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ある日突然「ビデオゲームにまつわる誕生譚」が関係者によって否定されてしまう現象と、その意義。

◆スーパーマリオ誕生譚◆

 ある日突然、ビデオゲームにまつわる有名な誕生譚が関係者によってさらっと否定されてしまうことがある。

 たとえばスーパーマリオの名前の誕生譚。その由来となった人物はかつて米任天堂(NOA)が借りていた倉庫のオーナーだったMario Segaleである。当時のNOAはまだ商売が軌道に乗ってなかったため家賃を滞納していたところ、彼が会社に怒鳴り込んできたという。

 そのタイミングがたまたま荒川(当時のNOA社長)たちが『ドンキーコング』の主人公の名前を考えていた会議中であり、Mario Segaleの顔がその主人公にそっくりだったので、そのままマリオと名付けられたというエピソードはあまりにも有名だ。*参照記事

nommarionorirekisho.jpg
出典:プロフィール ~マリオ誕生にまつわるエピソード~

 しかし少々出来過ぎたエピソードではないだろうか。そもそも彼は本当に倉庫のオーナーだったのか。オーナーだったとしてわざわざ会社に怒鳴り込んでくるのか。そもそも会議中の部屋に部外者が入れるのか。セキュリティはどうなっていたのか。不法侵入だった場合、銃殺されてもおかしくない。などなど疑問が尽きることはない。

 そこに颯爽と現れたのがNOA創業メンバーの一人Don Jamesだった。彼は2017年6月21日付のKKEI STYLEの記事において以下のように語ったのだ。

 ジェームス氏はその頃、日本から輸入されたドンキーコングに登場するジャンプマンに、もっと親しみやすく、その名前を聞いただけでキャラクターがイメージ出来るようなネーミングをつけたいと考えていたという。ただ、セガリさんがジャンプマンに似ていたということか、という問に対するジェームス氏の答えは、少し意外だった。

「確かに、髭を生やしていた。イタリア人という設定も同じだ。でも実は、ほとんど誰もセガリさんの姿を見たことはないんだ」
会ったこともなかったのかと問うと、「そう、ほとんど誰も。そのミステリアスな存在が面白くて、ジャンプマンにマリオと名付けたんだ」

 モデルとなったのは確かだが、決して似ているわけではなく、あくまでもルーツ。ただ、それをそのままキャラクターの名前にしてしまうところに彼らの遊び心が伺える。

  ※セガリ表記はNIKKEI STYLEによる誤字だが原文のまま引用。

 似てなかったんかいッ!!!




◆パックマン誕生譚◆

 また、こちらも世界的コンテンツとして知られるパックマンの誕生譚。

 パックマンのあの特徴的な姿は食べかけのピザの形から着想を得たというエピソードがあまりにも有名だ。この話は当時のナムコ広報誌NGをはじめ、開発者である岩谷徹本人の口からもたびたび語られ拡散されてきた。*参照記事

NGpakkuman0.jpg

 しかしこれも出来過ぎたエピソードである。ナムコ以前にあったトミーのパックマンの存在や、漢字の「口」から発展したという別証言、なぜスターウォーズのミレニアムファルコンと由来が同じなのか。などなど疑問が尽きることはない。

 そこに颯爽と現れたのがゼビウスの生みの親として知られる遠藤雅伸だった。彼は2017年2月2日付けのねとらぼの記事において以下のように語ったのである。

  この「ホントのこと」というのは、メディアやネットが育てた伝説に対し、当事者としての一次情報を残して欲しいということです。例えばゲーム「パックマン」の開発に際して「開発者はピザを食べたときにパックマンの形を考え付いた」という伝説がありますが、これはリップサービス的に後から付けられたものです。

 本来は黄色という色がゲーム画面の中で一番大きく見える色であり、また丸い形が一番存在感を示せる形状ということ、従って「黄色い丸」が当時のビデオゲームにおいて最もプレゼンテーションを発揮するという論理的思考の結果です。



 リップサービスだったんかいッ!!!




◆ファイナルファンタジー誕生譚◆

 このようにゲーム業界に流布している有名な誕生譚は、なぜか知らないがあとになって突然、開発者本人やその関係者から「事実でない」と否定されることが少なくないのだ。それは『ファイナルファンタジー』誕生譚も例外ではない。

 たとえばこんな記事があった。


『ファイナルファンタジー』のタイトルの由来と、失われていく「テレビゲーム黎明期」の記憶 - いつか電池がきれるまで

 こちらは有名なブログであり、しかも失われていく「テレビゲーム黎明期」の記憶を憂うようなタイトルだったので、もしかしたら「最後のつもりで作ったからファイナルファンタジーと名付けた」という有名な説が、実はご本人によって否定されているという話に触れちゃうのかなとビクビクしながら最後まで読んでみたら、普通にそのままその有名な説を紹介するものだったので、私は思わずそっと胸をなでおろしたのだった。

 ファイナルファンジーの生みの親として知られる坂口博信は2015年5月23日、立命館大学で開催された講演のなかで以下のように語っているのである。

FFyurao.jpg
  ちなみに、『ファイナルファンタジー』というタイトルは、“FF(エフエフ)”という、アルファベットで表記できる、かつ4音で発音できる略称で呼ぶことを前提に名づけられたもの。最初は“ファイティングファンタジー”というタイトルにするつもりだったが、同名のボードゲームがあったため、変更したという。世間では、「これが最後のプロジェクトという心づもりで作ったから“ファイナル”だ」という理由から名づけられたのだ、という説が広まっているが、坂口氏は「確かに当時は背水の陣だったけれど、Fで始まる単語ならなんでもよかった」と、その説を否定した。


 なんでも良かったんかいッ!!!




◆誕生譚を否定する意義◆

 最後に正直な話をしよう。

 ここ数年「ビデオゲームの歴史を正確に残すこと」の重要性が声高に叫ばれている。たとえば制作期間やリリース年月日などといった時系列や、制作にかかわった会社や人物などといった客観的事実については、より正確性が求められるべきであろう。それはわかるのだ。しかしながら、架空のキャラクターやゲームタイトルの誕生譚にまつわる、誰かの頭のなかで起こった閃きや着想といった部分にまで、それを求めることにどれだけ意義があるのだろう、と筆者なんかは思ってしまうのだ。

 勿論、その誕生譚が歴史的な時系列や客観的な事実に反しているケースならその限りではないのだが、とくに何にも影響がない場合はむしろ貫き通してほしい。我々を一生騙してほしいと思ってしまうのは、一ゲームファンのわがままに過ぎないのだろうか?




orotima-ku1.pngFFのやつは否定になるのかな!?

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コメント

マロリーが「そこに山があるから」と本当に言ったのかは定かではない。
しかし多くの登山者の共感を呼んだから名言として残っている。
それでいいんじゃないですかね。

パックマンは間違いなく後世に語り継がれる作品であるはずなので、ピザの話がリップサービスでした。と明確に否定されたのは喜ばしいことなんだと思います。
子供の夢を壊さないようにと墓場まで持っていかれてしまったら、もうそれが真実になってしまうとこでしたしね。

話は飛びますが、ファミコンのパックマンを始め、初期のアーケード移植タイトルって、当時のどのハードよりも再現性が高いですよね。
ファミコンは偉大だなぁ。

奇妙丸さん
それでいいと思います!

13216さん
https://famicoms.net/blog-entry-3985.html
こちらの記事でも書きましたけど岩谷さんはそれ以降もピザの話をしていて思いっきりブレてるんですよねえ。カミングアウトしなたらしたでそれを押し通してほしいです。

一概にこうだと言えない話ですよね
「初手が開発者自身による嘘」だったなら嘘のままでも良いような気がします
なんというか、それはゲーム作品と同様の「開発者が公開したかった情報」なので、ある種真実であるともいえるんじゃないかと

一方、広く認知されていない事柄について「初手が非関係者による嘘」だったならちょっと待てよと

つまり「正しい事実が公開されるべき」なのではなく
「開発者の意図や出したかった情報が嘘に覆い隠されるのは避けるべき」なのではないかと思いました

なるほど。開発者の意図や出したかった情報が嘘に覆い隠されるのは避けるべきというのはその通りですね。しかし年月が経過することによって気が変わって、本当のことをしゃべりたくなってしまうということもあるわけで、難しい話ですねー。

「開発者(関係者)自身が言っている」ということは情報の確度としては高くともイコール真実ではないということは言っておきたい。

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