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任天堂オンラインマガジン(N.O.M)が消滅!? ※ただしアーカイブには残っている模様

◆広報は自前でやる◆

 1998年9月に創刊された任天堂オンラインマガジン(N.O.M)は2012年8年まで14年間、毎月更新されていた任天堂の公式コンテンツである。

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 ※創刊号のトップページ

 創刊号の特集はNINTENDO64の名作『ゴールデンアイ 007』だった。

 しかし1998年といえば日本はインターネット黎明期。まだ一般社会にネットがそれほど普及していなかった時代に任天堂はどこよりも先駆けて積極的にオンライン広報活動をしていたことになる。実はそこには同社ならではの事情があったのだ。

 というのも任天堂はある時期から日本のマスコミに不信感を抱いてしまって「広報は自前でやる」という社風になったと言われているのだ。たとえばマリオの生みの親・宮本茂は日本メディアのインタビューをめったに受けないことで有名だが、海外メディアだとわりと気軽にいろいろ出ていることが挙げられる。

 この「広報・宣伝活動を自前でやる」という社風はかつて岩田時代に人気を博したインタビュー記事「社長が訊く」シリーズや、youtubeなどで配信される映像コンテンツ「Nintendo Direct」などに受け継がれていることがわかるだろう。



◆数日前からアクセス不能に……◆

 そんな自前メディアのひとつだった任天堂オンラインマガジン(N.O.M)が先月からアクセス不能になっていることが判明した。

NOM1.jpg


 アクセスしようとするとこのようにマリオのドット絵とともに「ご指定のページが見つかりませんでした」と表示されてしまう。

 つづいて「アクセスしようとしたページは削除、変更されたか、現在利用できない可能性があります」と説明されており、今のところ公式アナウンスがないため確定的なことは言えないが、オンラインマガジンが丸ごと削除された可能性が非常に高いと見られている。

 勿論、何かの拍子でアクセスできないだけでそのうち復旧……、ないかあ。





◆貴重な内容◆

 そもそも20年以上も前にはじまったオンラインマガジンのバックナンバーが、ごく最近までずっと掲載されつづけていたことが奇跡に近い。

 その内容は多岐にわたっており、1998年から2012年までにリリースされた新作ハード・ソフト情報から、他のメディアにはまったく露出しない社員へのインタビューや、人気ゲームキャラクターの裏話的なものなど、興味深いものばかりだった。

loppasdi.jpg
※マルチメディア端末機Loppi (C)LAWSON

 1998年といえば、まだスーファミも現役だったためローソンのマルチメディア端末Loppiで展開されていた書き換えサービス「NINTENDO POWER」の特集なども組まれていた。(ちなみにNINTENDO POWERについては任天堂公式サイト内にそれ専用の公式ページも存在した)

 
 どれも貴重な公式情報として研究者のあいだでも重宝されてきており、ゲームの歴史的資料としての側面もあったことは指摘しておきたい。とくに筆者が注目していたのは1999年8月に掲載された「マリオの履歴書」特集である。

NOM0.jpg


 突然だが、マリオの職業といったら皆さんは何を思い浮かべるだろう?。

 きっとほとんどのひとは「配管工」と答えるのではないか。その証拠に任天堂の公式サイト内コンテンツ「マリオポータル」の紹介欄でも彼は配管工とされている。

NOM2.jpg
※N.O.M 1999年8月号「マリオの履歴書」より 

 しかしN.O.M「マリオの履歴書」によるとマリオの職業は当初「大工だった」と明言されているのだ。同マガジンの主張では配管工というのはあくまでもハリウッドが実写化したほうの映画『スーパーマリオ』の設定だったんだとか……。

 


◆なぜ削除されたのか?◆

 N.O.Mが削除されてしまった理由については様々な憶測がなされているわけだが、ほとんどがテキストと画像だったことから容量的な問題だったとは考えにくい。

 そこで、ひとつの理由として上記のような古い情報の一掃が目的だったことが推測されているのだ。とくに直近の事情として映画『スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界的大ヒットでマリオが名実ともに世界的人気キャラクターとなったことを受け、このような矛盾した過去の設定をいつまでも公式に置いておくわけにはいかなかったのだろう。

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※N.O.M 1999年8月号「マリオの履歴書」より 

 たとえば、マリオの名前の由来になった人物としてほぼ公式設定であるマリオ・セガール氏についても、N.O.Mは世間でよく知られている「倉庫オーナー」という肩書ではなく「倉庫係のオジサン」という微妙にちがうニュアンスで紹介していた。

 「オーナー」と「係のオジサン」ではずいぶんと印象が変わってしまうだろう。



 なお、この件に関しては宮本自身も↑こちらの海外インタビュー動画にて「倉庫の管理人」という微妙にちがうニュアンスで表現している。

 そもそも、キャラクターの設定のみならず古い情報がいつまでも公式サイトに残っている状態は任天堂にとって無用な混乱をまねくだけでありデメリットしかないことは想像に難くない。N.O.Mのバックナンバーは我々にとって「いつでも64やゲームキューブの時代に戻れる」タイムマシーンのような存在だったかもしれないが、削除する必要があったことは十分理解できるだろう。

 何度もいうがもはや世界的企業となって久しい任天堂の公式サイトに、このようなHTML感丸出しの前時代的なコンテンツが今の今まで残っていたことがすでに奇跡だったのだ。




◆安心してください。残ってますよ!◆

 ただし、公式サイトから消滅したとはいえもう二度と読み返すことができないわけではないので安心してほしい。N.O.Mのバックナンバーは現在はインターネットアーカイブでページが保存されていることがわかっている。

 N.O.Mバックナンバー(Internet Archive)

NOM4.jpg

 こちらは「文化・歴史研究のためのインターネットライブラリを構築すること」を目的に活動しているアメリカの団体が運営するサイトであり、ざっと確認した限りでは1998年9月創刊号から2012年8月最終号までアーカイブされていた。すべて上記のページからアクセスできるはずだ。

 少し重いが決して怪しい海賊版サイトではないのでこれを期に読み返してみてはいかがだろうか。

 何はともあれ同社が「任天堂オンラインマガジン」という資料性の高いコンテンツを20年以上も公式サイトに残してくれていたことに改めて感謝しなければなるまい。

 今までありがとうございました!




orotima-ku1.pngアーカイブさんもありがとうございます。


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コメント

Internet ArchiveはWeb魚拓等とは異なり、権利者の申し立てがあれば即刻削除なので見たい方はお早めにどうぞ

試しにそのInternet Archiveで「ファミコン」を検索したら、
昔のファミコン雑誌とかどっさり見れますね・・・

創刊号の007など、度々版権モノの特集をしていたので、何か権利関係の問題が生じたのかもしれませんね。

実は今までもニュースリリースのような広報文書がちょこちょこ消えていたこともあったんですよね。他所で引用されていたときにリンクが切れていたりして。

ひょっとして……?と思いましたがバーチャルボーイの公式サイトはまだありますね。

サービス終了という明白な理由があったのでちょっと違いますが、ニンテンドウパワーのページに揃っていたPDFの遊び方シートがそっくり消えたときのことをふと思い出しました。

遊び方シートのPDFはおしえてもらってダウンロードしました。たしかアーカイブにあったはず!?

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