◆ファミコン広告の世界◆ 古いファミコン雑誌に掲載された誌面広告をペラペラと眺めていると、実に色々な宣伝文句が謳われているのだけれども、時代性というやつなのかな、正直どれもこれも
大言壮語でまったくピンと来ないものが多いんだよね。笑。
これはファミコン広告の最大の特徴のひとつであり「魅力」でもあると思うのだ。
その原因はおそらくターゲットが若年層だったことに加えて、ファミコン業界自体が生まれたばかりのまったく新しい市場だったという
「圧倒的若さ」にあると筆者は考えている。何もかも未成熟で手探り状態だったからこそ輝きを放っていたと言い換えてみてもいいだろう。さらにそこへ80年代後半のバブリーな追い風が吹いたことによって「ファミコン広告の世界」は独自の文化を形成していったのである。
逆に考えると......。
広告文句からタイトル当てるの不可能じゃね?
と思ったわけ。笑。

ということで今回は、そんなファミコン広告の魅力を皆さんへ伝えるべく「当時の広告文句からファミコンタイトル当てるの不可能説」を、7つの視点から検証してみよう。
◆1.時代性の反映◆ まずは当たり前なのだが、ファミコン広告には当時の
時代性が反映されているということだ。したがって完全に評価がが定まってしまった後世の我々から見ると、ずいぶん温度差があったりイメージが180度違ったりなんてパターンも珍しくない。
たとえばこれだ。
奇想天外。
夢の大冒険ゲーム!
何のタイトルかわかるかな?
ちなみに奇想天外とは「風変り」とか「奇抜」という意味である。
このキーワードに注目すると、余計わからなくなるかも。笑。
なぜならこのタイトルは今やこのジャンルの古典。王道中の王道なのだから!
ここまで言ったらもうおわかりだろう。
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『スーパーマリオブラザーズ』である。
本作は社会現象を巻き起こすほどの大ヒットを記録したファミコンを象徴する存在であり、間違いなくビデオゲームの歴史に名を残す偉大なタイトルだ。その内容がいかに革命的だったのか、今さら弊サイトが説明する必要などあるまい。
そういった意味では当時のファミコン少年たちにとって、本作はまさに「奇想天外な夢の大冒険ゲーム」だったのかもしれない。しかし人々の評価というものは時代によって移り変わっていくものである。そのときは奇抜で、斬新で、独創的なゲームだったかもしれないが、今やスーマリといえば
古典的2Dアクションの王道であり、ビデオゲームの教科書と言ってもいいくらいの存在だ。およそ「奇想天外」というイメージとは真逆なのではないだろうか?
※ファミコン版説明書より 少なくとも本作をプレイして
ファンタスティックアドベンチャーゲームと評する人間はいないだろう。笑。
◆2.技術水準の限界◆ 次はいきなり出題してみる。こちら。
遠藤雅伸(27)
製作者かーいッ!笑。
誰もが知っているゼビウスの生みの親。当時、任天堂の宮本氏とならぶ天才ゲームクリエイターとしてファミコン雑誌にもバンバン露出していた遠藤氏のフルネームと年齢(当時)である。ということは、彼が手掛けたタイトルということになるだろう。
少なくとも『ゼビウス』ではない。
ドルアーガでもない。
というかナムコ作品ではない。
そうなると答えは......!?
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まさかの『機動戦士Ζガンダム・ホットスクランブル』だ。
ガンダムといえば泣く子も黙るロボットアニメの最高峰であり、いまだに売上高1000億円を超えるモンスターIP(知的財産)である。当然ファミコン時代にもいくつかの関連タイトルが出ていたのだが、その第1弾が1986年8月28日にバンダイから発売された本作だったのだ。しかしその広告には製作者である遠藤氏の横顔と「国政にでも出るんか」ってくらい細かい経歴が記載されていて、肝心のゲームのほうは下にほんの少し内容が載っているだけ。ゲーム画面は皆無で、主役のガンダムに至ってはカセットの写真のラベルに小さく確認できる程度であった。
この時代、ファミコンは家庭用ビデオゲーム機の最先端だったかもしれないが、おそらく、それでも当時の技術水準ではガンダムというIPの魅力を十分に引き出すことは難しかったのだろう。それは正直ゲーム内容を見れば明らかだ。
※当時のCM そのため、メーカー側は
IPの魅力よりも製作者の魅力でこのタイトルを売ろうと判断したのではあるまいか。だとしても露骨過ぎるんだけどね。笑。
ちなみに同じガンダムでも、二頭身キャラにデフォルメされた「SDガンダム」シリーズはファミコンとばっちり相性が良かったようで、その後のガンダム系タイトルは軒並みSDガンダムシリーズとなっているのは皆さんもご存知の通り。そう考えるとビデオゲームの世界におけるSDガンダムってのは「革命的な発明」だったんだなあ、と染み染み思うのだった。
◆3.異業種からの参入◆ つづいては1980年代後半の話。ファミコンという名のビッグウェーブに乗り遅れまいと
異業種からの新規参入が相次いだエピソードには事欠かなかったこの時代。中には会社の人間がそもそもゲームのことをよくわかってないままブームに便乗し、とりあえず下請け会社に制作を丸投げしたという例も少なくなかった。したがって、そんな異業種メーカーの第1弾ソフトの広告には
宣伝文句が妙に大味になっているパターンが非常に多いのである。
たとえばこんな感じ。
歴史的ソフト…ってなわけだ。
パノラミックな大冒険だゾ!!
パノラミックの意味がいまいちピンと来ないが「歴史的ソフト」とは、また大きく出たな。それとも内容が歴史に関係するという意味なのだろうか......!?
答えはこちら。
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『元祖西遊記スーパーモンキー大冒険』かいッ!
たしかに歴史っちゃあ歴史だけど、西遊記って実話じゃないよね。笑
よりにもよってこのタイトルはレコード会社vapのファミコン参入第1弾であった。ご存知のとおり本作は製作者すら認めてしまったくらいのクソゲーなのだが、vapの気合の入れようは尋常ではなく「天竺親子ファミコンゲーム駅伝」という、とんでもなくバブリーな全国大会を実施してしまうくらいであった。(
※参照記事)
◆4.キャラゲー=クソゲー論◆ 引き続き異業種からの参入パターンなんだけれども、一刻も早くファミコンブームに便乗したい場合、手っ取り早い方法がひとつだけあった。それは既存IPの活用なのだ。いわゆる
キャラゲーというやつ。しかも人気のあるIPであればあるほどファンが必ず購買層となってくれるだろう。このタイトルも当時それなりに人気のあった作品がファミコン化したものだった。
広告に謳われたキャッチコピーがこれだ。
泣きぬれてコンティニュー
なんだこれ......。
泣きながらコンティニューしろってこと?
妙にポエティックではあるが、そういう作風なんだろうか。まあ、80年代シティポップの楽曲名と言われたらそう思えなくもない。しかしどれだけ頭をひねっても意味がわからないだろう。
気になるタイトルはこちら。
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南ちゃんかいッ!
よりにもよってこのタイトルは映画会社東宝のファミコン参入第1弾であった。本作は「シティ・アドベンチャー タッチ ミステリー・オブ・トライアングル」という正式名からしてすでにズルズルに空回りしているところからもわかる通り、キャラクターや一部のアイテム以外に原作の要素が皆無だったため、しばしばキャラゲー=クソゲー論の代表作とまで呼ばれた存在だった。おそらくどこかの下請けメーカーで作りかけていたアクションゲームを、むりやり「タッチ」にすげ替えたのであろう。むしろそうであってほしい。だってもし本気で一から「タッチ」ゲームをつくってこの仕上がりだったらやばいでしょ?笑。
いずれにせよ、そのような事情によりゲーム内容に整合性もへったくれもないため、当然、それを的確に言い表す文句もへったくれもないというわけなのだ。何度も言うけど筆者は
「そういうところもファミコン広告の魅力のひとつ」だと思っているので、これはボロクソ言っているようで実は「愛の告白」だと受け止めてもらいたい。
ちなみに下に書いてある文言を読んでみると......。

感動のエンディングがまさうけている。
(原文ママ) 「ち」が反転しちゃってるよッ!笑。
◆5.インパクト重視◆ ファミコン広告といえばその「インパクトの強さ」も特徴のひとつである。ゲーム内容を伝えることよりも、とにかく目を引くことが優先されているようなデザインが非常に多いのだ。したがって広告文句もゲーム内容とぜんぜん関係ないものになりがちだった。
たとえばこちら。
ジイさんになるまで、やってなさい。
いやいや。
どういうこと!?
おじいさんが主人公のゲームなのか!?
いや、だとしたら最初からじいさんか。笑。
答えはこれだ。
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『ガルフォース』である。
1986年11月19日に発売された同名アニメ原作のディスクシステム用シューティングゲームで、HAL研究所のファミコン参入第1弾だ。ちょっとマイナーだったかな?

ちなみに『ガルフォース』の誌面広告は確認する限りでは6パターンくらいあって、その内、このキャッチコピー&子どもの顔が採用されているものは3種類あった。
この黒いタイプはあまり見ないと思う。

昔からマーケティングの世界では
「人間は本能的に人間の顔を見てしまう」と言われているせいか、ファミコン広告には人間の顔のドアップがやたら多い。本作の広告はその代表格と言ってもいいだろう。したがって非常に理にかなったデザインだとは思うのだが、肝心のゲーム内容に関しては右に小さく掲載されている程度なので、果たして当時のファミコン少年たちに伝わったかどうかは微妙である。
ちなみになんて書いてあるかというと......。

あのガルフォースがゲームになった。ただのゲームじゃない。ガルフォースの前では君は必ず性格が変わるのだ。一度でも撃ったら二度三度。もうやめられない。興奮連続シューティングゲームだ。ムシャクシャしたときも、バンバン撃って極楽気分になろう。ウラ技あり。秘技あり。パワーアップもスゴイ。ただし、まだ世の中に姿を見せてないのでもう少し待つこと。
なるほど。
この少年たちは全裸で正座して待ってたのか。笑。
◆ファミコンを象徴する作品!?◆ 続いてはある意味、ファミコンを象徴するような作品の広告から抜粋だ。
家族みんなでできる
ファミリーゲームの決定版。
元気に新登場!!
この謎の家族推し。
ってことは家族が出てくるゲームなのであろう。
そう考えるとかなり絞られてくると思うのだが......。
答えはこれだ。
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『バードウィーク』かいッ!
たしかに親子のゲームだけども。笑。
何気に赤字で書いてある「ハイテクのお兄ちゃんには〇秘(マルヒ)」というフレーズも何言ってるかよくわからない。たぶん「ゴリゴリのPCゲームばかりやってるお兄ちゃんからしたらヌルゲー過ぎて怒られるかもしれないから黙っておいたほうがいい」というような意味なのだろう。これも時代性なのかな?
右下に掲げられている「アレコレうれしい6大特徴」を読んでみると、家族みんなで楽しめる。ほのぼのゲーム。メルヘンタッチの美しい画面。かわいいキャラクター。といった文言が踊っており、これは明らかに家族層を狙っていたことがわかるのだ。

さらに「家族対抗コンテンスト」なるキャンペーンを行うなど、その戦略は徹底されていた。
つまり本作はファミリーコンピュータ、すなわち「家族のコンピュータ」というファミコンの基本コンセプトを忠実に守って制作されたゲームだったわけだ。そういった意味で『バードウィーク』は
ファミコンを象徴するような作品だと言えるのである。
◆「若さ」と「勢い」のみ◆ 最後に紹介するのは筆者が個人的にファミコン広告の醍醐味だと思っている「若さ」と「勢い」のみの広告だ。前述のように当時のファミコン業界は非常に若く、勢いがあった。おそらくこのメーカーも営業部が先走ってひとまずファミコン雑誌の広告枠だけ取って来たのだろう。しかしながら制作がぜんぜん間に合っておらず表に出せる内容がなかったので、
若さと勢いだけで誤魔化そうというパターンである。
その結果、このような珍フレーズが誕生してしまった。
ヤラセロ
ずいぶんと直球だな。笑。
いったいどんな広告なんだろう.。
というか、これは絶対にわからないと思うのでさっさと答えを発表しよう。
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って、誰やねん!笑。
片仮名で「ヤラセロ」の大きな赤文字と、シソンヌじろうみたいな顔した七三頭の丸メガネ君のドアップだけが配置されたビクター音楽産業の広告である。見事に「若さ」と「勢い」だけは伝わってくるだろう。
もう、じっとなんかしてられない。あのビクターから、ついにファミコンソフトが出るらしい。しかもそれが、ただもんじゃない、どえらいソフトだって言うんだから、あァッ!早くヤリタイッ!
ちなみに、顔の右の細かい文章を読んでみても、ビックリするくらいまったく具体的なことは書かれていない。笑。
肝心のタイトル名であるが......。

実はその下にさらにとんでもなく細かい文字で『スクランブル21』と『バナナ』の2タイトルが記載されているのだった。『バナナ』はともかく、実はこの『スクランブル21』という名前のファミコンソフトは存在しないのだ。おそらく何らかの理由で開発が断念されたのだろう。つまり
幻の発売中止ソフトってわけなのである。こんなの答えられるわけないよね.....。
つまり、この七三頭のメガネ君はいつまでたってもヤレないっことだ。笑。
◆検証結果◆ さて、以上で検証は終了である。
皆さんはいくつ答えられただろうか?
もちろん、見たことがあって最初から知っていたやつは答えられたかもしれないが、今回の検証はあくまでも「当時の広告文句だけでファミコンタイトルを当てられるか」を調べているわけなので、そういうのはノーカンで考えてみてほしい。おそらくゼロだったのではないだろうか。いや、きっとゼロに違いない。そうだよね? ね?
ということで検証結果は以下である。

そっちかいッ!笑。
|  | みんなの印象に残ってるファミコン広告は何かな? |
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