂本のなかでもラスボス級のレア度を誇っている存在であるが、とある方法をつかえば簡単に手にとることが可能。興味あるひとは
こちらの記事をご覧いただきたい。
ということで、さっそく動画を見てみよう。
◆動作チェック作業◆ まず映像はカラーバーから始まる。

ここでいきなり重要な情報が提示されていた。
前回の記事でも追記したが動画主によると、この取材テープはアメリカの放送局ABC (the American Broadcast Company)のために収録された素材とのことである。

カラーバーが終わると女性工員がNESのコントローラを動作チェックしている様子が映し出された。ご存知ない方もいるかもしれないので説明しておくとファミコンの海外版であるNINTENDO ENTERTAIMENT SYSTEM(NES)は日本の工場でつくられていた歴としたメイドインジャパン製品なのだ。

この検査には
「NES Test Station」のような専用マシーンが使用されているかと思ったのだが、どうやら上蓋を取ったNES本体のようだ。しかしNESコントローラを検査するための専用カセットであるTest Cartridgeが刺さっているようには見えなかった。
つづいてNES本体とテレビをつなぐための「RF Switch(型番NES-003)」のチェックだ。モニター画面に『ドンキーコングJR.』や『クルクルランド』が映し出されている。


使用されているのは何らかの要素を切り替える3つのボタンが手前に配置されたDIY感あふれる専用マシーンだ。ものすごい手際の良さである。
◆Test Cartridgeについて◆ 『クルクルランド』といえば想起されるのは以前、弊ブログが取材した
謎のファミコンソフト『NESエージングカセット』の存在であろう。
※しぇぼる氏が所有するエージングカセット こちらのエージングカセットはアジア/香港版だったのだが、工場内にはこのようなTest Cartridgeが無数に存在したと思われる。ただしそれは徹底的に厳重管理されていたため流出すること滅多になかった。そのわりにGoogle検索するとわんさかでてくる理由は、中身のデータが海外の有志によって公開されており簡単にコピー品を作ることができる環境が整っているからである。なんならラベルの印刷データすら公開されている始末だ。
海外のコレクター界隈には「フェアユース」という概念があり、誰かが希少なソフトを入手するとすぐさまダンプされ共有データベースで公開されるという流れができているのだ。

※出典:グーグル画像検索の結果 したがってもはや海外のTest Cartridgeに関しては何が本物で何がフェイクなのかわかったもんじゃない。
ただ一長一短なのはそれこそこの映像もそのような概念のおかげで文化的資料としてアーカイブ化されているわけであり、我々はその恩恵に預かっているということを自覚するべきであろう。なお日本の著作権法にはフェアユースという概念は存在しない。
ここで映像は再びコントローラ検査の様子へ。

作業台の上に設置されたモニター画面に注目すると大きなコントローラを模した白いグラフィックが確認できる。一般的に知られているコントローラ検査ソフトはIコンとIIコンが2つ配されているデザインのものが多いため、画面にひとつだけというのは珍しい。
◆箱詰め出荷作業◆ 続いてはパッケージを組み立てる作業だろうか......

不鮮明な画質とあいまって熟練した素早い動作が特定を妨げているが、おそらくNESソフトのパッケージの組み立て作業だと思われる。ところどころに加湿器が置いてあるのが印象的だ。

からのダンボールのアップ!
側面に印刷されたこのMINDSCAPEは日本のファミコンではまったく馴染みがないものの、NESではいくつかのソフトを制作していたゲームメーカーだ。有名なところではファミコンでも出ている『ペーパーボーイ』のNES版がこのメーカーから出ている。
4:26からはパレットに積まれたダンボールの山がベルトコンベアに運ばれていく様子が映し出される。それらの山は熟練のドライバーが操作するフォークリフトによって流れるようにトラックの荷台へ積まれていく。

映像はここからフォークリフト作業が5分以上つづく。
よっぽどのフォークリフト好きでないのなら次へ進もう。
11:13から場面は再び検査作業の様子となった。


さきほどの検査と違ってNES本体をつかった本格的なもののようだ。おそらく製品をパッケージへおさめる前の最終チェックではあるまいか。しかも今度はハッキリとTest Cartridgeの存在が確認できる。映像を見ていると様々なタイプのものがあるようだ。
こちらはTest Cartridgeを走らせた様子。

まず白地に黒文字でチェック項目が並べられる。

次に斜めに描画されたアルファベットやカタカナが横へ流れていく。
まるで視力検査のようだ。

こちらはカラーテストだろうか。
12色のカラフルなタイルが点滅している。

その後、斜め上に流れる『ポパイ』のステージが登場。なぜ斜めに動いているのかは不明。

次にコントローラの入力チェックがオートマチックに展開される。

最後は上部にSOUND TESTの文字が浮かび上がった。内部で音声チェックをしているのかもしれない。
そしていよいよ箱詰め作業だ。


こちらのセットは1988年に北米限定で発売された「Nintendo Entertainment System Power Set」である。内容物はNES本体、コントローラ2本、Zapper(光線銃)、Power Pad(ファミリートレーナー)、そして『Super Mario Bros. + Duck Hunt』という公式in1ソフトとファミリートレーナー専用ソフト『World Class Track Meet』の豪華セットであった。
日本のファミコンと違ってNESはアメリカの国民性を考慮してこのようなセット販売に力を入れていたので、北米の売上ランキングでは『Duck Hunt』がスーマリに継ぐ2位に輝いている。

この快挙は『Duck Hunt』が
本体の同梱ソフトであったことが最大の原因なのだった。
その後、映像は工場の外へ。

さあ夢を乗せたトラックが工場を出発だ!
Youtubeと違って埋め込み表示がむつかしかったので
Internet Archiveから視聴していただければ幸いだ。
※大音量に注意!! なおRare Mix-A-Lot Music氏は他にも貴重な映像をInternet Archiveへ投稿しておられるので、それらも追々、紹介させてもらうつもりである。
|  | 任天堂資料館へ寄贈してもいいレベル。 |
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