◆パチモノを流す公共放送◆ 先日、NHKが伝えた
上村氏の訃報に掲載されていた写真に「謎のファミコンソフトが写っている」という情報をいただいた。
こちら。
出典:「ファミコン」開発責任者 上村雅之さん死去 78歳 | おくやみ | NHKニュース うわあ。NHK......。
「MAPPY」と書かれた謎のラベルが貼られている黄色のカートリッジが本体に刺さっている。しかしそれは我々の知る『マッピー』とはあまりにもかけ離れていたのだ。かといって正式ライセンスを受けた海外バージョン(NESとか)でもなさそうである。形状がまったく違うし。そもそもなんだこの絵は。(笑
※拡大図
※こちらが本物 というか、ぶっちゃけ完全に中華パチモノですやん。しかも台湾だな。一目でわかるよ。カートリッジの形状や色、ラベルが如何にもそれではないか。でかでかと「NHK」なんてロゴ入れちゃって偽物ファミコンソフトの画像を載せるなんて世話ないよね。正直、公共放送にあるまじき行為と言わざるを得ない。
さっそく調査をしてみよう。
◆実は一度調査していた◆ すっかり忘れていたのだが、実はこの写真、以前も東洋経済オンラインが
「ファミコンブーム」にあれほど熱中した背景という記事で使用していたので、そのとき少し調べたことがあったのだ。
そもそもこれは東京に本社のあるフォトエージェンシーアフロが提供している写真である。
出典:アフロ公式サイト アフロ公式サイトで検索すると「ビデオゲームの博物館 ポーランド・カルパッチ」というタイトルで見つけることができた。どうやら元々はポーランドのカルパッチというところにあるゲーム博物館の展示物らしいのだ。なぜポーランド?
ここで東洋経済オンラインの記事にも並記されていたEastnewsに注目してみよう。どうやら海外のフォトエージェンシーらしい。つまりこの写真はEastnewsがアフロへ素材提供しているものだったのだ。で、試しに公式サイトを覗いてみるとURLが「https://www.eastnews.pl/」だったんだよね......。
何を隠そう「.pl」はポーランドのドメインなのだ。
つながった!
◆ポーランドのゲーム博物館◆ 以上の事実から、この博物館は「Private Museum of Video Game」というポーランドはカルパッチという場所にある小規模なミュージアムであることが判明。公式サイトもあったらしいのだがつながらなかったので別の紹介ページを見つけた。

ここに館内の写真がわんさか載っていたので探してみたら、あったよ!
まさしく現物。

ちょっと解像度低くてわかりにくいが本物っぽい『スーパーマリオブラザーズ』と「3Dシステム」とセットにされているので、これがNHKの記事に載っていた写真の現物で99%間違いないだろう。
その下は『SDバトル大相撲』で、さすがに倒れているやつは不明だが、下の段の2本は『バルダーダッシュ』と『スペースインベーダー』である。そうなってくると偽Mappyだけが明らかに浮いている。この博物館にはほかにも中華製と思われるパチモノがたくさんあったのだが、なぜ偽Mappyだけこんな上位チームに入れられてしまったのだろうか。逆に不憫でならない。(笑
※ちなみに、なぜこんな小さい画像だけでタイトルが特定できるのかというと、実は私には特殊能力があるのだ。詳しくはこちらの動画を見てくれ。 ◆このソフトの正体◆ まあいいや。ともかく写真の出所はわかった。でもこのソフトの正体はまだ判明してないのだ。
以前調査したとき私は「この偽MAPPYに似たカートリッジをブラジルのフリーマーケットサイトで頻繁に見る」と報告していた。昔の私がいったいどういう調査でブラジルのフリマサイトなんかにたどり着いたの我ながらさっぱりわからないのであるが、残念ながら、それがどこだったのかも記録していなかったので改めて探してみることにした。
すると海外老舗ファミコンサイト「Famicom Woarld」の掲示板にこれとまったくおなじラベルのカートリッジを発見。
出典:Famicom Bootlegs with Original Artwork どうやらこの投稿主はこのカートリッジがBootlegs、つまりパチモノだと知っていながらラベルのアートワークが気に入っているようで、これがいつどのメーカーによってつくられたものなのか質問していた。まさしく今、私が知りたい内容ではないか。しかし残念ながら有力な情報は見当たらず。その代わりではないが、この投稿者によるとこのカートリッジはベネズエラから手に入れたとのこと。
ベネズエラっつったら、コロンビアの横っちょらへんの?
南米がつながった!
南米といえば独自のゲーム文化が醸成されていた地域として有名であるが、ファミコン時代は台湾製のパチモノを多く流れていたことがわかっている。ポーランドの博物館に存在するMappyもそんなパチモノのひとつと見受けられるのがこれ以上の事実はわからなかった。
◆専門家の意見は?◆ ここで私は日本有数のパチモノ専門家である麟閣(
@rinkaku89)氏に意見をうかがった。
氏はあくまでも推測の域を出ないとしながら、ガワについてはちょっと前の中国業者の流行りで流通量が多かったものと推定。ラベルについては「パチモノは一時期ロシアへ大量に輸出されていたことから、ロシアや北欧向けかもしれない」との見解を述べた。
なるほど。この偽Mappyは大陸からロシア経由でポーランドに入って来たという線も十分考えられるなあ。
※ここから追記 するとさらにtwitterにて「このラベルのMappy、ロシアのデパートのサイトで、Dendyとセットで売られているのを見た事があります。」との
有力情報が舞い込んで来た。Dendyといえばロシアの海賊版ファミコンと知られているあのDendyだ。

参照サイト:
ゲームレガシー : ロシアの子供たちを魅了した赤い国のファミコン 「デンディ」 ロシアが怪しい!
◆そして辿り着いたひとつの答え◆ ということでロシアを中心に調査をつづけるとさっそく「SomeRussianMarioDude」というファミコン海賊版を紹介するブログを見つけたのだ。そこにはなんと、あのMappyが!

出たー!
カートリッジの形状は違うものの、間違いなくこのラベルだ。しかもそのブログは同じパチモノメーカー製と思われる他のタイトルをいくつも紹介していたのである。その中で興味深い記述があったのだ。なんでも画像の多くはKinamaniaというユーチューバーの「Dendy Chronicles #1」という動画からとったスクリーンショットなんだとか。
やはりDendyか......。
出典: Dendy Chronicles #1 ためしに動画を見てみたところ、カートリッジの形状が一致!
さらに弊記事のコメント欄にて「ポーランドはDendyと同じ小天才系列のパチモノファミコンがPegasusというブランド名で出ていたらしく、恐らくそっちブランドで出てたパチモノカートリッジかと思われます。」という情報を頂いた。そこに貼られていたURL先の画像を見ると形状は少し違うもののまったく同じラベルのカートリッジが!

実はこれとまったく同じカートリッジが
ポーランドのエミュサイトにも掲載されていたんだよね。もしかしたらポーランドの海賊版メーカーが販売していたものなのか!?
上記ロシアのパチモノブログSomeRussianMarioDudeに次のようなことが書いてあった。「ここで見られるものはすべて同じブートレグ会社が作ったものだと思います、おそらく一生知ることのない名前で。by
DeepL翻訳」。残念ながら本場のBootlegマニアも匙を投げているのでは私が一生調べてもわかるわけあるまい。そもそも海賊版メーカーの正体がそんな簡単に割れたら苦労しないのだ。それにしてもさすがは専門家やマニアの方々。私が唱えた南米が関係あるかもしれない説はただの偶然だったことをお詫び申し上げます。(笑
というわけで今回の調査はこれにて一旦終了。
NHKは東欧の海賊版ファミコンソフトの写真を載せるのを即刻やめなさい!
|  | ご協力感謝します。 |
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